医療、福祉に貢献するために

医療、福祉に貢献するために
~ 株式会社メディチュア Blog

2015/05/19

比較検討すべきは、『病院の薬剤部門の院内処方』と『病院内テナントの薬局の院外処方』

最近のニュースを聞いていると、用語の定義が曖昧な気がする。書いている記者もしっかり分かっているか不安だ。例えば、調剤料の違いから、院外処方は悪で、院内処方は善とするようなニュースと、車いす利用者などの不便さ解消のため院外ではなく院内薬局で、という話は似ているが別の話だろう。整理してみよう。

■医薬分業、院内処方から院外処方へ

そもそも医薬分業を推進した背景から理解する。医薬分業が進む前は、医師が薬を処方し、その医師が薬価差益を自らの懐に入れることができた。そのため、医師は多くの薬を処方し、利益を手にしていた。無駄な薬の処方が自然と多くなってしまう構造的な課題があった。そこで、医薬分業、クリニック・病院と調剤薬局の経営的な分離独立が必要となったわけだ。(処方薬の監査などの本質的な理由ももちろんある)

調剤薬局を併設するコンビニも次第に増えてきた
医薬分業を推進するために、医師の処方は報酬を下げ、院内での処方が経営的な負担となるようにした。一方で、調剤薬局には、処方薬の薬学的な管理の報酬や、後発品の推進などの報酬を手厚くし、薬剤師が、薬剤師の価値を発揮するシステムを作り上げてきた。

この医薬分業を進めていく中で、調剤薬局の数は増え、街中いたるところに薬局を見かけるようになったのだ。

このような背景のために、院内処方と院外処方では、診療報酬に差が付けられており、院内処方は安く、院外処方は高く設定されている。

■院外処方にしなければならない理由はない

院内処方と院外処方。これは必ず院外処方にしなければならない、という決まりはない。今でも院内処方をしている病院がある。自分が関係している病院でも院内処方のところがある。ここ数年の大きなトピックスとしては、東京女子医大がハイリスク薬を院内処方に戻した件がある。

【東京女子医大病院】ハイリスク薬を院内処方‐服用患者の安全管理が狙い : 薬事日報ウェブサイト
調剤薬局を脅かす「院内処方」への回帰-集中|MEDICAL CONFIDENTIAL

院内にはがんの薬物療法や移植医療に対するスペシャリストがいるため、院内処方の方が、より質の高い医療を提供できると言っている。(ただし、薬価差益も無視できないはず・・・)

【日本の議論】「医薬分業」誰のため 「院外処方」で患者負担が増している“不道理”(1/5ページ) - 産経ニュース

この記事の冒頭にある一文。
けがや病気で訪問した病院で処方箋を受け取り、院外の薬局で薬を受け取る-。車いすの人にも、発熱で歩くのが大変な患者にも不便なことだが、これが「医薬分業」といわれる仕組みだ。

この不便さの解消であれば、医薬分業をやめ、院内処方に戻るように制度を変える議論がなされるべきだ。(院内薬局の議論はまだ出てくる必要はない)

■医薬分業をしながら、院外まで行く二度手間・不便さを解消したい

しかし、医薬分業を止めることは、過剰処方・薬価差益や監査等の問題が生じる。そこで、医薬分業を維持したまま、車いすの人でもアクセスしやすい案、というのが、院内薬局なのだ。

医薬分業では、同一敷地内に薬局を作ることができなかった。そのため、病院敷地を出た病院前に薬局がずらーっと並ぶ日本のおかしな光景を作り出すこととなった。

大病院の前には、このような門前薬局が多く並ぶ。その理由は、毎日、多くの患者が処方せんをもらい、薬を処方してもらう必要があり、そのほとんどの患者が病院前の薬局に流れ込むためだ。本来であれば、複数の医療機関にかかっても、薬局はかかりつけの1つだけに行けばよいのだが、多くの患者は目の前の薬局に行く。(このかかりつけ薬局の理念に基づき、特定の医療機関に偏らず、複数の医療機関から処方せんを受け付ける薬局を面薬局と呼ぶ)

しかし、門前薬局は不便だ。雨に濡れるケースもある。そこで登場するのが門内薬局だ。なし崩し的に同一敷地内に薬局を出してしまうケースが散見され始めた。

門前薬局は不便だから門内薬局!? それでいいのか?? - 医療、福祉に貢献するために

しかも、意外と(むしろ当然というべきか)、患者の評判が良い。

この辺りの制度が曖昧であるため、規制改革の検討すべき、というのが、最近の議論である。この議論では結論は決まってこうなる。

利便性(低) 門前薬局<門内薬局<院内薬局 利便性(高)

これは薬局の場所だけを議論している。医薬分業か否かの議論ではない。



■『病院の薬剤部門の院内処方』と『病院内テナントの薬局の院外処方』

病院内にある売店・コンビニのように、テナントとして薬局が入ったら便利だろう。これが規制緩和のイメージだ。

ここで、議論の対立構造を理解する必要がある。病院の薬剤部門の院内処方と、病院内テナントの薬局の院外処方だ。今の議論のまま、規制緩和の話が進めば、院内にテナントとして薬局が出てくるだろう。このときに、一般の患者は、前者と後者の区別がほとんど付かないはずだ。

ほとんど同じなのに値段が違えば、それはおかしいということになる。値段の違いが問題となっているニュース記事は多く見かける。

政府の規制改革会議 「医薬分業」を答申に明記へ(1/2ページ) - 産経ニュース

必要な議論は、この二者間におおける医療の質の差異であろう。病院の薬剤部門による院内処方の質の方が高ければ、高い医療費を払いたいし、逆にテナント薬局の院外処方の方が質が高いのであれば、そちらに高い医療費を払いたい。

この議論がないまま、どちらが高いという叩き合いをしているのは無駄だ。

また、院内処方に戻せば、薬価差益の問題が生じる。薬価差益を解消する方法は、以前に述べたが、国で一括管理するような施策もありだろうし、処方薬の包括化なども検討できるだろう。

いずれにせよ、議論の軸がブレているように感じるのは、院内か院外か、医薬分業か否か、論点・課題が明確になっていないからだろう。

個人的にはチーム医療を推進・強化していく形として、院内薬剤部門のかかりつけ薬局機能の強化し、多くの門前薬局は受け取り所となるのも一案ではないかと考えている。(在宅などで一生懸命やっている薬局などは、これまで同様の生き残れるようにした上で)。

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