医療、福祉に貢献するために

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~ 株式会社メディチュア Blog

2012/12/07

DPC評価分科会 何のための指標か、誰のための指標か

今日は中医協 DPC評価分科会を傍聴してきた。



議題には、DPC導入の影響評価に関する調査結果について、DPCコーディングマニュアル、病院指標の作成と公開、とあり、個人的には最後の指標の話を楽しみにしていた。

■コーディングマニュアル(ドラフト版はこちらに
処置や手術の選択は恣意的に行うことができないため、コーディングにおける自由度、解釈の違いが生じるのは、病名付け、DPCコーディングのためのICD10コーディングのことを指している。マニュアルが整備されるということは、今後、DPCコーディング内容の返戻や査定が活発化する可能性も考えられる。意図的なアップコーディングが問題なことはもちろん、無知ゆえのミスコーディングも、患者に余計な負担を強いているという意味では、やはり問題である。適正なコーディングは、DPC制度の根幹にある重要なことだと思う。

なお、ドラフト版に記載されていた内容を見ると(以下、斜体は引用。うち下線はこちらが追加)

(2)医療資源病名と、実施した手術や処置との間に「乖離」がある場合は、その理由を診療録へ記載するとともに、レセプトのコメント欄または症状詳記への記載が望ましい

事情のある症例は、査定されないよう理由を書け、書いていないなら・・・(削る気満々?)

(3)医療資源病名は、病態を最も適切に表すものにすべきである。
※注意:原因疾患がはっきりしている場合は、呼吸不全、循環器不全等の不全病名を選択すべきではない。また、疾患の部分的現象であるアルブミン減少症、貧血、血小板減少症、好中球減少症、カテーテル先感染症等を意図的に選択してはならない。
例:肺炎を「呼吸不全」、心筋梗塞や心筋症を「心不全」、消耗性疾患でアルブミンを投与した場合の「アルブミン減少症」、原因の明確な出血で輸血をしている場合の「貧血」、癌の化学療法中に血小板を輸血した場合の「血小板減少症」、GCSF 等を皮下注した場合の「好中球減少症」等がこれに該当する。

化学療法や放射線治療時では、G-CSFの投与の仕方にもよると思う。予防的な、保守的な投与の場合は、安易に好中球減少症を選択するのは不適切なこともあるはずだ。ただ、患者の状態が非常に悪くなってしまった等、G-CSF投与が不可欠な場合に、医療資源病名に好中球減少症を選択することは間違っていないと思う。このようなことこそ、現場では判断に困っているわけで、これをマニュアル的に記載してもらえると、医療者視点での不公平感が薄れるだけでなく、患者視点としても、「DPC制度ゆえに医療資源の投入が抑制されてしまった」などという最悪の事態を回避できるように思う。

今回のマニュアル、Ver.0.75ということで最終版ではなく、ドラフトではあるものの、全般的に、一番困る「こういうときはどうしたら良いの?」という、みんな共通の『悩みどころ』は書いてあるのだけど、『答え』の要素のところは、「○○を選択するにたる相応の理由が必要」等の記載になっている。答えは教えてくれない。症例は千差万別で、多かれ少なかれ差異があることを考えると、こういうマニュアルになることは致し方ないのかもしれないが、これでは益々「この場合は、症状詳記に○○と書け!」といった指南書が出回るに違いない。

■病院指標
事務局から、今回は機能評価係数2への追加の要否は判断しないと前置きがあった上で、病院が指標を作成し公開することの意義と内容の議論であった。各病院が分析できるような人材・体制を整備することが重要であり、係数設定により、その流れを加速させたいようだ。重要性はそのとおりだと思うが、係数=患者負担、であることを考えると、患者視点での内容評価が不可欠だと思う。その前提が共有されない中では、指標は医療者視点のものになってしまうことを懸念していたが、懸念通り、医療者視点のものが大半だった。

平均在院日数、患者は知って、うれしいのか??
例えば、がんになった患者が手術を受けるとき、在院日数が平均15日の病院と、10日の病院を比較して、10日の病院を選ぶだけの合理性を持ち得ているだろうか。この数字を作成・公開することで費用が余計にかかっています、という説明を患者に納得してもらうのは厳しいのではないだろうか。入院にかかる平均費用や、医師ごとのおおまかな術式別の手術件数、再手術率といった指標の方が、患者にとっては良いのではないだろうか。週刊誌や新聞社が独自にランキングしている指標より、公平性、透明性があるものを提示してくれるのならば、価値があると思う。

5大がんステージ別症例数は良い!
延べ退院患者数ではなく、実患者数で評価するこの指標は、どういった患者が集まっているのかが分かって良いと思う。ステージ毎の手術件数も分かると、なお良い。(ちなみに委員からの質問で「ステージ」が分からない人もいるのでは?とあった。確かに知らない人は知らないだろうが、サッカーのオフサイド、野球のタッチアップみたいなもので、「がん」に興味がある人であれば、ほぼ全員が知っていると思ってよいはずだ)

病院関係者が病院関係者のために作る指標
肺炎、脳梗塞は、自分が病院関係者であれば、病院間の比較に用いるのに適した指標が並んでいると思う。ただ、患者視点で、これらの指標を見て、ピンと来る人は皆無な気がする。DIC、敗血症、その他の真菌症あたりは、言うまでもない。素人お断りの指標になるに違いない(説明文で「当院はDICの発症率が低く、全国の平均と比較し良い病院と言えます」と書くのが精一杯では。しかも病院ごとに患者バックグラウンドが違うだけに単純比較はかなり危ういこと)
また、委員から質問・意見のあった「救急車の応需率、非応需率」といった指標を入れるのはどうか?という提案は、「ここはDPC分科会なので、データも取れないし、検討できない」とバッサリ切られていた。病院のための指標ではなく、患者視点で非常によい指標だと思うのに・・・。

ソフトウェアベンダー、指標特需
これらの指標、各病院が作り、公表したら係数がもらえる公算が大きい。仮にデータ提出係数と同じくらいの係数が付くことを想定すると、DPC包括部分の収入が、年100億くらい(大規模な病院)では、2000万円程度、年30億くらい(中規模な病院)でも600万円程度、年10億くらい(DPC病院の中では小さめの病院)でも200万円程度の収入になる。ということは、ソフトウェアベンダーが「うちのシステムを使えば、指標の計算から、ホームページに反映まで自動でできます。費用はわずか年50万円です」といったビジネスが成り立つに違いない。ざくっと病院数をかければ、50万円×1,500病院=7.5億円となる。患者からお金を薄く集める仕掛けのおかげで、ソフトウェアベンダーと病院は増収になるに違いない。なお、DPCの係数により患者からお代をいただくというのは、出来高病院にはできない芸当ゆえ、不公平感があることも否めない。

病院指標に対し、今後に望むこと
DPCデータの良さである、患者のバックグラウンドの分かりやすさ、医療資源投入内容が分かりやすさを活かし、アウトカム、もしくはアウトカムに直結する指標を開示できないだろうか。例えば、リハビリ実施率、退院時ADLの回復状況、在宅復帰率などだ。あと意外と情報を得にくいのは、医師数やコメディカル人数、放射線撮影・治療機器の整備状況、ストラクチャーの部分が、画一的でなく病院間でバラバラなだけに、同じフォーマットで記載してくれていたら、非常に役立つように思う。今後に期待したい。

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