医療、福祉に貢献するために

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~ 株式会社メディチュア Blog

2013/01/13

クローズアップ現代「急増 卵子提供」


10日に放送されたクローズアップ現代「急増 卵子提供」。昨年、不妊治療について調べることがあったため、自分はある程度理解しているつもりでいたが、番組を見て、卵子提供の妊娠自体が体外受精よりハイリスクであるという新たな発見もあった。

見逃した方は、NHKオンデマンドでも観られるようなので、ぜひ。
また、番組で取り上げられていた内容、簡単に以下にまとめておくので、ご参考程度にどうぞ。

  1. 急増する卵子提供とは
  2. 卵子提供を受ける人が高齢
  3. ハイリスクな卵子提供による妊娠・出産
  4. 卵子提供する人のリスクと、報酬等のモラル
  5. 卵子提供で産まれてきた子供への告知
  6. 法的整備



1. 急増する卵子提供とは

他人(ドナー)の卵子と、夫の精子を体外で受精させ、妻の子宮に戻し、妻が出産する。妻が出産するため、法律上、その夫妻の「実子」となる。


個人的には、卵子提供という手法自体の一般社会における認知度が低いことを考えると、賛否両論あるものの、番組自体で取り上げたことの意義は大きいと思う。


(番組では触れていなかったと思うが、類似の手法として、「代理母」は、妻の卵子と、夫の精子を体外受精させ、他人(代理母)の子宮に戻し、出産する。法律上は代理母の子となる。夫婦の受精卵以外を用いるケースもあったり、生まれた子供を養子縁組したり、色々と議論の余地が大きいトピック)

卵子提供は、アメリカやタイなど海外で行われているケースが急増しているとのこと。
なお、番組で紹介していた事例では、アメリカでは1回500万円。タイではその4分の1。タイには年数百人訪れるとのこと。金額の高さにも関わらず、夫婦は公務員などの決して超高給取りではない人も増えているらしい。
ちなみに、タイは費用が安いものの、言語の壁も含めたフォロー、サポートが不十分なケースもあるようだ。

2. 卵子提供を受ける人が高齢
不妊治療を受け、最後、わずかな望みを卵子提供にかけるケースが多いため、高齢になることが多いとのこと。番組に出ていた慶応の吉村先生が「若いときに子供を産んでもらいたい」とおっしゃっていたが、これは女性の就業の機会、キャリアの可能性を否定するものでもなんでもなく、単に産科医療の現場に何十年もおられる方の率直な意見だと感じた。

3. ハイリスクな卵子提供による妊娠・出産
番組では、愛育病院での統計が紹介されていた。A群(卵子提供ART)とB群(自己卵子ART)で、比較している

症例数 A群:26例 B群:47例
平均年齢 A群:43.0±5.3歳 B群:38.5歳±3.2歳
多胎妊娠 A群:9例(34.6%) B群:9例(20.4%)
早産 A群:12例(46.2%) B群:14例(29.8%)
前置・低位胎盤 A群:4例(15.4%) B群:1例(2.1%)
癒着胎盤 A群:4例(15.4%) B群:0例
単胎PIH(妊娠高血圧症候群) A群:3例(20.0%) B群:7例(19.4%)
双胎PIH A群:7例(77.8%) B群:2例(22.2%)
帝王切開 A群:25例(96.2%) B群:22例(46.8%)
(番組内の紹介資料より)

早産や癒着胎盤のリスクが高いと紹介していた。また、妊娠高血圧症候群で子宮から出血が止まらず、大量の輸血で母子ともに一命をとりとめた事例も紹介。通常の体外受精のケースと比較して、さらにハイリスクであるということは自分も知らなかった。上記数値を見ると、平均年齢の違いも影響している気がするが、こういった数値は今後、より明らかにされていくべきであろう。


愛育病院の医師のコメントで、「(母体にとっては)卵子も精子も他人のものなので、一部は拒絶反応が起こることも知られている。免疫反応も一部に関係するのではないか」とあった。

このようなことを踏まえ、ハイリスクゆえ、母体の受け入れ施設が限られてくることも認識されるべきと、吉村先生のコメントにあった。


4. 卵子提供する人のリスクと、報酬等のモラル
排卵誘発剤を打ち、一回で数十個を採卵する。謝礼60万円は海外への滞在費ということだが、バイト感覚で申し込んでいる実態を紹介していた。
タイでは、営利企業が増えてきているようなことにもインタビューで触れていた。

番組ではあまり触れていなかったかもしれないが、採卵時には、麻酔を使用したり、しない場合であっても痛みが残るケースもある。排卵誘発剤を使えば、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性もあり、気軽な「バイト感覚」にはリスクが付きまとうことへの警鐘が必要だろう。

5. 卵子提供で産まれてきた子供への告知
「産むこと」がひとつのゴールである不妊治療全般に共通かもしれないが、産んだあとのことにまで意識が及ばないことがままある。卵子提供の場合、母親の身体から分娩されているものの、遺伝子上は別の母親の子であり、今後、遺伝子治療などが進んでくると、告知は避けて通れない問題になると思われる。番組では、1例の家族を紹介していたが、非常に難しいことだと思う。

6. 法的整備
国内において、卵子提供を認めていくようなガイドライン作り、システム作りが今後不可欠であり、その中では、親子関係の明確性の確保や、子供が出自を知る権利も守られる必要があり、そういったことのための公的運営管理組織のようなものが必要ではないか、と吉村先生がコメントされていた。これらの整備は、現場で医療にあたっている人にとっては喫緊の課題であろう。


番組内容だけでなく、個人的な感想も混じっていることはご容赦いただきたいが、卵子提供、今後、より注目を集めるテーマであることは間違いないように思う。それだけに、経済的な問題(高額な費用負担や、ドナーの報酬、それを仲介する業者、といった金銭が絡む問題と、ハイリスクな出産や生まれてきた子を社会が支える負担の問題)と、倫理的問題を考えていく上で、「卵子提供」ということの一般社会における認識を高めることも重要な課題であると感じた。

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