2016/02/27

Extensivist ?? 地域連携の要になるかも

うちにあった5年ほど前のINTENSIVIST Sepsisの特集
Intensivistなら聞いたことがある。

雑誌の名前にもなっている。intensiveが「集中的な」という意味で、intensivistは集中治療医を表す言葉と考えて良いだろう。病院にあるICUはIntensive Care Unitの略だ。

一方で、昨日初めて聞いたのがExtensivist。

extensiveは「広い、広範囲におよぶ」みたいな意味(英語が苦手ゆえ、誤りがあってもご了承願いたい)。だからと言って、Extensivistのイメージはさっぱり湧いてこない。

海外のウェブサイトなどを調べていると、ぴったりと収まる日本語は見つからないのだが、いくつか参考になりそうなサイト・論文を引用しておく。

Hospitalist evolution? "Extensivist" = hospitalist who prevents readmissions by seeing patients after discharge | Medical and Health Blog

New models of care for a local district general hospital

二番目の論文には、次のように書いている文がある。(日本語訳は弊社の意訳)
Such clinicians are often referred to as ‘extensivists’ and bridge the gap between acute hospital specialists and the local primary care doctor. (プライマリケア医を巻き込みながら、複雑な病態の患者を積極的に管理する)そのような臨床医を「extensivist」と呼び、急性期病院の医療者と地域のプライマリケアの医師の間のギャップを埋める役割を果たす
プライマリケア医との橋渡しをするようなイメージだ。引用した記事の1つ目には、「再入院を減らすこと」がゴールのひとつといった表現もなされている。興味深い。このextensivistを聞いたきっかけは次のニュースだ。

Art of Aging: Shorter hospital stays | 6abc.com
Nazareth Hospital ...

ニュース動画もあるので、そちらを見た方が良いかもしれない。動画のスクリプトの大部分は、下記のように記事に書かれている。
At Nazareth Hospital in Northeast Philadelphia, that goes to Dr. Genevieve Skalak. She's a new medical specialist - an "extensivist.""I provide that bridge between the inpatient hospital stay and their outpatient path to wellness," she said. (北東フィラデルフィアのナザレス病院で働くジェネヴィーブ スカラック医師は、新しい医療スペシャリスト「extensivist」だ。『私は入院と外来の橋渡しをうまくいくようにしている』) 
One study shows 'extensivists' can cut hospital stays by almost half, and re-admission rates by nearly 20%. (あるスタディでは、extensivistにより在院日数はおよそ半分になり、再入院率が20%程度に下がったと言っている)
2016年度の診療報酬改定では、退院調整の評価があがり、点数が付くようだ。このようなextensivistsの活躍が海外で増えてきていることを踏まえれば、2018年度以降では、再入院率等のアウトカムの評価指標を設定し、もっと高い報酬が与えられてもいいのかもしれない。

2016/02/18

薬局内は、広告料を得るのに最適な場所?

昨日の日経MJに「お薬、動画で患者に優しく」という記事が載っていた。関連記事が日経デジタルマーケティングのウェブサイトにもあると書いてあったので見てみたところ、下記のものが見つかった。

アイセイ薬局がデジタルサイネージで独自サービスや健康情報などを訴求 日経デジタルマーケティング

この記事は日経デジタルマーケティングの定期購読者のみが読めるようなので中身は見られなかったが、冒頭の日経MJによれば、次のようなものを流しているらしい。(下記は日経MJ記事の内容を基に整理)
  • 処方されるクスリの種類が多い場合に、飲み間違えるリスクを防ぐために朝、昼、晩などに飲む複数のクスリを1つにまとめる「一本化調剤」
  • 高齢者などの自宅に、薬剤師がクスリを届けてくれる「薬剤師(自宅)派遣サービス」
  • アイセイ薬局が開発した電子お薬手帳アプリ「おクスリPASS」
  • 早めの対策を訴える「花粉症対策」キャンペーン(1月4日から) 

1点目は記事で一本化、一本化と繰り返されていたのだが、一包化のことだろう(もしかして、一本化とも言うのか??)。

興味深かったのは、次の一文。
今後は広告メディアとしても活用していく方針。既に製薬会社などに働きかけており、今年5月ごろから本格的な広告出稿が始まり、早期に事業としての黒字化を見込むという。
へぇ。黒字化を見込んでいるらしい。

ヘルス・グラフィックマガジン(最新号は花粉症)など、面白い取り組みをしているアイセイ薬局だからこそ、薬局内のスペースに広告を出すというアイデアを実行に移したのかもしれない。

ヘルス・グラフィックマガジン|アイセイ薬局の取り組み|ご利用者さま|調剤薬局のアイセイ薬局

他と違うことをしなければ、薬局は生き残っていけないかもしれない。


2016/02/09

遺伝カウンセラーってご存じですか?

「遺伝性乳がんと卵巣がんにおけるリスク抑制手術の役割」というタイトルの総説がとても興味深い。

The Role of Risk-Reducing Surgery in Hereditary Breast and Ovarian Cancer — NEJM
正直言うと、まだちゃんと読んでいないのだが、遺伝性のリスクが分かったとしても、年齢などのタイミング次第では、取るべき手段が異なってくるし、また、本人の希望(妊娠等)によっても、選択肢は大きく変わることが分かりやすく書かれている。

個人的に印象に残った箇所を引用する。
We recommend consultation with specialists who have expertise in genetics; among these specialists, genetic counselors can serve a pivotal role. Given the complex issues and multifaceted effect of decisions, consultations should provide both medical information and emotional support. 
遺伝子情報に基づく意思決定は、専門家やカウンセラーが重要な役割を果たすことになるだろう。がんの専門家というよりは、遺伝子の専門家・カウンセラーなのだと思う。以前アンジェリーナ・ジョリーが手術したとき、日本でもマスコミが大きく取り上げたせいで、病院の中には問い合わせが多く来たところもあったようだ。そのときは乳がん・卵巣がんを診ている先生が対応したらしいのだが、今後は乳がん・卵巣がんに限らず、遺伝子の専門家・カウンセラーが活躍するのかもしれない。

ちなみに、日本にはそのようなカウンセラーを育成する制度があり、資格試験が行われている。

認定遺伝カウンセラー制度委員会

この分野は、今後ますます活発になるだろう。


以前書いた関連記事

遺伝子情報をブラックボックス化させてはいけない - 医療、福祉に貢献するために

2016/02/07

かかりつけの概念をICTが下支えする

難しいことを考えずに、この動画を見れば、分かってもらえるような気がする。


Salesforceを使うかどうかは別としても、このような情報・管理が必要であるだろう。記憶に頼って管理するのには限界がある。「チーム医療」が大事と言われている現代において、他の人の記憶は見えない。それだけに、情報共有を前提としたシステム構築は不可欠だ。

また、紙カルテを山のように保管していても、情報を得るには、手間がかかる。動画の途中で出てきたタイムラインやコラボレーションの画面は示唆に富んでいる。

「かかりつけ」の概念は属人的であるべきではないと思うのだが、次回改定のかかりつけ薬剤師の内容などを見ていると、どうやら属人的なものにしたいようだ。アウトカムが良ければ、薬剤師個人との関係構築か否かは問わなくて良いと思う。薬剤師個人でなく、それが薬局・薬剤師グループであっても何ら問題ないと思うのは自分だけだろうか。

2016/02/06

メディデータ社の治験に対する考え方が興味深い

昨日(2/5)の日経産業新聞「ウエアラブル、治験精度補完、米メディデータ社長に聞く、被験者の血圧や脈、データ収集・提供」の記事。

一部を引用する。
――メディデータの役割は。
「当社は血圧や脈拍などのデータをデジタル入力し、蓄積するシステムを提供している。端末の開発はメーカーが担っており、我々は手掛けない。近年はウエアラブル端末を使った治験に力を入れ、コストがかさむ治験のあり方を変えたいと思っている」
メディデータ社について、もっと詳しく知りたい場合はウェブサイトを見るのが良いだろう。

臨床開発のための先進的なアプリケーションと高度なデータ解析 | Medidata Solutions

記事で印象に残ったのは、うつ病の話。
――効果を発揮しやすい領域は。
「うつ病の治験は、被験者の行動を質問票を使って確認しているが、信頼性を疑問視する声がある。ウエアラブル端末を使うと行動データを捕捉できる。関節炎の治験では関節がはれている箇所を数えるが、ウエアラブル端末で朝目覚めて動き始めるまでにかかる時間など行動データを追加すれば、新薬の効果をより詳しく示すことができるだろう」
信頼性を高めるためにウエアラブル端末のデータを使う。なるほど。記事には抗がん剤の例も出てくるのだが、どこまでデータの価値があるかは分からないものの、非常に興味深い話だった。

Youtubeには様々な動画もアップされている。これから益々活躍しそうな会社だ。

2016/02/05

剖検率の高い都道府県はどこだ?

平成26年医療施設(静態・動態)調査の剖検率のデータ。

(特段、グラフに意味は無い。これまでEXCELでマクロを組んで、都道府県別の塗り分けをしていたのだが、GoogleのAPIで表示させてみた。これは、前職のとき、患者分布の地図を作ったのと同じ方法。ブログでもうまく表示されると良いのだが・・・。)



医師が多い西日本ほど剖検率が高いかなぁ・・・と思ったのだが、それも違っていたようだ。

2016/02/04

実績開示、情報の資源化の観点が抜けている

大病院の実績 開示義務  厚労省方針 受診内容、患者が比較 非公表は診療報酬減 :日本経済新聞

指標開示に関する記事が今朝の日経一面だった。

開示することは良いことなのだが、諸手を挙げて賛成というわけにはいかない。理由は何度もこのブログで述べてきたことだ。要点がまとまっている2つの記事を紹介する。

国民目線に立っていない病院指標なんてクソだ! - 医療、福祉に貢献するために
DPC.go.jp みたいな医療情報一元管理サイトを作って、データの資源化をすべき - 医療、福祉に貢献するために

ホームページに載せたところで、医療関係者以外はほとんど見ないだろう。世の中を変えようと思うならば、情報の資源化をすべきだ。二次活用しにくいホームページ掲載では、さすがにお寒い。

調剤医療費の伸びを可視化してみる

調剤医療費の伸びについて調べてみた(出所: 調剤医療費の動向調査|厚生労働省
調剤医療費の推移
2004年10月から2015年9月までのデータ。順調な伸び。単月レベルでは多少デコボコしているが、約11年で4000億から6000億へ、1.5倍に伸びている。

電算処理分に限定して比較すると、75歳以上の伸びが非常に目立っている。
年代別推移
なぜ医療費がこれほどまでに伸びているのか。次の式で考えてみる。

[調剤医療費] = [1人あたり調剤医療費] × [人数]

調剤医療費の伸びは・・・、
年代別 調剤医療費伸び率(2004年10月比)
こんな感じ。赤色ほど伸びている(色の濃い薄いは、上のグラフの中での相対値)。

一方、1人あたり調剤医療費の意味合いに近い1枚あたり調剤医療費の伸びは・・・、
年代別 1枚あたり調剤医療費伸び率(2004年10月比)
高齢者が特段伸びているわけではなさそうだ。つまり、人数が増加していることが一番の原因と考えても良いかもしれない。


薬剤の種類別にも見てみよう。
薬効分類別 薬剤費伸び率(2009年4月比)

明らかに1種類だけ異なる伸び率を示している。「化学療法剤」だ。

さらにその内訳の推移を見ると、抗ウイルス剤が急上昇していることが分かる。

化学療法剤 薬剤費推移

ハーボニーの発売タイミングから考えても、まだ上昇は続きそうだ。

冒頭、11年間で約2000億円の増加と述べたが、この抗ウイルス剤はわずか1年で200億円近い増加をしている。今後、どの程度まで増加するのだろうか・・・。


2016/02/03

不妊治療の保険解禁には、乗り越えなければならない課題が大きい

以前、あと一歩のところまでいったものの、結局発売されなかった不妊治療保険。今回、また解禁に向け、議論がなされているようだ。

以前のタイミングで書いた3年半くらい前の記事はこちら。この記事に、保険にする上での課題を述べた。

「不妊治療に民間医療保険、解禁へ」のニュースを読んで - 医療、福祉に貢献するために


不妊治療については、事あるごとに書いてきたので、20記事以上ある。よろしければどうぞ。

医療、福祉に貢献するために: 不妊

2016/02/01

お薬手帳、持参にしないと損するようになりますよ

次回の診療報酬改定の内容が徐々に明らかになってきている。調剤薬局に関する内容もだいぶ見えてきた。

前回の診療報酬改定直後に書いた記事を見直してみた。

お薬手帳、意義が浸透しない中での点数上下は、混乱とムダを生む(前編) - 医療、福祉に貢献するために
お薬手帳、意義が浸透しない中での点数上下は、混乱とムダを生む(後編) - 医療、福祉に貢献するために

前編では、お薬手帳を持参するかしないかで診療報酬が変わることについて、患者サイドの見方と、医療者サイドの見方を紹介した。

後編では、この改定が不毛であり、本質的には、薬剤師に管理されるべきであり(国民皆保険制度を維持する上で、無駄な医療費を発生させないためにも適切な管理が重要)、手帳を忘れたら、自己負担が増えるようにすべき、と述べた。


で、次の改定は・・・、手帳を忘れたら自己負担が増えるようになりそう。

まともな方向に改定されそうだ。詳しくは中医協の資料の下記を読んでもらいたい。
薬剤服用歴管理指導料について、初回来局時の点数より、2回目以降の来局時点数を低くする。 ただし、手帳を持参していない患者又は調剤基本料の特例の対象となる保険薬局に処方せんを持参した患者ついては、来局回数かわらず、初回来局時の点数と同一を算定することとする。 (「薬局における対人業務の評価充実」の記載内容から引用)
「1冊だけにしたお薬手帳を持って行かないと損しますよ」とマスコミがこぞって報じてくれることを期待したい。