2015/06/30

雨の日の心遣い


ある病院の入口の光景。

ちょっとした心遣いがうれしい。そして、使用済みタオルの山で分かるとおり、これが結構人気。雨でじめじめ嫌な季節だが、こういうのは悪くない。

2015/06/29

トクホと機能性表示食品


週末に飲んだ2つのノンアルコール飲料。缶に表示されている内容はそっくり。

サッポロプラスはトクホ。

SAPPORO+ | サッポロビール

アサヒスタイルバランスは機能性表示食品。

アサヒスタイルバランス | ブランドサイト | 機能性表示食品 | アサヒビール

どちらも、アルコール飲料を意識したノンアルコールで、難消化性デキストリンを加えた飲み物。

トクホの認定を取るのに時間とお金がかかる。食品・飲料メーカーにしてみれば、機能性表示食品は便利な制度だろう。トクホのマークは出せないものの、似たような文言を大きく表示でき、『お墨付き』感は十分と言えるだろう。

ただ、難消化性デキストリン(もちろん、それだけではないが)を加えておけば、何でもOKみたいな仕組みは、逆に言えば、消費者の商品を見る目・知識が求められているということだ。表示を過信し、食べ過ぎたら意味が無いだろう。

ちなみに、ノンアルコールのサワーテイスト飲料を初めて飲んだのだが、ビターテイストの炭酸飲料!? 正直、サワーもあまり飲まないだけによく理解できなかった。スーパーの棚、この飲み物のそばには普通の炭酸飲料水が80円台で並んでいただけに、デキストリンを加えただけで、110円台後半で売れるのならば、おいしい商品なのかもしれない。

機能性表示食品は誰にとって旨味があるか。トクホ以上に、食品・飲料メーカーに旨味があるのではないだろうか。

2015/06/27

良かった病院、ぜひとも黒字であって欲しい ~日経ビジネス 6/22号 往復書簡~

日経ビジネス6月1日号の病院ランキングの記事は、賛否あるだろうが、読む価値はあったと思う。

2015年6月1日号目次:日経ビジネスDigital

ランキング上位のところを目指して、患者が殺到することは、結果として、地域全体の医療の質を下げかねないと思う(待ち時間の増加などは避けられないだろう)。

そんな中、6月22日号の日経ビジネスの「往復書簡」が非常に良かった。

「入院した病院の経営状態に興味」というタイトルが付けられていたが、要約すると、自分が入院した病院は、ランキングには記載されていなかったが、診療・看護はもちろん、清掃スタッフ・食事などのすべてのサービスが非常に良く、経営はぜひとも黒字であって欲しい、との読者からの投稿だった。

黒字だから良いのではなく、良い病院が黒字であって欲しいのだ(これがランキングにやや違和感を覚えた理由)。

また、読者は、入院中に見かけた高圧的な患者に言及し、『医療を受ける側も節度ある態度で臨み、スタッフの負担を軽減させることが医療の質の向上につながるのではないか』と締めくくっている。そのとおりだと思う。医療の質をあげるのは、医療者・スタッフだけでなく、患者側も大事だ。

このコメントを読み、何だかとてもうれしくなった。

2015/06/26

ポイント制度が好きなのはお国柄なのか

今朝の日経。右端の見出しには『現金還元を容認■「罰則型」ダメ』と書かれていた(電子版ではタイトルの一部に)。

厚労省、「健康ポイント」で指針 現金還元容認も罰則型はダメ  :日本経済新聞

日本再興戦略でヘルスケアポイントへの言及があり(下記記事も参照ください)、実証実験等が行われてきたわけだ。

健康管理はポイントカードで!? 「ヘルスケアポイントの付与」の実証実験が始まるか - 医療、福祉に貢献するために


実証実験はこちら→ 健幸ポイント WellnessPoint -国と6市連携健幸ポイントプロジェクト-


日本は、国民皆保険制度において、リスクに関わらず保険料を負担する仕組みになっている。そのため、健康維持・増進に努力したところで、保険料は下がらず、健康増進に対するインセンティブは少ないと言えよう。(民間医療保険では、非喫煙者割引等のインセンティブがある)

そこを変えるために、ポイント制度で、現金にも・・・という考え方は非常に理解できる。冒頭の記事見出しのとおり、罰則型は馴染まないだろう。そもそも遺伝性の疾患などでこの健康ポイントを得ることができない人がいる以上、ペナルティーを課すのはありえない。

どうせなら、この獲得したポイントは、健康関連にしか使えなくしてみてはどうだろうか。それこそ、ポイントでタバコを買ってしまっては意味が無い。

2015/06/25

書評: NUMERATI(ニューメラティ) ビッグデータの開拓者たち

ファーストリテイリングとアクセンチュア 従来の顧客体験を超えたデジタル時代の革新的な消費者サービスの開発に向けて協業 | FAST RETAILING CO., LTD.

先日流れていたニュース。具体的な内容を垣間見ることができるニュース映像もあった(当日見たニュースは下記ではなかったように思うが)。


どういったことを目論んでいるのか。考える上で参考になるのが、NUMERATIという本だ。第2章の『買い物』の章では、アクセンチュアがどのようなことを研究しているかが少しだけ見えてくる。

これからファーストリテイリングがどんなことを仕掛けてくるか、楽しみだ。

もともと医療の章があるので読んでいたのだが、たまたま6月15日に上記のニュースが出て、タイムリー!!と思った次第だ。肝心の医療の内容は、あまり驚きはないのだが、データがどのように世界を変える可能性があるかを考える一助となるだろう。データは資産だ。

2015/06/24

CVSのタバコ販売打ち切りのその後。ジャンクフードはどうなる??



以前、アメリカのドラッグストア、CVSがタバコ販売を止めたニュースを紹介した。

CVS業績好調、タバコ販売打ち切りの影響は限定的⇒企業イメージ・企業価値を同時に向上させた - 医療、福祉に貢献するために

その後の状況が、FORTUNE誌に報じられていた。

CVS improving food and beauty to replace $2 billion in tobacco sales - Fortune

CVSは、先週のターゲットの薬局部門買収(下記日経の記事を参照)や、オムニケアの買収など、積極的な動きがニュースになっている。
米CVS、米ターゲットの薬局・診療事業買収  :日本経済新聞
タバコの代わりを探すのに必至になっているとも言えるし、『健康』のための企業という色を濃くしているとも言えるだろう。ただ、失ったタバコの売上は相当きつかったようだ。

自宅で使っているBootsブランドのハンドウォッシュ
 CVSの方向性としては、健康食品を含む食品部門と、化粧品のテコ入れを考えているようだ。健康食品はまだまだ市場が伸びるだろうと言われている。また、化粧品はWalgreensがAlliance Bootsを取り込み、Bootsブランドの商品を揃えたように、低価格・高品質のものはまだまだ成長すると考えているようだ。

FORTUNE誌の記事には、「CVSはタバコを止めるのなら、ジャンクフードも止めないのか?」といった質問に対する幹部の返答なども紹介している。当面はポテトチップスやチョコレートバーなどをやめることはなさそうだ。

CVS幹部は下記のように語っている。

Items like Oreos and candy bars won’t disappear — they’ll just have less prime real estate. CVS is there to “nudge, not judge,” Foulkes joked as she gave Fortune a tour of a new-look CVS store in Manhattan’s Chelsea district.

『CVSは”judge”ではなく”nudge"ですから』と冗談を言った、とある。judgeとnudgeをかけ、CVSは、これは健康、これは不健康と言った判断を下す役割ではなく、健康維持・増進のための行動変容を促す役割を担っているということを言っているのだろう。(英語力が乏しく、間違っていたら申し訳ない)

nudgeがテーマの本。個人的に最近のホットな言葉

オレオやキャンディーバーは消えないとのことだが、CVSの動向は今後も気になるところだ。

2015/06/17

市場は寡占化が進んでいるか否か

近年、たばこは様々な銘柄が出ているらしい。そこで各銘柄の販売本数の推移から、たばこは一部銘柄でシェアが寡占的になっているか、そうでないか確認してみたい。

まず、上位10銘柄の本数推移のグラフを見てみよう。

たばこ販売数量上位10銘柄の販売本数推移 出所:一般社団法人 日本たばこ協会 統計資料を基に弊社で作成
緑色が濃いほど、各年度で販売数量が多い銘柄となっている。1990年度には上位10銘柄で約2000億本に達していたのに、2014には500億本弱と4分の1の水準まで減っている。

しかし、このグラフだけでは、上位銘柄が市場を寡占しているか否か判別が付かない。そこで、各年度の全販売数量を分母にし、上位10銘柄の販売数量合計を分子にしたシェアの推移を見てみた。
たばこ販売数量上位10銘柄シェア推移 出所:一般社団法人 日本たばこ協会 統計資料を基に弊社で作成
その結果は、1990年度には上位10銘柄で6割以上のシェアがあったのに、2014年度は3割を切ってしまっていることが分かる。非常に多くの銘柄で争っていることが見えてくる。

ちなみに1990年度の1位はマイルドセブンで19.5%のシェアを持っていた。2014年度の1位~7位までのシェアの合計がちょうど19.5%である。2014年度の1位のセブンスターはもはや3.9%のシェアしか持っていない。いかに銘柄が細分化し、ひとつひとつのシェアが少なくなっているか分かるだろう。

これは医療機関のシェアや、薬局のシェアを考えるときも同じである。単純な数量の推移に加え、シェアを見ることが重要だ。たばこのようにこの25年で販売本数が大きく減っているような場合には特に注意が必要だろう。

しかし、ここまで1銘柄1銘柄のシェアが減り、多くの銘柄が販売されている現状では、コンビニのバイトがたばこを棚から取るのに苦労するのも分かる気がする。

余談だが、日本のたばこ販売は、JT、フィリップ・モリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの3社でほぼ全てのシェアを握っている。この3社が正会員になっているのが、今回資料の元データを公開している一般社団法人 日本たばこ協会である。


日本たばこ協会は未成年の喫煙防止などの取り組みを積極的にやっている。健康増進の観点では、それに加え、成人の禁煙サポートもして欲しいところだが、販売会社自らがなかなかそういう取り組みに本腰を入れる訳にはいかないだろう。

2015/06/16

医療情報の理解促進アニメーション、分かりやすいのだけど・・・

東京都のサイト。

知って安心 暮らしの中の医療情報ナビ

医療関連の情報がまとまっていて、リーフレットや動画へのリンクも整理されている。とても分かりやすい。(果たしてどのくらいの人が見ているのか皆目検討もつかない)

動画は、医療機関へのかかり方が簡単に分かるようになっており、#7119などの利用方法も理解できる。


このような動画はもっと周知してもいいように思うのだが・・・。

以前の#7119、#8000の紹介記事はこちら→ #7119や#8000の認知度向上、ちりもつもれば・・・ 

2015/06/15

個人だけでなく政府・学校・食品会社・小売店が一体となって健康的な食事へ文化的なシフトをすることが大事

表題で長ったらしく書いた内容は、下記の絵を見れば分かる・・・はず。

Lancet / How can governments support healthy food preferences?


Read the full Lancet Obesity 2015 series: The Lancet: Obesity 2015

インフォグラフィックスにはセンスも必要なだけに、なかなか真似できないが、勉強していきたい・・・。

2015/06/14

病院の透明性を向上させる取り組み

これからの病院経営は、いかに透明性を高めるかが重要になると考えている。透明性を高めることで、周囲からの信頼獲得につながる。そして経営が良くなる。この好循環を持続するには、透明性向上が大きな原動力になるだろう。

そこで、今日はユタ大学の取り組みを紹介しよう。ユタ大学のことはウィキペディアなどにお任せするとして、今日は医学部・大学病院の話だ。

University of Utah Health Care | U of U Health Care

ユタ大学では、Find A Doctorというサイトで、医者探しができる。ここまでは日本の多くの病院と同じだろう。

Find A Doctor | University of Utah Health Care

違うのはこの先だ。一例として、David Kaplan医師を選択してみた。

David Kaplan, M.D. - Internal Medicine, General , Thrombosis , Internal Medicine

すると、下記のような内容が表示された。

David Kaplan, M.D.の紹介内容

2015/6/14時点で、250名の患者が評価し、193名の患者がコメントしたとのこと。ユタ大学では、このような情報開示が透明性向上につながると考えているようだ。

国民皆保険の日本では、どの医師に診察を受けても同じ値段であり、保険診療である限りは、良い医師でも悪い医師でも値段に差は付けられない。このようなこともあり、患者による医師評価の情報開示は文化的に馴染まないかもしれない。しかし、病院の透明性向上は結果的に、医師の改善のきっかけとなるし、良い評価を受けた医師のモチベーション向上にもつながるだろう。

さきほどのDavid Kaplan医師に対するコメントには、本当に良く耳を傾けてくれる、素晴らしい等々の褒め言葉が並んでいた。他の医師のコメントも色々と読んでみたが、コメント自体は前向きなものが多いので、これ自体で良し悪しは判断できないかもしれない。一方、星で表現されている評価項目は、医師間で結構差がありそうだ。この評価が高いことに、医師は素直に喜んでいいように思うし、患者は客観的評価として信頼してもよいだろう。

病院全体の患者満足度調査を公開している病院は日本でも珍しくない。しかし、医師別の情報をここまで整理して開示しているところは、まずないだろう。

良い悪いの議論も含め、ユタ大学の事例は参考にしてもよいのではないだろうか。

2015/06/10

三次救急の現状 ~一年前の記事を読み直して~

一年ほど前、こんな記事を書いていた。

『三次救急の病院へ運んでもらえませんか?』『ドクターヘリは使えませんか?』と聞くべきなのか? - 医療、福祉に貢献するために

読売新聞の記事に対して、ちょっとそれはないのでは?と述べた。

おかげさまで、定期的に会う三次救急の病院も増え、現状4病院くらいから話を聞くことができる。そのような状況から考えると、やはり、この記事は「分かってない」であると思った。

三次救急は、非常に重篤な患者を受け入れるための貴重な医療資源・体制であり、それを決して無駄に使ってはいけない。とある病院で聞いたのは、一般人からしたら非情とも思えてしまう状況であった。

いわゆる大事故。大怪我。救急隊員も「これは!」と思って、三次救急の病院に受け入れ要請の問い合わせ。しかし、三次救急の病院は、自分の施設の状況を見た結果、「命にかかわるか、かかわらないか? かかわらないなら、別へ」との答えだった。それを受け、救急隊員は別の病院へ患者を運んだ。

もうひとつの事例も、同じく大事故の話。これは明らかに厳しい患者。三次救急でも救えるかどうか分からない患者。三次救急の病院に問い合わせたところ、たまたま別の患者の対応で、受け入れできないとの返答。救急隊員の判断は、そこから数十キロ離れた施設への搬送だった。結果的に、残念ながら患者は一命と落とした。


三次救急とはここまでシビアに運営されているということを一般人も知るべきだろう。そのような限られた医療資源を無駄に使うような、気軽な「運んでもらえませんか?」といった個人のエゴが通じるべきではない。その気軽な一言が、本来ならば救えた命を奪うことになりかねない。

読売新聞の記事は、そういった趣旨ではなかったのかもしれないが、今読みなおしても、正直、理解できない。貴重な医療資源を有効に使う事こそが、良い医療を受けるための秘訣ではなかろうか。

2015/06/09

情報資源の蓄積によって、その国の将来の医療水準が変わる

GeneticAllianceの話を聞いた。知らないことばかりで、単語の意味すら分からないものが連発。正直、来るところを間違えたと思ったくらいだ。

CEOのSharonの子どもがPXEという遺伝性疾患であることが分かったのがきっかけで・・・という話から、現在の状況と取組状況を話していた(はずである)。

GeneticAllianceは、1,200くらいの遺伝性疾患に存在している各組織についてネットワーク化し、大学や研究者と結びつけている団体だ。

Advocacy, Education & Empowerment | GeneticAlliance.org



Sharonはバイオバンクのファウンダーでもある。

biobank.org

日本でもナショナルセンターの取り組みが有名かもしれない。

ナショナルセンター バイオバンク ネットワーク プロジェクト
biobankのウェブサイトには、Sharonのコメントが記されている(以下、引用。日本語は弊社が意訳)
  “Data can accelerate research and services, help us get better patient outcomes, and save money,”  Sharon Terry, President and CEO of Genetic Alliance (研究やサービスを加速させるデータは、よい医療が受けられ、そして医療費を抑えてくれる) 
データが医療を変えるとしたら、このようなデータは、もっともっと蓄積しなければならない。現実的には費用負担等の問題があるだろうが、これは将来大きな価値を産む資源になるはずだ。

2015/06/08

オバマ政権が電子カルテの整備に莫大な予算を投じたことで、様々なことが動き始めている

他業界から医療の世界に来た人(自分も含む)が驚くことのひとつとして、意外と電子カルテが普及していないことがある。200床以上あるような(一般人の考える)結構大きな病院であっても、未だに電子カルテが導入されていない病院があるのだ。

でも、これは日本だけの話ではなかった。アメリカもかつては似たような状況だったらしいが、オバマ政権は、そこに大きなインセンティブをぶら下げ、導入を促した。これは、電子カルテメーカーなどのロビー活動が成功した結果といった単純なものではなかった。インセンティブプログラムが発表された時点から、医療の質の改善などに使っていくことがうたわれていた。

院内感染発生率で診療報酬にペナルティを設けている例を以前紹介した(ウェブサイトで見るならグラフィカルな方がいい)。これもその応用のひとつだ。

そして、PCORnetが興味深い取り組みを始めている。
心疾患の患者2万人に対し、高用量か低用量のアスピリンを飲んでもらい、その結果を検証するというPragmatic Trial(プラグマティックトライアル。実用的試験)を行うとのこと。

ADAPTABLE: The Aspirin Study - PCORnet



このような試験ができるようになった背景には、電子カルテ化・ネットワーク化の取り組みがある。Pragmatic Trialでは、データボリュームも大事な要素だ。このような取り組みを始めるハードルが下がれば、間違いなく様々な研究が進むだろう。

「とにもかくにもデータにしなかったら始まらない」と言っている話を聞いた。日々の診療がデータ化されているのは、大きな資源になる。データの価値は、期間が長いほど、人数が多いほど、詳細であればあるほど、価値が増すだろう。以前もデータの資源化については、述べている。


もしかしたら、紙カルテの電子化サービスなんてのもあり得るかな?と一瞬考えたが、読めないカルテも一定数あるな・・・と思った瞬間、心が折れた。

2015/06/04

学習塾が卒業第一にしたら生徒は集まるのだろうか ~アウトカムの定義が見えてこない薬局の議論~

たとえばなし。

教育で考えてみる。中学校と学習塾のアウトカム指標は、似ているようで、多分全く違う。前者は、生徒が無事卒業することを目標としているとしたら、後者は、有名高校への進学率を目標としている。

同じことを薬局で考えてみよう。

門前薬局は、「正確に処方すること」をアウトカムと認識していて、疑義照会や薬歴管理に力を入れている。薬を減らすような取り組み、指導はしていない。一方で、かかりつけ薬局は、患者家族の背景を想いながら、薬を徐々に減らすための指導をしている。もちろん、正確な処方をした上で。
かかりつけ薬局のアウトカムは、患者を支えることがアウトカムになっている。

門前薬局が経済的な側面でダメだから、かかりつけ薬局へ、と舵を切るのは良いが、アウトカムの議論をしっかりやらないと、街のかかりつけ薬局が、門前薬局のような「正確な処方」に邁進してしまうかもしれない。

さらに言えば、門前薬局であっても、患者・患者家族を支えることをアウトカムとして捉え、良い取り組みをしているところもあるはずであり、ステレオタイプ的に、門前薬局=悪、かかりつけ薬局=善、とするのはいかがなものか。

服薬アドヒアランスの向上など、評価される内容の議論がないまま(正確には、ごく一部の人は、その議論をしている)、院内・院外、門前・門内、といった押し問答をするのは、現場の薬剤師は正直、「無駄な議論だ」と思っているに違いない。

中学校と学習塾のたとえ話に戻そう。大前提として、中学校には中学校の役割があり、学習塾には学習塾の役割がある。それを生徒・生徒の親が、主体的に選べる状況にあるのが現状だ。中学校は義務教育であるものの、公立・私立の学校選択の余地は残されている。
公立中学校の先生がイマイチだとしたら、諦めて許容するしかないかもしれない。一方で、学習塾では許容しない人が大半になるだろう。

最後、もう一度、薬局の話に戻す。学校・塾の先生と同じように、薬剤師の技量等が論点になれば、間違いなく、日本の調剤薬局の制度は変わるだろう。今は、おかしな議論が続いてしまっている。しっかりと薬局のアウトカムを定義し、評価できる仕組みを作った上で、その質が悪い薬局を淘汰していく制度が作られるべきだろう。しかし、制度を作るのは容易ではない。非常に時間がかかるだろう。そこで、短期的な解決策として、診療報酬の点数上下により数だけこなす門前薬局への締め付けだ。

詳細はブログへ⇒ http://meditur.blogspot.jp/2015/05/blog-post_22.html

問題は、薬局の場所や医薬分業か否かということではない。場所や医薬分業の違いにより、どのようなアウトカムの差が生じていて、誰の経済的な負担が生じているか、だ。

Precision Medicine ~ Delivering the right treatments, at the right time, every time to the right person ~

先月、アメリカでPrecision Medicineについて話を聴いてきた。恥ずかしながら、そのときまで、あまりPrecision Medicineについて理解していなかった。あまりの無知ゆえに、分からないことが出てくる度に、メモ代わりにtwitterでつぶやいていた。

色々と内容がつながってきたタイミングで、下のオバマ大統領の演説を見て、アメリカが国を挙げて医療を変えようとしていることがひしひしと伝わってきた。この動画は、一度見ておいても損はないと思う。



細かな内容は下記にまとまっている。
FACT SHEET: President Obama’s Precision Medicine Initiative | The White House

主な投資内容・投資額を述べた箇所を引用する。
Key Investments to Launch the Precision Medicine Initiative:Complementing robust investments to broadly support research, development, and innovation, the President’s 2016 Budget will provide a $215 million investment for the National Institutes of Health (NIH), together with the Food and Drug Administration (FDA), and the Office of the National Coordinator for Health Information Technology (ONC) to support this effort, including:
  • $130 million to NIH for development of a voluntary national research cohort of a million or more volunteers to propel our understanding of health and disease and set the foundation for a new way of doing research through engaged participants and open, responsible data sharing.
  • $70 million to the National Cancer Institute (NCI), part of NIH, to scale up efforts to identify genomic drivers in cancer and apply that knowledge in the development of more effective approaches to cancer treatment.
  • $10 million to FDA to acquire additional expertise and advance the development of high quality, curated databases to support the regulatory structure needed to advance innovation in precision medicine and protect public health.
  • $5 million to ONC to support the development of interoperability standards and requirements that address privacy and enable secure exchange of data across systems.
以下、上記内容の意訳。
2016年の大統領予算で、2億1,500万ドル(約260億円)をNIH、FDA、ONCに投資する
  • 1億1,300万ドル(約140億円)はNIHにおける100万人以上のボランティアによる遺伝子コホート研究のために
  • 7,000万ドル(約80億円)はNCIにおけるがんの遺伝子特定、がん治療の研究のために
  • 1,000万ドル(約12億円)はFDAにおけるデータベース整備等に
  • 500万ドル(約6億円)はONCにおけるセキュアなデータ交換などの規約整備のために
100万人以上の遺伝子情報を解析するという話はアメリカの講演でも聞いていたが、背景には、このオバマ大統領の話があったのか・・・と、今更ながらに理解した。

なお、客観的な見方としては、下記の動画も参考になる。


Precision Medicine。高精度医療とでも呼べばいいのだろうか。医師の勘に頼った医療から、エビデンスに基づく医療・EBM(Evidence Based Medicine ※医師の経験や患者本人の意志を尊重することは大前提)へ進化し、その延長線上にPrecision Medicineがあると考えるべきだろう。これは一部の研究者だけが知っていれば良いことではない。アメリカの状況を鑑みると、国民の理解と協力が不可欠だからだ。日本で良い医療を受けたければ(さらに大きな枠組で考えれば、日本の競争力を向上・維持するためには)、協力しなければならないだろう。

余談だが、遺伝的な繋がりを考えると、アジア圏での協力も重要なことは言うまでもないだろう。

2015/06/03

地域差を可視化する(おまけ)

下記の先日の分析記事のおまけ。
地域差を可視化する(Special Report) - 医療、福祉に貢献するために

ただ並べただけのヒートマップではよく分からないという意見があったので、Rで並べ替えた結果も示す。

65歳以上人口あたりDPC病院入院症例数都道府県間比較 赤:患者数が少ない 黄:患者数が多い

縦軸は都道府県。横軸は疾患で、クラスター分析してある。横軸において、右側に表示されている疾患は、都道府県間でバラツキが小さいものが来ている。例えば、右端3疾患には、肺炎・誤嚥性肺炎・尿路感染症が来ており、医療需要を恣意的に生み出している可能性が低いと思われる。

一方で、乳がん(手術症例)、白内障、鼠径ヘルニア、子宮頸・体部がん(手術なし症例)、卵巣がん(手術なし症例)などはその逆と言え、DPC病院以外での診療の可能性や、65歳未満の受診の可能性が考えられることに加え、病院が医療需要を生み出している可能性も考えられるところだ。

くれぐれも注意しておくが、乳がんや白内障の手術症例は、DPC病院以外での件数も非常に多いだけに、この結果だけで判断してはいけない。

2015/06/02

地域差を可視化する(Special Report)

先日完結したはずの地域差の可視化。

地域差を可視化する(Part.1 狭心症カテーテル検査)
地域差を可視化する(Part.2 大腿骨頚部骨折)
地域差を可視化する(Part.3 関節リウマチ 地域差は100倍以上)

プログラムで手術あり・なしのデータの全疾患を処理してみた。その結果を、症例数の多い順に、左から右へ都道府県別にプロットした。色は、疾患別に都道府県間比較をしており、赤いところほど65歳以上人口に対する症例数が多く、緑色ほど症例数が少ないことを表している。もちろん、患者はすべてが65歳以上ではなく、65歳未満も含まれているため、あくまでも一律の基準で比較しただけである(厳密な意味を考えるとおかしい)。

65歳以上人口に対する症例数多寡(赤:症例多い、緑:症例少ない、黄:症例中間) (クリックで拡大)

この結果を見ると、沖縄は全般的に症例数が多めになっているが、その中でも、他都道府県と比較し、症例数が少ない疾患もある。東京・愛知・京都・大阪・福岡といった大都市は患者流入傾向もあるだろう、全般的に赤傾向を示している。逆に全般的に緑傾向が強い青森・山梨・宮崎などを見ると、その中でも赤色になっている疾患がある。

このように傾向が違うところはなぜ?と疑問に感じることで、都道府県の特徴が見えてくるかもしれない。

2015/06/01

がんの情報の可視化

以前、都道府県別に、月別の死亡者数の多寡をヒートマップで表現したことがある。

冬は多くの人が亡くなる⇒本当(ただし沖縄を除く)
データでモザイク画

縦軸は、都道府県の位置関係を反映しており、色で不連続があれば、何かしら違いがあることを直感的に把握できるようにしたつもりだ。

下記JAMAのThe Global Burden of Cancer 2013は、国別の塗り分けなど、様々な可視化がなされており、とても興味深い(見るだけでも面白いと思う)。
様々な形でがんの可視化がなされています。国別でがん種別の死亡者数順位で色を塗ったFigure.4などは大変興味深く、可視化の素晴らしさを実感できます。The Global Burden of Cancer 2013http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2294966
Posted by 株式会社メディチュア(Meditur Co., Ltd.) on 2015年6月1日