2013/07/31

#8000



以前、#7119を紹介したが、今度は#8000だ。
★小さなお子さんをお持ちの保護者の方が、休日・夜間の急な子どもの病気にどう対処したらよいのか、病院の診療を受けたほうがいいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師への電話による相談ができるものです。 
★この事業は全国同一の短縮番号#8000をプッシュすることにより、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や受診する病院等のアドバイスを受けられます。
こどもの場合、#7119もあるが、こちらに電話するのもよい。でも実は違いがあるから気をつけなければならない。

#7119
地域限定:東京都、大阪市、奈良県、愛知県など一部地域に限られる
消防庁の管轄:総務省消防庁の管轄で、救急安心センターなどが業務を担当
24時間:24時間受付している

#8000
全国:全都道府県で対応
厚労省の管轄:厚労省救急医療係のもと、全都道府県の保健行政担当が業務を実施
夜間のみ:夕方から夜間のみの対応。終了時間も都道府県によりばらつきあり

こどもだったら、#8000。覚えておいて損はない。

#8000の紹介はこちら

小児救急医療電話相談事業(#8000)について |厚生労働省

2013/07/30

43歳未満を助成対象とするならば、民間保険などの支援策も同時にすべき

昨日開催された第4回「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」で、不妊治療の助成制度の見直し方向性がほぼ固まったようだ。

不妊治療助成“43歳未満”に NHKニュース

先週末に報道されていた内容では40歳未満か43歳未満の2案があったようだが(下のニュース参照)、43歳未満という意見でまとまったということだろう。
不妊治療助成 年齢制限2案まとまる NHKニュース

助成制度の活用は年々拡大していて、昨年度は13万件、200億円近くに上ったということだ。経済的に支える仕組みがあることは非常に良い一方で、より多くの人に効果的に制度を利用してもらうため、年齢制限が設けられることは、一部の人たちにとっては苦しい制度変更となってしまう。

これを回避するためにも民間保険の活用が議論されるべきだろう(まだ議事録を読んでいないから分からないだけで、昨日の議論で言及されているかもしれないが・・・)。民間保険の活用については以前のブログで書いた。あわせて読んでいただけると幸いだ。

不妊治療に対する民間保険の活用案
 http://meditur.blogspot.jp/2013/05/blog-post_18.html

不妊治療に対する新保険は本当に生まれるか
 http://meditur.blogspot.jp/2013/06/blog-post_8.html

助成対象の年齢制限が、民間保険の活用の議論を活性化させ、結果的に、多くの人が受けられる公的支援と、望む人はより手厚いサポートが受けられる民間支援と、これら両方が充実することを期待したい。

2013/07/28

コストコで難消化性デキストリンが売っている

コストコで、難消化性デキストリン25.6オンス(730g弱)が1,298円だった。

Kirkland Signature™ OPTIFIBER™, 25.6 Ounces

楽天などでの類似商品の値段と比較すると、多分、安いと思うのだけど、買わなかった。コストコの薬局コーナーはサプリメントがたくさんあって、見ているだけでも面白い。売り方は日本もアメリカも大差ないように思うが、やはり色々違う。日本のドラッグストアでは比較的小容量の商品が多いのに対し、アメリカはサイズがデカい。Fish OilやMulti Vitaminのようなメジャーな商品では特大サイズも見かける。そして、大きな違いは、子供向けサプリメントがあることだ。マルチビタミンを子供に飲ませる意味があるかどうかは分からないが、タブレットや錠剤ではなく、グミになっているから、子供も飲みたがるのかもしれない。

Natural Kingdom Kosher GUMMY VITAMINS Collagen Gummies NYC halal
日本でいうところの肝油みたいなものなのか??

さて、コストコの難消化性デキストリンを買って、何か新しい飲み物にでも混ぜて、特保でも目指そうかな・・・。

2013/07/27

Leap Motionを購入

これは医療と関係があるのか?と自問自答したところで、正直まだ何に使えるか考えてもいないし、分からない。

Leap Motion本体
でも買ってしまった。8,200円。

医療の現場で使えないか考えてみる。
手術室で3Dナビゲーションを活用していたり、しかもそれをiPadで見ていたりもする。

 

術中に触れるiPadには特殊なカバーをしていたり、ケースに入れていたりすることが多いのだが、やはり触れるのは神経質にならざるをえない。

そんなとき、Leap Motionならば、触らずに画像の向きを変えたり、気になるところを拡大したり、自在に操れる気がした。


ポチッと購入ボタンを押したときは、何も考えていなかった。直感で「いいかも!!」と思っただけだ。手術室で使えるかも、なんていう理由は後付けだ。

Leap Motion本体とつなぐケーブルはちょっと変わった形

Leap Motionを知らない人は下の動画をどうぞ

2013/07/26

ハイブリッドが一般名詞化した今、手術室もハイブリッドへ

先日のスペインの鉄道事故は電化区間と非電化区間を連続して走行できるハイブリッド仕様の列車だったらしい。

プリウスがハイブリッドカーとしてデビューして以来、ハイブリッドという用語は身近なものになった。トヨタだってホンダだって日産だって、ハイブリッドカーを作っている。車に限らず、バイクだって、バスだって、船だって。こぞってハイブリッド。パソコンにだって、HDDとSSDをくっつけたハイブリッドドライブなんてものがある。

医療の世界では、腹腔鏡と開腹(開胸)を組み合わせたり、内視鏡と腹腔鏡を組み合わせたり、ハイブリッド手術が登場している。手術室では、心臓血管外科と循環器内科の各機能が合体したハイブリッド手術室の導入が増えている。


東芝メディカルシステムズ株式会社|ハイブリッドアプローチ
ハイブリッド型手術室|倉敷中央病院心臓病センター心臓血管外科|岡山県倉敷市

部屋が最新になったところで、どういった恩恵を受けられるか、正直、患者レベルでは分かりにくいのだが、最新技術は色々と進歩しているらしい。例えば、それが経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)だ。心臓の弁の機能が衰えたりした場合に、新しい人工的な弁を植え付ける手術を、カテーテルで行えるというのだ。先月、その弁の製造販売承認を取得したとのこと(詳しくはこちら)。いずれ保険償還も認められ、この治療が広がるかもしれない。


経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)|倉敷中央病院心臓病センター循環器内科

ハイブリッドは手術室にも広がっている。

2013/07/23

歯科のかかりつけ

30数年生きてきて、これまでに5つほどの歯科クリニックにお世話になっている。5つも移り変わっているのは転居などが理由だ。どこも良かったが、現在通っているところはその中でもピカイチで良い。痛いときの優しさあふれる治療も良いが、定期的なメンテナンスを重視している点が特に良い。

先日、地方に出かけたときのこと。たまたま見かけた歯科クリニックの看板に、『一般歯科、小児歯科、矯正歯科、予防歯科、口腔外科、健康相談』と書かれていたのを見かけた。一般人に馴染みは薄いものの口腔外科はたまに見かける。でも『健康相談』と掲げているのは珍しい。

歯科クリニックで健康相談なんてできるのだろうか。一体誰が健康相談をするのだろうか。歯科医に聞いたところ、虫歯が原因で、身体に異常をきたすこともあり、もし健康に不安があるのなら歯科医に相談してみるのも悪くないとのこと。さらに、その『健康相談』は身体全般的な健康相談ではなく、歯科健康相談のことを指しているのではないか、とのこと。

唾液潜血検査(サリバスターテスト)などを行い歯周病のリスクを判定したり、歯磨きのアドバイスやデンタルフロスの効果的な使い方を教えてくれたりする歯科健康相談というものがあるらしい。
サンスター社のペリオスクリーン

プラークコントロールという言葉はCMで良く聞くこともあって、比較的浸透しているように思うが、歯科健康相談、日本の健康寿命をのばすためにも大事なことだと思う。

2013/07/21

歌舞伎町で医療を考える

学生時代、パン工場のラインで「1点」というシールを貼るバイトをしていた。1分間に100個くらいの製品が流れてくる製品ラインの最下流で、シールを手にパンや饅頭と格闘した。自分の手は1分に60個も貼れれば良い方で、シールを貼れなかった饅頭が自分の後ろに高く積み上がり、ライン担当の社員から怒られたのは懐かしい思い出だ。

ちなみに食パンくらいのメジャーな製品になるとロール状のシールがセットされた機械がラインの最後にあり、自動でペタペタシールが貼られていく。

そんなパン工場の社員は「ロボットは壊れたり、機嫌を損ねたりするし、融通は利かないし、商品が頻繁に変わるところは人間の方が良い」なんて言っていた。それゆえなのか、パン工場はロボットが活躍する部分と人間が活躍する部分がそれぞれあり、うまく分担していた。
3年前くらいに亀田が導入したとのニュースがあった抗がん剤自動調整装置が、国がんなど他の施設でも導入され始めているようなのだ。薬剤師など医療者の曝露リスクを最小限に抑えるに有効なロボットだろう。病院では他にもロボット支援手術(da Vinciが有名)の一部手術に保険点数がついたり、ロボットは活躍する余地が色々とありそうだ。

ちなみにCytoCare、1台1億5千万円くらいするらしい(ソースはこちら)。かつてパン工場の社員が「人は安いし、壊れたら交換すればよい」というブラックジョークを言っていた。ロボットは確かに高い。でも、人の代わりを買っているだけではなく、質の向上も買っていると考えるべきだろう。

医療の質向上、医療現場の環境向上のため、ロボット活用の可能性はまだまだ余地があるのかもしれない。歌舞伎町のロボットレストランの前を通りながら、そんなことをふと考えた。

2013/07/20

ピークフローもSPO2もインターネット上に情報が保存される時代へ

iPhoneがパルスオキシメーターになる « WIRED.jp

以前、上のニュースだったかと思うのだが、それを見て「欲しい!」と思ったものの、高くて手が出なかった。先月、先々月の節約・節制で少し余裕があり、また他でもレビューを見たりしたので、買ってみた。

microlife社のピークフローメーターPF-100(右)とMasimo社のiSPO2(左)

SPO2を測るのは個人的な趣味でしかないように思うが、15年ほど前、ややひどめの喘息発作を起こし、クリニックで測ったときに70台の数値を見て、発作のつらさが客観的に分かるのか・・・と感心したものだ。確かそのときは吸入して90台に戻ったのを確認して帰宅したように記憶している。

でも、家に帰ってしまうと体温計で体温を見るようには、SPO2を測ることはできず、その後、発作が起きてもただ苦しいだけで、SPO2とは縁がなかった。

そこで、購入したiSPO2。

iSpO2 - Track & Trend Your Blood Oxygenation | Masimo

準備は、アプリを入れ、計測するコードをiPhoneにつなぐだけ。いたってシンプル、簡単だ。
アプリもシンプル。ちなみに自分のSPO2は普通で95~97くらい。飲酒し軽い発作が起きているときで93とか94くらい。

今は高い(2万円以上)おもちゃだけど、ピークフローメーターなどと使い道を考えたい。ちなみに上の写真に載っているピークフローメーター、microlife社のものでUSBでPCと接続しデータをダウンロードできるやつである。Microsoft HealthVaultとの接続も可能だ(日本では残念ながらMicrosoft HealthVaultが使いづらい)。

asthma management - Microlife

医療機器の販売・製造の制度、もうちょっと緩和してもらえると、日本からもこういった計測結果を電子的にやりとりできる機器がもっと出てくるように思うのだが・・・。(大手ならまだしも、ベンチャーには医療機器に手を出すのは難しい) 医療目的とおもちゃ目的で、おもちゃであれば誰でも作って良いとか(PL法もあるから、無責任な作りっぱなしや何かあったら逃げるということはできないのだし)。

2013/07/19

院内を探検して、メダル、ゲットだぜ!

病院のホームページ、最近は充実しているところも多い。クールなデザインであったり、携帯向けのページを用意していたり。病院だから地味なホームページで十分、なんていう考えは一昔前のことになってしまった。

こども病院では、こどもにも分かりやすいことを意識してホームページを用意しているところもある。例えば、東京都立小児総合医療センター。

東京都立小児総合医療センター

院内の案内はちょっとした探検ゲームのようになっていて、すべてのメダルを集めたくなってしまうような良い仕掛けがなされている。

ちなみに、厚労省はホームページのガイドラインで、受療をあおるような記載や、成果・実績を過度にアピールするような記載を制限している。

医療機関ホームページガイドラインを作成しました|報道発表資料|厚生労働省

規制も重要だが、できれば各病院が情報を開示する取り組みを加速させるような前向きな施策も考えてもらいたい。(一定ルールで情報を開示、更新していたら、診療報酬上で加算が取れる等)

ちなみに、都立小児総合医療センターは、大人向けの情報も充実している。例えば「小児科病棟の正規保育士が外来で行ったプレパレーション」の実績なども開示している。


こども向け「探検」ができるページはこちら
こどものページ|東京都立小児総合医療センター

充実した臨床指標はこちら
臨床指標について|病院のご紹介|東京都立小児総合医療センター|子どもの病気全般(救急救命・先天性疾患・小児がん・外傷など)

皆保険ゆえ、どの医療機関にかかっても医療費に差は生じない(同じ診療内容であれば)。医療の質を上げるには、情報開示と、それに基づく患者による医療機関選択が、皆保険を維持するために重要だろう。

2013/07/18

死亡率の悪い病院の裏側に低質なケア、不適切なスタッフィング、悪いマネジメント

イギリス、スタフォード病院のスキャンダル(詳しくはこちら⇒wikipedia)は衝撃的だったが、その後、病院自体を縮小するような計画があり、地元で反対デモが起きていたりしていたようだ。

昨日あたりのニュースで、下のようなもの(下記インディペンデント紙のリンクを参照)が流れていた。イギリスの患者死亡率の高い14病院について調査した結果、低質なケア、不適切なスタッフィング・病院マネジメントが見られた、との報告がなされたようだ。
'Trapped in mediocrity': The damning verdict on the NHS as report reveals 14 hospitals had higher than expected mortality rates - Health News - Health & Families - The Independent


スタフォード病院に限らず、不適切な病院運営によって、医療の質が低下し、亡くならなくても良い人が命を落としている可能性があるとのことだ。これは日本ではあまり議論にならないが、調査をしたら同じような結果が出てくるかもしれない。


ニュースの最後に8つのNHSの野望が書かれていた。(適当な和訳ですいません)


  • Reduce avoidable deaths with early warning systems for deteriorating patients and introduce more accurate statistical measurement of mortality rates.(避けられる死を減らすための早期アラートシステムと正確な計測システムを整備する)
  • Expertise and data on how to deliver high quality care to be more effectively shared between NHS trusts.(質の高いケアを提供するための専門的知識・技術とデータをNHS trustsと共有する)
  • Patients, carers and the public should be more involved, and should be able to give real-time feedback.(患者と医療者、そして市民を巻き込み、リアルタイムのフィードバックを可能にする)
  • Patients should have more confidence in the regulator the Care Quality Commission, with wider participation of patients, nurses, and junior doctors on review teams.(患者、看護師、若手医師なども広く参加するレビューチームとともにCQCを患者が信頼する)
  • Hospitals in remote areas should not be left isolated, with staff from better-performing hospitals used to train and inspect others.(離れた地域の病院は、第三者から評価された良いパフォーマンスの病院で経験を積んだスタッフにより、孤立させない)
  • Nurse staffing levels and mix of skills should be appropriate to the patients being cared for on any given ward.(看護師のレベルとスキルミックスはケアを提供する病棟の患者たちにとって適切でなければならない)
  • Medical directors should “tap into the latent energy of junior doctors” and include them in review panels.(病院幹部は若手医師の隠れたエネルギーを鼓舞すべき
  • NHS employers should make efforts to ensure staff are “happy and engaged”.(NHSは職員を”幸せに従事させる”努力をしなければならない) 


  • 皆保険制度を維持していく上で、こういった病院・医療の質を評価・向上させるための仕組みは重要ではないだろうか。現状の外部機関による病院評価の内容は、患者視点では足らないように思うだけに、イギリスの事例は参考にできるかもしれない。 余談だが、引用した動画はイギリスの国会なのだろうか。ヤジはどこの国も似たようなものだ。

    2013/07/16

    「芸人初のボケをドクターストップされた」から考える痛みに対するチーム医療

    先日放送されたクローズアップ現代、真面目な内容だったが、ドランクドラゴンの鈴木さんが医者から「からだのことを考えて、すべらないようにしてください」と言われ、「芸人初のボケをドクターストップされた」と告白したシーンは衝撃的だった。

    昨年から、ロコモーティブシンドローム(整形外科学会の説明)がこれから増えることに対し、現在の主流である整形外科が中心となり医療を提供するスタイルから、整形外科だけでなく、リウマチなどの内科系や、ペインクリニックなどの麻酔科、さらには精神科など多領域の医師、そしてリハビリテーションのセラピスト、臨床心理士、看護師、薬剤師など多職種が関与していくスタイルが主流になるべきだろうと考えている。

    健康年齢を上げることの重要性がますます高まるなかで、ロコモーティブシンドロームにチームで取り組む、このような医療施設を自分ではロコモセンターと呼んでいる。このようなスタイルでの診療、医療施設のデザインに前向きな反応を示してもらえるケースも増えているように感じる。先日のクローズアップ現代は腰痛をテーマにしていたが、ロコモセンターを考える上で、非常に参考になる話だった。内容はウェブでも大体見ることができる(⇒こちら)。時間があれば是非。

    2013/07/14

    大衆薬「エパデール」から考えるOTC市場の活性化


    今週の東洋経済に大衆薬の特集が載っていた。

    個人的には、大衆薬は作る側(製薬メーカー)、売る側(ドラッグストア・薬局)、買う側(一般市民)、3者に加え、傍観している側に重要なプレーヤーがいる点が話をややこしくしているように思う。

    傍観している側にいるのは、保険診療している医師・医療機関と保険診療の支払をしている保険者、そしてOTCの認可など市場を統制している行政だ。エパデールのOTCについては以前ブログで販売が認められたことを書いた(http://meditur.blogspot.jp/2012/10/blog-post_26.html)が、承認までは医師からの反発が強かったと聞く。

    ■医者を受診して、OTC薬を買いに来るパターンはあり得るのか!?

    エパデールのOTC薬を買うときの流れが東洋経済に詳しく載っているが、正直、最後の値段のところでノックアウトだ。医者で処方箋をもらったら1,000円ちょっと(医者でかかる診察料、検査代や薬局でかかる管理料なども含めるともう少しかかる)のものを、薬局で6,000円弱出して、OTCを買う『金銭感覚の鈍い人』がどこにいるのだろうか。

    シナリオ1 とりあえず薬局に来た健康意識の高い人
    健康診断で脂質異常症 → 医者にいかずにまず薬局に、という人の流れを想像してみる。ドラッグストアでエパデールOTCのライバルは次のようなものになるだろうか。

    ・ EPAのサプリメント
    ・ 黒烏龍茶などの「気になる人」向け食品
    ・ 大柴胡湯のような漢方薬
    ・ 脂質異常症向けでもなんでもない「こんにゃくゼリー」のようなダイエット食品

    ここから見えてくるのは、ライバルが強いのではなく、エパデールのOTCが弱い、ということだ。6,000円弱という金額は心理的ハードルが高い。売っている薬剤師ですら『実はお医者さんでもらったら、もう少し安いんですけどね』と思っているに違いない。

    シナリオ2 高脂血症で医者にかかっている人

    すでに医者でエパデールをもらっている人がOTCに移行するシナリオは・・・正直難しい。

    その1:検査結果が改善してきたため、処方をやめるとき
    「良くなってきたので、薬を出すのは今回までです。次回以降、気になるようであればOTCでどうぞ」なんていうシチュエーションが想像できない・・・。

    その2:まだ薬を処方するほどでない人
    「まだ薬を飲むほどではないと思いますが、気になるようであればOTCでどうぞ」なんていうシチュエーション。やっぱりこれも想像できない。


    ■OTC薬の販売には保険診療のカバー範囲のコントロールが必要

    上述のシナリオ2で考える。医師は高脂血症であればエパデールを処方できる。そこで保険診療上の処方できる範囲を狭めたらどうだろうか。簡単に考えるため、高脂血症のレベルを、健康・軽症・重症の3段階に分けよう。健康な人は医者に行く必要もない。現在、軽症・重症の人はエパデールが保険で処方される。これが、軽症の人は保険で処方できない(処方されるとしても自己負担割合が高くなる)、重症の人は保険で処方される、と変わったらどうだろうか。

    4週間分で考えてみる。処方薬は薬価以外に医師の診察・検査料、調剤薬局での基本料、調剤料等、4,000円~8,000円程度(10割負担)の費用がかかるが、仮に6,000円(10割負担)かかることとする。

     OTC:店頭価格 11,600円
     処方薬(10割負担):7,308円+6,000円=13,308円
     処方薬(3割負担):2,192+1,800円=3,992円 ★
     処方薬ジェネリック(10割負担):2,738円+6,000円=8,738円
     処方薬ジェネリック(3割負担):822円+1,800円=2,622円 ★

    どうだろうか。金銭的な負担で言えば、★印の3割負担のマジックにより、負担が大幅に軽くなっていることが分かる。長期服用となる薬ほどOTCに手を出しづらい。

    軽症の人は薬剤費だけ保険でカバーされなくなったとする(再診料などは3割負担)。すると以下のような選択肢に変わる。

     OTC:店頭価格 11,600円
     処方薬:7,308円+1,800円=9,108円
     処方薬ジェネリック:2,738円+1,800円=4,538円

    ようやくOTCが戦えるかも?と思える範囲に入ってきた。(本題からはそれるが、10割負担だとジェネリックの安さが強烈だ) 例えば、保険者が支払いをコントロールし、セルフメディケーションを促し、「軽症の人はぜひOTCを活用すべき」としたら、OTC市場も活発になり、医師不足が叫ばれる中での医師の負担軽減に、受診抑制が貢献できるかもしれない。
    (アメリカでOTC市場が大きいのは保険でカバーされる範囲が限定的だったり、保険に加入していない人が多いせいもある)

    保険者は「どこに、何にお金を払うべきか」、今以上に口を出すことで、有限な医療費・医療資源の効率的な活用を促進し、OTC市場・セルフメディケーションを活性化させることができるように思う。

    2013/07/09

    将来、食べ過ぎの人や運動しない人には、薬なんて処方されないかも



    タイトルに「Big Data」が含まれていることを意識せずに動画を見た方がよいかもしれないが、活動量計などから得られる情報は、医療に生かす「資源」だと思う。

    ドクター中松氏が35年間食事を撮影・分析して、イグノーベル賞を受賞したことはご存知の方も多いかもしれないが、これは先見の明があるのではないだろうか。

    もしかしたら、将来、口にする物すべてを記録することが医師から命ぜられるかもしれない(アメリカなら保険者が命ずるかも)。食事をうまくコントロールできない人や運動しない人に飲ませる薬は保険でカバーされない、なんてこともありえるかもしれない。活動量計や食事記録は夢のデバイスでもなんでもなく、現実にあるだけに、これはそう遠くない未来のような気がする。

    2013/07/07

    病院のサバイバル戦略

    15年以上前の本を読んだ。


    いまさら感のあふれる本だと思って、軽く読もうと開いてみたのだが、意外と面白かった。ホスピタルアイデンティティ(HI)のブームが来ていたのか、様々な院長がHIを決めたことを誇らしげに書いていた点は時代を感じさせるが、相澤病院の相澤孝夫理事長や、恵寿総合病院の神野理事長、北原脳神経外科病院の北原理事長など、その後の活躍を考える上で貴重な文章が多くあった。

    相澤理事長の文章では「24時間365日体制の救急外来を開き、(中略)、急性期リハビリテーションを行い、早期退院、早期離床を促すための退院準備病等をつくる」と書かれている。これが現在の相澤病院において、重要な意味を成していることは疑いの余地がない。

    また、神野理事長は、「医療業界も業務の見直し・改善(リエンジニアリング)に真剣に取り組む時期である」と述べている。これは今もそのまま通用する言葉だ。具体的な取り組み内容も今となっては当たり前のことかもしれないが診療材料のSPD化や臨床検査の院内LAN構築、薬品在庫管理・卸一社化、オーダリングシステム導入などの取り組みが書かれている。

    サバイバル戦略というタイトルの本だが、先頭集団の取り組みは学ぶところが多いということを歴史が証明してくれる良い本だと思う。そして、今の先頭集団(それは国内?海外?)から学ぶことの重要性を再認識した。

    2013/07/06

    #7119

    暑い!!
    熱中症になりそうだということで今日は近所の児童館に。

    そこに置いてあった救急受診ガイド。良くできている。

    もちろん、ガイドを悠長に読んでいる場合ではないような緊急事態のときは、迷わず119番だ。

    そうでないとき、まさにこの表紙のような「病院? 救急車?」という状況のときは、このガイドを見てほしい。(理想は、緊急時でないときにあらかじめ目を通しておき、いざというときは、ぱっとページをめくるくらいが良い)
     緊急度の説明も書いてある。色分けされていて、後半のガイドのページでも、基本、この色で大体判断がつくようになっている。これはウェブページや携帯サイトでも同じ色分けになっている。

    ウェブページや携帯サイトもよくできている。いざというとき、落ち着いて携帯で見ることは難しいかもしれないが、焦って何か検索するくらいだったら、まずここを見るべきかもしれない。

    相談結果の例
    ウェブでガイドを見ると、症状や年齢を選択していくだけで上のような結果が表示される。焦らずに「小児科へ」というメッセージとともに、症状が変わったら119番、迷ったら#7119とある。

    この#7119、以前、電話したことがあり、とても助かった記憶がある。というのも、家族が目をぶつけ着けているハードコンタクトレンズが割れてしまい、すぐに医者に見てもらいたいけど、おそらく救急車を呼ぶほどではないが、土日だったので、どこに行ったらよいか分からない状況だった。電話したら、ひと通り話を聞いた上で、眼科で見てもらえるところを教えてくれた。この#7119、認知度があがってほしいものだ。

    東京版 救急受診ガイド|東京消防庁

    2013/07/05

    「日本は妊娠・卵子老化の知識が突出して低い」 from 東洋経済オンライン

    つい最近の東洋経済オンラインに国立成育医療研究センター不妊診療科の齋藤英和医長のインタビューが掲載されている。記事は昨年の7月21日号の記事を加筆修正したようだ。

    週刊東洋経済 2012年 7/21号 不妊特集⇒    


    この雑誌は自分も手元に持っていて、読者に男性が多いことを意識したのか、男性不妊を取り上げていた印象が残っている。あらためて今また読んでみると、バイアグラの記事があったり、自然妊娠の可能性をできるだけ追求すべきという意見があったり(妊娠できる年齢を考慮するとできるだけ早期に体外受精に移行すべきという意見もある)、違和感があるところもあるものの、お金の面でもシビアに書いてあり、わずかではあるが不妊治療クリニックの乱立にも触れている。

    さすがにこの記事は1年前の雑誌なので、読めない人も多いかもしれないが、東洋経済オンラインの記事は、今読めるので、内容は限られているが、ぜひ読んでみてはどうだろうか。

    東洋経済オンラインの記事 ⇒http://toyokeizai.net/articles/-/14586

    2013/07/03

    生殖医療の進歩と社会的な受け入れ機能の強化

    ■生殖医療は身近な話題だ

    生殖医療は「近年、目覚ましい進歩を成し遂げている」という人と、「この10年大きくは変わっていない」という人がいる。どちらもそれぞれの立場での意見なので、間違っていないように思う。そして共通しているのは、生殖医療を良く理解している人たちである。

    一方で市民はついてきているか?というと、どうも怪しい。生殖医療は一部の悩める人の話題であって、縁がないという人が大半なのではないだろうか。クラスの1人は体外受精で産まれてきているというのに、である(クラスの1人~については、以前のブログ参照)。

    また一方で生殖医療を知ろうという動きは、「生殖医療をなぜ市民が知らなければならないか」「他の医療よりも重要なのか」という疑問からスタートして、次第に議論は収束しなくなり、「社会保障制度との関係は」、果ては「国民とは、国家とは」となり兼ねない。

    産む権利・産まない権利・自由が保障され、産みたいけれど産めなかった人が冷遇されず、産みたい人が生活しやすく、そして、産まれてきた子どもが幸せに・・・と考えていると、医療の範疇を超えることは確実だ。このように俯瞰的に社会をとらえ、多様性を受け入れることを考えるときに、生殖医療は非常に良い切り口だと思う。

    ■知ることからスタート

    女性手帳がマスコミに取り上げられ、世間を騒がせたのは記憶に新しい。なぜ批判されたのだろうか。手帳を配るという前時代的発想が批判を受けた。女性だけに配るのはおかしいという批判もあった。産むことを国が決めているようでおかしい、自由を奪い個々を尊重していないという批判や、「産めや増やせ」と戦時中を想起させるという批判もあった。また、みんな不妊のことなんて知っているという批判もあった。

    ひとつひとつの批判はもっともだ。でも不妊の現状、生殖医療の現状を知っていたら、少し批判も変わった気がしてならない。生殖医療の現場から聞こえてくるのは、産むのに適したタイミングと、適さないタイミングでのリスクの理解が不十分であることだ。さらには医療の技術がどれだけ進歩しても、心に空いた穴まで埋めてくれないかもしれない。臨床心理士の話などを聞いても感じることだ。

    これからどういう社会を作っていくか。どうすべきか考える上で、重要と思われることは、様々な知識を身に付けることだと思う。

    ■良書から学ぶ

    何から読むべきか、迷った時の参考になるかどうか分からないが、少子化で2冊、不妊で2冊、取り上げた。この4冊は、どれもそれほど厚い本ではない。これらを読んだ後、足りないと思ったところを広げたり、深堀りすればよい。

    少子化について



    なぜ少子化が進んでいるのか、海外と日本は違うのか。少子化は悪いのか。これらを理解すること、情報を読み解く力を身につけられる。


    不妊について


    2冊とも不妊治療に携わっている医師が書いている(片方は医師と共著)ので、現場の危機感が伝わってくる。「間違いだらけの~」では、倫理的側面や不妊治療からの卒業などセンシティブなことにも触れている。先日出版されたばかりの本で、amazonにはコメントも載っていないが、非常に良い本だと思う。



    ■テレビから学ぶ

    テレビ番組は30分、1時間でコンパクトにまとまっていて、映像が流れてくると情報量も多く、刺激が強い半面、正しいか正しくないか判断しにくくなる(自分だけか??)。

    とはいえ、30分程度で最新の情報を得ることができるのは、非常にありがたい。特にNHKの番組では不妊社会をテーマにした番組を多く作っているので、参考になる。

    まだまだこれらの情報だけではバランスが悪いかもしれない。
    でも、何も考えていないのであれば、まずこの4冊、そしてテレビ番組を見てもらいたい(NHKオンデマンドとかで見られる?)


    最後に、吉村先生の本のあとがきに、そのとおり!と思った一文がある。
    高齢出産について考えると、妊娠や出産に伴う医学的・社会的問題点を網羅的に把握できることには、私自身が驚きました。吉村泰典著「間違いだらけの高齢出産」 あとがきから引用)
    参考にしていただければ幸いである。


    (2013/7/3 12:40 誤字脱字を修正しました)