2014/08/01

認知症の患者の医療者負荷は見えてくるか

2014年6月23日 平成26年度第3回DPC評価分科会・議事録から。

以下、引用(赤字、青字は弊社が強調色付け)
○美原委員
 今、伏見先生が、実際に手がかかることに関しては診療報酬上に余り影響を与えていないからそれはいいのだというと、今ちょうど議論になっている認知症の患者さんの問題です。診療報酬上は認知症のあるなしはかかわらないけれども、実際にはマンパワーがすごくかかっていて、人件費等々を考えると支出がすごくかかっているというようなことが今回生きてほしいと私は思うのです。そのために様式1に認知症のあるなしを入れて、今の診療報酬制度では認知症のあるなしがあってもお金には全然関係ないけれども、何らかの形でそれがきちんと診療報酬に反映されるようなことを期待したいと思います。
○伏見委員
 実は糖尿病とか肺炎など、認知症を入れた分析、それから、年齢も含めて入れているのですけれども、1日当たり点数では余り変わらないのですが、在院日数に対する影響では有意に伸ばしているような傾向は出てきておりますので、点数表の面で見ると、例えば入院日数1、2の基準値が伸びるという形で間接的に医療資源必要度が高く評価されることになっていくのではないかと思います。
○美原委員
 この間、樫村先生がおっしゃったのを思い出したのですが、認知症があるとかえって病院は追い出したくなってしまうから平均在院日数は短くなる可能性がある、そんなことをおっしゃっていた。今、問題となっているのは、実際に今評価されている入院日数とかでは反映されないような手のかかりようが認知症にはあるということだろうと私は思うのですが、ぜひその辺は御配意いただければと思います。

引用、ここまで。

認知症の患者に対する負担は、急性期に限らず、どの医療機関でも問題になっている。それは何かしら問題が生じないよう、未然に防ぐ配慮であったり、体力的・精神的な消耗であったり。いずれも医事請求データや医療行為データでは分かりにくいものだろう。

レストランの客で喩えるならば、何度もウエイトレスを呼び、水を寄こせ、テーブルを拭けと言う割にはちっともメニューを頼まない客と、高いメニューを頼み、静かに食べ、帰っていく客を比較しているようなものだ。前者は低単価・高負荷、後者は高単価・低負荷。単価だけではウエイトレスの負担は見えてこない。

挙げ句、上記の議事録のような指摘がなされている。かたや「日数が伸びる」、かたや「短くなる可能性がある」、双方の話は矛盾する事象だ。前者は統計的な評価であり、後者は象徴的な事例をピックアップしている可能性が高い。

しかし、仮に統計的な評価をベースに入院期間Ⅰ、Ⅱのコントロールだけで点数の上げ下げをしようとするならば、それには限界があるだろう。認知症の患者は急性期では「厄介者」になりかねない。

そもそも、医療保険と介護保険との間に隔たりがある気がする。DPCデータにはADL項目や医療・看護必要度などの患者評価項目はあれど、要介護や要支援といった介護保険に関連する情報はなかった。今年度から、認知症の評価や介護保険の情報も埋め込まれるようになった。その点、医療機関のデータ作成負担は増しているだろうが、医療者負担に対する適切な評価・報酬への反映につながることを期待したい。(ただ、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の記入方法、患者のランクがなし、Ⅰ~Ⅳ、Mと6段階あるのに、記入は0、1、2と3段階になっているのはもったいない気がするのは自分だけだろうか。また、何度も繰り返すが、介護保険に歩み寄った情報が付加されたところで、相変わらず日数と点数を見ていては意味が無い。点数にはならない医療従事者の負担を評価することが不可欠だ。)