2012/07/29

書評: ガンに打ち勝つ患者学

末期がんと聞けば、ほとんどの人は死ぬはずだ、と思い込み、
余命を気にしたり、治療を放棄したりするほどである。
だから、末期がんから生還した人の経験は貴重である、という理論も成り立つ訳だが、この本は、そんな人を多く見てきた医師がまとめた8つの戦略と、50のステップは、興味深い点もあった。


ガンから回復する8つの戦略とは

2012/07/28

書評: デタラメ健康科学

カップヌードル、エビ20%増量!というキャンペーンがあったことを覚えているだろうか。
20%も増えるの!?と驚くのと同時に、どれだけ増えるんだ?と思った。
ふたを開けると、5匹が6匹に増えていたのである。

「エビ1匹増えました」と「エビ20%増量」は同義なのだが、
どっちが良いか、メッセージは伝える側の意図により選択される。
1匹増えても大差ないと思われてしまう(そもそも1匹ってセコいのでは?)リスクを冒すより、20%増量は何となくオトク感があると期待したコピーである。

このような話が、この本で取り上げられている。


発掘!あるある大辞典、という番組があった。
視聴者への興味の持たせ方は非常に巧みで、健康意識を高める意味でも評価できる点はあったと思うが、マイナス部分があまりに大きく、印象は地に堕ちたまま、番組が終わった。
データ捏造問題は、非常に深い問題だ。
捏造自体は一番の根本的原因だが、その情報を流しているマスメディアも問題を大きくしている張本人であり、あるある大辞典の場合、捏造自体を番組が行っていたため、糾弾されるに至った。(制作会社とテレビ局の関係も問題であったが、本論とは関係ないので割愛)

捏造は、すべて意図があって捏造されている。
この本では、その裏側を暴きながら、デタラメの健康科学が世の中に受け入れられていることを紹介している。
健康の情報を扱うには、ことのほか、正確性や中立性、客観性が求められるのだと感じた。


ただ、健康食品をすべて悪として捉えている節がある。そこまで十把ひとからげに批判しなくても良いと思う。読み手も冷静に読むべきだろう。


デタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソデタラメ健康科学---代替療法・製薬産業・メディアのウソ
ベン ゴールドエイカー 梶山 あゆみ

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書) 代替医療のトリック 医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) もうダマされないための「科学」講義 (光文社新書) ハインズ博士再び「超科学」をきる: 代替医療はイカサマか?

2012/07/24

ジェネリックの利用が進まない

ジェネリックの利用促進が思うようにいっていないのだろうか。

医療機関の後発品使用に数値目標提案も- 協会けんぽ運営委で貝谷理事(CBNews)


厚生労働省も、がんばれ、がんばれと応援してくれているように思うが、結果が出ていない。

厚生労働省 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について
 ジェネリック医薬品への 疑問に答えます ~ジェネリック医薬品 Q&A~

ジェネリックを使用したい人、使用してほしい人に、そのメッセージが届いているのか?
使用の強制、もしくは自己負担割合の変更など、医療政策上の取り組みを強化していかなければ、いくら言ったところで、誰も使ってくれないように思う。

制度・政策を待っているだけで、何もしないのでは意味が無いので、せめて役に立つことをしたいと思う。切り替えたときの精神的不安を取り除くことに貢献できないか、アイデアを練りたい。

2012/07/17

今週のテレビ番組 ここが効きたい!名医にQ

先週土曜の再放送だが、金曜の13時5分〜50分の寝たきりを防げ!健康生活術と、土曜の20時〜20時45分の寝たきり予防術 あなたの疑問に答えます!。 

このふたつ、ロコモのことを取り上げている。 ロコモ、なかなか浸透していないように思うが、ぜひ知っておきたいところ。
⇒日本整形外科学会のロコモの紹介

何歳まで生きるかの「寿命」より、何歳まで健康に生きているかの「健康寿命」が大事になってきている流れからしても、このロコモは重要だ。
メタボのように流行らせたい整形外科学会の思惑は、まだ、うまく行っているとは言いがたい状況なだけに、 まずは、テレビなど媒体で、理解を促したいところだろう。 ぜひ、時間がある方は見てみてはいかがだろうか。

2012/07/16

書評: やさしい小児ぜんそくの治し方―ドクター&ナースがおはなしする

2000年以降のスタンダードとなった治療法について、分かりやすくかいてある本。
治し方の理解が深まることはもちろん、専門医・かかりつけ医との接し方などのアドバイスがある点は、非常にありがたい。

自分が子供のころは、身体を鍛えろ!なんて本もあっただけに、今の子供は幸せだ。
ただ、身体を鍛えるのは、一利あったと思えなくもない。自分の場合、長距離走などに取り組んだため、運動誘発性のぜんそくをうまく抑えようとしなければならないから、より一層コントロールするよう努力したのでは、と今更ながらに思う。

本の中で、季節性のぜんそくについて、ダニとの関係性が触れられていた。個人的には気圧変化も影響すると思っているが、その点は飛行機の例を挙げ、否定していた。複合的な要素によって起きる発作に対し、素人の感覚論にすぎないが、前線・台風の通過は発作の原因になっているように思う。

ぜんそくのこどもがいる親御さんは、ぜひこの本を読んでほしい。

やさしい小児ぜんそくの治し方―ドクター&ナースがおはなしするやさしい小児ぜんそくの治し方―ドクター&ナースがおはなしする
山本 淳 小林 晴美

小児喘息患者学入門―子どものうちに治しきる対処法・治療法 ぜんそく力 ぜんそくに勝つ100の新常識 ちいさい・おおきい・よわい・つよい (Number37) 患者だからわかる 成人・小児ぜんそく (患者の会がつくる) 小児気管支喘息治療・管理ハンドブック 2009

2012/07/13

書評: 最高の医療をうけるための患者学

最初の章そのままが、自分のビジネスを立ち上げることに確信を持った文章。
最高の医療を受けるには、患者がもっと医療を受けることに真剣にならなければいけないという日本の医療の問題点を突いた本。

例えていうなれば、「おいしいワインが飲みたい」といっている人の中には、「シャトーマルゴー」のような名前を知っているだけで、きっとおいしいに違いない!!と思い込んでいる、そして、実際、シャトーマルゴーを飲むと、おいしい気になってしまう人が多い。そんな状態を日本の医療の現状と考えてみよう。

理想は、おいしいワインを飲みたいならば、せめて自分の好きな味や、あわせたい料理、お店の雰囲気など、様々な要素を理解し(特に自分のことはもっと知っておくべき)、実際にワインを口にして、「ちょっと好みと違う」「先週のやつがおいしかった」などと話せるようになる。そして、シャトーマルゴーが置いてあるかも大事だが、しっかりとしたセラーがあり、博識かつサービス心あふれるソムリエ、ワインの理解もあるシェフ等々、環境が整っているところで、ワインを飲みたい・・・となるのではないだろうか。

この理想を医療に戻すと、自分のカラダ・病気のことを把握し(自分の好みなど)、医者、看護師、薬剤師(ワイン、ソムリエ、シェフ)やレストラン・セラー(病院)を選ぶと、最高の医療が受けられる・・・。

いつでもシャトー・マルゴーやシャトー・ラトゥールがベストなわけでない・・・。そう思えないと、日本の医療は、ランキング本とマスコミの紹介する「夢の最新治療」に患者が殺到する日々だ。

本の話に戻すと、そのようなことが非常にわかりやすい言葉で、かつ、どう取り組むべきか示唆を与えてくれている。やはり患者から変わらなければいけないのだ!

最高の医療をうけるための患者学 (講談社+α新書)最高の医療をうけるための患者学 (講談社+α新書)
上野 直人

がん治療を受ける前に知っておきたい55 がんとお金の本 患者のための医療情報収集ガイド (ちくま新書) がんのひみつ がん患者、お金との闘い

2012/07/06

NHKスペシャル 今ふたたび 日本のがん医療を問う

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0630/index.html

この番組が先週土曜に放送された。

問題点として指摘されていた4点について考えてみたい。

  1. 拠点病院の診療・治療の質の問題
  2. 小児がんを例として、診療病院の集約化
  3. 薬剤の開発支援体制、認可までのスピード
  4. がん登録

2012/07/05

今週の気になるテレビ

NHKのきょうの健康で、肥満とやせの話を取り上げるようだ。
高齢者の栄養不足、エネルギー不足の問題に触れるのだろうか。
太り過ぎも良くないが、やせ過ぎも良くない。最新の研究結果を注目したい。

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  • 07月05日(木)
    【再放送】07月12日(木)
  • 100歳まで歩ける体づくり「65歳からの食生活新常識」
    肥満とやせはどちらが長生きする?これまでの常識が、高齢者には当てはまらないことがわかってきた。最新研究の結果と高齢の食生活改善法についてご紹介。

  • 東京都健康長寿医療センター研究所部長

    新開 省二(しんかい・しょうじ)




http://www.nhk.or.jp/kenko/kenkotoday/

糖質制限食の是非

糖質制限には、極端な制限から、ゆるやかなものまで、各種様々なものがあるようだが、スウェーデンの研究で、低炭水化物・高タンパク質食は、心疾患イベントのリスクを高めるとの報告がなされた。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/22735105) この報告は、4万3千人超の30~49歳の女性での15.7年にわたる調査に基いているとのこと。
ちなみに、5年前にも、同じ母集団での調査で、心疾患リスクの増加と、死亡率が高くなる報告がなされていたが、さらなる経過を追ったということなのだろう。(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17391111


この5年では覆らなかったということで、『いいことずくめ』ではない、ということを頭の片隅に入れておくべきだろう。

2012/07/04

書評: Tarzan 特集「カラダの医学」

7/12号のTarzan、特集で病気のことを取り上げている。
『30代からの運動処方』というキャッチフレーズ、うまい。
がんや糖尿病を取り上げ、運動、食事を見直そう、とつなげている。読みやすい。

公的医療保険の説明や、健康診断の検査結果の見方など、30代前後ではなじみの薄い部分もフォローしていて、手軽な記事の中にも勉強になるポイントがちりばめられている。

健康フリークな人にとっては、新しい情報は皆無に等しいが、なじみのない人には、バランスのよい特集だと思う。


2012/07/03

書評: 話を聞かない医師 思いが言えない患者

昔は、お医者様でも、患者様でも、呼び方なんてどうでもいいと思っていた。 相手には敬意を払う、感謝の意を伝える、そんな心構えができていれば、問題なんて起きないと・・・ 世の中は、どう呼ぶかで、議論あり。「患者さん」と呼べば対等だ、医療はサービス業、お客様は「患者様だ」などなど。議論は尽きないが、結局は尊敬される医師、感謝される医師を目指し、親身になって考えられる医師になればよく、心配してもらえる患者になり、敬意を払う患者になればよい。 この本は、そういったことの裏側の医師の気持ちや、思考回路を紐解いてくれる。 なぜ堅苦しい説明をしなければならないか、なぜわかりにくい言葉を使うのか、そんなことをおもしろおかしく書いている。 前半から中盤にかけ、容易な話が続くのに対し、中盤以降、専門の循環器領域の話が例として挙げられており、医療の世界と縁遠い人にとってはやや難しい話が続く。 パターナリズムという言葉や、ナラティブベースドメディスンといった言葉をまったく知らなくても、最後まで読めば真意を理解できる良い本に出会えた。もちろん、これらの言葉を知っている人にとっては、医師が客観的な視点でものを書こうと(かなり努力したであろう)非常に良い本だと思う。ぜひ読むべきだ!