2015/08/10

地域医療構想は医療版『減反政策』か 書評: 町おこしの『経営学』

移動途中に読んだ15年前に出版された本。


この本の本論である地域おこしの事例自体も面白いのだが、まとめのところで触れている農水省の担当官の話が印象に残った。
中央の政策が、地方の実態に即しているかどうかという問題については、農林水産省構造改善局農政部地域振興中山間地域活性化推進室の行政官が、中央の支援態勢の現況について、以下のように説明している。
「中央としても、できる限りそれぞれの地方の実情に迫りたいが、それには限界がある。いまは、いわばシャワーしかない。中央にはこういう支援措置がありますよ、具体的にはこういう補助金制度がありますよというシャワーを、地方に向かって満遍なくかけ、それを受けた地方からの発動を待つしかない」
「シャワー」を地域医療介護総合確保基金とすれば、昨今の地域医療構想の話と同じだ。さらに以下の話もあった。
前にも意見を聞いた農水省の行政官はこう指摘している。「中山間地の、特に米作を中心に生計を立てている地域には、国家に対して潜在的に甘えの意識をもっている所が多い。しかし、その甘えの構造を作ったのは、国家の責任でもある」
米作を「ベッド数」に、中山間地を「自治体」と読みかえれば、まさに今の医療の課題と一致するではないか。

誰かが、地域医療構想を、医療版『減反政策』と言っていたが、他業界・歴史を知ることが大事だと思い知った。