2015/11/30

短期的な診療報酬改定サイクルの現状に必要な実験経済学的手法

次の診療報酬改定まで、残すところ約4ヶ月。

初診時に徴収している特別な料金の中医協資料について、先日ブログで疑問に思うことを書いた。

結論ありきでの分析の危険さ - 医療、福祉に貢献するために

そもそも4ヶ月しか時間が残っていないタイミング(ただし、大枠を決めるタイミングはもう少し前であり、実質的に残された時間は2ヶ月くらいと言っても過言ではない)で、どのような制度にすべきか基礎データが十分と言えないような状況にある。結論ありきでうまく誘導しているような議論の進め方であっても、「全知全能の神」が愚民の戯れ言を無視し、絶対的に正しい世界へ導いてくれるのであれば、まったく問題はないだろう。しかし、患者・医療者の行動を完璧に読むことはできない。

ならば、診療報酬改定のたびに新しい制度を全医療機関に適用することをいっそ止めてみてはどうだろうか。

2014年度改定の短期滞在手術3の白内障手術は、明らかに制度設計のミスであった。しかもミスであることは改定内容の発表時点から噂され、改定直後から多くの医療機関が両眼の入院パスの利用を止めた。ここまで極端なケースではもうほんの少し議論の時間に余裕があれば防げた事例かもしれない。しかし、いきなり全医療機関に新制度が適用されてしまったため、被害(≒患者の金銭的負担増・身体的負担増、病院の効率的病床利用の阻害)は非常に大きくなってしまった。

例えば、革新的な制度は、一部国立病院機構やナショナルセンターで試行し、その結果が良ければ、次の改定で全病院に展開する。逆に思わしくない結果であれば、展開しない。そのような検証があってもよいのではないだろうか。

先日のブログで指摘した初診時の徴収料金については、いわゆるABテストのようなことをしても良いのではないだろうか。紹介患者の増減は地域性などに大きく左右される。それだけに、複数医療機関の平均値での評価はあまり意味がない。ましてはNが少なければ、言うまでもない。

ABテストのイメージだが、国立病院機構の病院を半分に分け、片方は料金を高く、もう片方は低く設定し、それぞれの初診患者がどのように変化したか検証する。その結果に応じて、適切な制度を設計し、診療報酬改定を行う。国立病院機構の病院で実験を行うことには批判もあるだろう。しかし、より良い制度を2年に1回という短期間のサイクルで変えていくためには、実験経済学的な手法も取り入れるべきではないだろうか。

CCPマトリクスは非常に良い考え方だと思う。しかし、点数設定などの制度の詳細がまだ見えていない。制度次第で医療機関は恣意的に高い点数を取るようにするだろう。だからと言って、これは病院側だけが責められるべきことではない。新しい制度が患者の受ける医療に変化が生じるかもしれないし、または病院経営に大きな影響が生じるかもしれない。改定まで時間が限られている時点で制度の詳細が見えていない状況(少なくとも病院は心の準備すらできていない状況)は、かなり不安である。CCPマトリクスのような革新的制度は、まさに実験経済学的検証が最適なのでは??と思うのだが、いかがだろうか。