2015/08/18

患者確保の競争から、医療の質の競争へ

JAMA Network | JAMA | The Potential Hazards of Hospital Consolidation:  Implications for Quality, Access, and Price

『病院統合の潜在的な危険性: クオリティ、アクセス、価格 』という記事。

病院統合は、近年、非常に活発に行われており、医療の質向上などの面で、グループ病院運営や、症例集約は少なからず価値があると述べている。

一方で、統合した結果、競争的な環境で無くなってしまうことにより、医療の質の低下などの問題が生じている可能性があるとも述べている。2012年の論文を引用し、死亡率があがってしまった可能性があると言っている。
A 2012 study of California hospitals over a 17-year period found that hospital mergers were associated with increased utilization among patients with heart disease, specifically a 3.7% increase in bypass surgery and angioplasty and a 1.7% to 3.9% increase in inpatient mortality.
(2012年に報告された17年間にわたるカルフォルニアの病院における研究では、病院統合により、心疾患の患者の利用率が向上し、バイパス術と血管形成術では3.7%も患者が増え、あわせて入院患者の死亡率は1.7%から3.9%に増えていた)

また、日本では全国一律の診療報酬制度があるため、あまり参考にならないかもしれないが(地域加算等は微々たるものなので無視する)、統合により競争的環境でなくなってしまった地域では、医療費が高くなってしまっていることにも言及している。


病院統合は、非競争的環境への転換を促し、結果的に医療の質が低下する可能性がある点は、日本でも留意すべきことだろう。

統合による症例集約等のメリットは享受する一方で、競争的な環境の持続による医療の質低下や価格の高騰を防ぐことが大事だ。それには、急性期病院で言うところの、効率性係数などの医療の質を反映した診療報酬上のインセンティブ設定が肝になるだろう。

医療機関間の患者確保の過度な競争は不要だ。これからは、医療機関間の医療の質を競争することが必要である。