2013/03/06

地域医療支援病院の制度、いったい誰に向いて決めているのか

「地域医療支援病院(wikipedia)」 一般人には馴染みのない言葉である一方で、医療従事者、特に急性期病院の人であれば知らない人はほとんどいないのではないだろうか。

昨年秋、近所の病院がこの地域医療支援病院の承認を受けた。医療者側の視点で言えば、充実した医療を提供できることに対し、お墨付きをいただけたことを喜んだに違いない。ただ、患者の視点で言えば、突然の値上げであることは、その言葉自体の認知度が低い以上に、知られていない。

知られていないから、ほんのわずかな値上げだと思ったら大間違い。1回の入院で1万円の値上げである(ただし、急性期病院の多くはDPC制度という包括払い制度で算定しているため、1万円とは限らず、入院料の包括部分に3%弱の係数がかかる。詳細は省略)。病院にしてみれば、この値上げで、年数千万から数億円の増収になるほどのインパクトがあるのだ。

そして、この値上げ。病院が嬉々として「地域医療支援病院の承認を受けました!」と報告しているのだ。もちろん病院には悪意は全くない。つまり、医療者は良心のもとにこの地域医療支援病院の承認を目指し、日夜努力しているのであり、このことはもっと多くの人が知るべきことであろう。この地域医療支援病院とは、地域のかかりつけ医などと連携し、より効率的な質の高い医療を提供する努力に対する報酬であり、日本の医療制度において医療費が増大一方の中、急性期医療を効率的にするインセンティブを与え、医療費を抑制しようという仕組みなのだ。つまり、「突然の値上げ」ではなく、「報われていなかった努力に対する正当な評価」に近いものだ。地域医療支援病院の制度、これはもっともっと市民が理解すべきことだと思う。かかりつけ医を持ち、急性期医療の医療資源(人的資源、財務的資源)を有効活用することに対し、真剣に考えなければいけないと思う。
日医総研 ワーキングペーパーNo.274 

先日、日本医師会総合政策研究機構ワーキングペーパーにおいて、この地域医療支援病院に関する都道府県医師会のアンケート結果がまとめられていた。(日医総研のワーキングペーパー、興味深いものが多くまとめられている。かなりオススメ)

非常に興味深い結果、コメントがあったので、ぜひご覧頂きたい。特に現状の制度・報酬のあり方は見なおすべきという意見も多くある。また、承認後の都道府県から医師会への情報提供の点でも、医師会は情報が提供されない、満足していないという回答が多く占めている。すでに地域医療支援病院の承認を受けている病院だけでなく、制度ありき・報酬ありきで地域医療支援病院の承認を目指している病院も、本来の目的である患者・市民のための地域医療を支えることとは何かを考えなおすよいきっかけとなるのではないだろうか。


なお、厚生労働省でも、この地域医療支援病院の承認のあり方については議論している。昨年夏に議論をし、実態調査を行った後・・・と言っていたが、まだ次の会が開催されていない。こちらの動向にも注目して行きたい。