2013/11/04

海外へ進出する病院の”脅威”とは(後半)

前半で、病院が日本の医療システムの先進性や高度性を売りに海外へ進出すること・輸出産業化することは、国内の医療機関にとって、あまり脅威にならないことを書いた。今回は、本当の意味での脅威について書こうと思う。

■真の海外進出の恐怖・脅威は、海外の医療の逆輸入にある

最先端の医療が入ってくることが怖いのではない。なぜなら、最先端の医療は、古くはオランダ、ドイツ、アメリカからと、その時代時代で、様々な最先端医療が日本にやってきている(日本も最先端を走っている医療は、逆に海外に出て行っている)。そして、価値ある医療は、日本において保険収載され、日本の医療として、日本中の病院で診療・治療を受けられるようになる。この分には、最先端の医療がやってきたことで、突如、日本の医療システムが壊れるといったことはマイナス要素はない。

コモディティ化した医療が海外において診療・治療形式や価格をぶち壊している事実があり、海外進出した日本の医療機関がその様子を目の当たりにしたら、間違いなく、そのぶち壊した医療を日本に持ってくるに違いないのだ。

例えば、白内障の手術だ。インドのアラヴィンド眼科病院では、白内障の眼内レンズ挿入術(片眼)3,000円でできるというのだ。普通、3,000円では眼内レンズすら買えない。日本の病院関係者なら、なぜ3,000円か疑問が湧かないはずはないだろう。なんと、眼内レンズは内製化していて、1枚150円程度で作っているらしいのだ。そして、徹底的に効率化・簡素化したオペレーションと、高回転モデルを実現し、圧倒的なパフォーマンスを追求した結果、1件3,000円という驚異的なモデルが完成したらしい。

仮に、この3,000円モデルが、日本に逆輸入されてきたらどうだろうか。そのモデルを導入した病院は突如大儲けし、その次の診療報酬改定では、白内障の手術点数は、大幅に下ることだろう。その瞬間、今、1件12万円以上もらっている病院は、売上が激減するに違いない。

このように、海外から低コストの医療モデルが逆輸入されるとき、日本の医療はいい意味で破壊される。その脅威にさらされていることを、海外進出した病院は、すでに身を持って経験している。この違いは、かなり大きいことだろう。

つまり、日本の先進的な医療を海外に輸出しようと考えているところよりも、海外の究極的にコモディティ化した医療を輸入するため海外に進出しようと考えているところの方が、はるかに危険なのではないだろうか。

ちなみにこの話は、下の本を参考にしている。ぜひ読むことをお勧めする。



なお、眼内レンズ150円の話は、上記の本に加え、下記に書いてある。こちらもあわせてどうぞ。