2015/04/09

病院統合のポジショントークが興味深い

地域医療構想や公立病院改革ガイドラインが相次いで出された。今後、病院の統廃合が活発になることを想定し、アメリカの最近の記事を読んでみたい。

先週のハーバードのブログ記事。

Everywhere, hospitals are merging — but why should you care? - Harvard Health Blog - Harvard Health Publications

統廃合が進むことで、効率的な医療や質の向上が期待できる反面、医療費・保険料のアップにつながりかねない、といったことが述べられてる。

日本では、診療報酬制度によって、医療の価格が定められているため、医療が寡占状態になったからといって、突然、医療費が高くなったり、保険料が上がるとは考えにくい。しかし、アメリカではこの懸念が大きくなっていることも事実のようだ。

上記のブログで引用しているNEJMの内容はこれだ。
Market-Based Solutions to Antitrust Threats — The Rejection of the Partners Settlement — NEJM
寡占状態を作り、医療グループが値段を上げれば、保険会社は保険料を上げざるを得ない。電気や水道などのインフラと同じで、この問題は適切に介入しなければ、住民が悲鳴をあげることになるだろう。

一方で、下の論理は非常に明快。日本で強く意識すべき内容はこちらだ。マウントサイナイのCEOのポジショントークであることは頭の片隅に置いておくべきだろう。

Kenneth L. Davis: Hospital Mergers Can Lower Costs and Improve Medical Care - WSJ
Hospital mergers can reduce unnecessary overlap in regional health-care offerings. For example, afte ...

この記事で述べている内容の一部を引用する。
Hospital mergers can reduce unnecessary overlap in regional health-care offerings. For example, after Mount Sinai Health System's merger with Continuum Health Partners last year, the health system ended up with two kidney transplant centers, located only a mile and a half apart. Combining the two centers increased efficiency and eliminated unnecessary costs, while ensuring all patients access to world-class transplantation care. It is far more beneficial for patients to have one center that performs many hundreds of specialty procedures each year rather than multiple facilities that each conducts only dozens. (病院統合により地域医療提供体制における不必要な重複を解消できる。例えば、昨年、マウントサイナイヘルスシステムとコンティニュアムヘルスパートナーズの統合後、1.5マイル離れたところにあった2つの腎移植センターは統合され、効率的になり、不必要なコストが削減できた。一方で、世界最高水準の移植治療へのアクセスはいずれの患者にも保証された。 数十件の施設が複数あることよりも、数百件の施設が1つある方が、患者にとってはるかに有益である)

日本は、国土が小さいのに、こういった議論が十分されてこなかった。冒頭の地域医療構想や公立病院改革ガイドラインで意識すべきなのは、このマウントサイナイのCEOの主張だろう。

『腎移植センター』を『心臓外科手術センター』『人工膝関節手術センター』『心カテセンター』『内視鏡治療センター』に置き換えて考えてみれば良い。日本は車で5分の距離に病院があるところが非常に多い。 病院統合の話、決して「アメリカ最高!」ではない。それぞれの立場や状況、背景を理解した上で、読み聞きすることで、日本に活かせるところが見えてくるはずだ。