2016/04/01

連携が重視される改定の朝に、連携を止めるべき地域の話をしよう

■今回の診療報酬改定は機能分化と連携強化

医療の世界では、機能分化し各機能が連携することを促す制度・仕組みづくりが進められている。今日の診療報酬改定もその流れだ。

そもそも、連携を密にすべきという主張は近年急に湧いて出てきたものではなく、何十年も前から言われていたことを若月先生の著書を引用し紹介したのはつい先日のことだ。

「医療資源の無駄遣いを阻止し、連携を密にする」、30年前の話 - 医療、福祉に貢献するために

連携を強化していくのは、『医療システム』として、効率化を図るためには必要なことである。ただし、病院を1機能として捉えることを前提した議論には限界がある。

東京のような人口密度が高く、交通網が発達し、将来の人口減少が少ない地域であれば、効率化の議論を進めていくことが極めて重要である。個々の機能の必要なボリュームを考えた場合に、それなりのボリュームとなることから、適切な役割分担と連携により、効率化が図れるに違いない。

■1日の生産台数1,000台の工場と2台の工場

自動車工場をイメージしてみよう。1日1,000台生産する工場であれば、部品調達部門、組み立て部門、検査部門、出荷部門など、役割に応じて、部門が細分化され、各部門が連携し、組み立てていく。ライン上を流れる車は、みな似たようなものだ。ラインを効率的に流すために、シャーシの共通化などが重要になってくる。

一方、1日2台しか生産しない工場であったとしたら、どうだろうか。役割に応じた機能の細分化は、効率化にほとんど貢献しないだろう。むしろ、非効率になるはずだ。1日2台しか流れてこないライン上で、出荷前の検査部門の人は、ぼーっと待っている時間が増えるに違いない。

後者の2台しか生産しない工場であれば、1人を多能工化する方が効率化に貢献するだろう。

■連携の充実度に関係なく、効率的で質の高い医療であれば十分な報酬を

例えば、医療資源が限られる地域では、院内連携を前提にした制度も選択できるようになっている。ただ、大病院しかない地域はこれに該当しない。例えば、千葉県旭市がそのいい例だろう。

「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市 - 医療、福祉に貢献するために

旭市では、おそらく連携を強化していくよりも、院内機能連携の強化を推進した方が質の高い医療を提供できるに違いない。いっそ、医療・介護・福祉の機能を集約し、要塞のように構築していった方がよいかもしれない。

先日、九州のある地域で、病院の事業管理者と院長先生から似たような状況を聞くことができた。機能分化し連携を強化しろと言われるより、循環型のシステム(『中核病院(1病院)』と『診療所や介護施設、在宅』との行き来をしやすくするシステム)を構築したいとおっしゃっていた。非常に同感だ。

ここ数年の改定は、連携=絶対的な善行、と盲目的に報酬を厚くしている感が否めない。(今回はまだ少しマシになったか)

本来は、連携してもしなくても、効率的で質の高い医療を提供できていれば、十分な診療報酬が得られる仕組みが構築されるべきだが、まだそのような議論は十分でないと思う。

後期高齢者等であれば、財源と医療提供者が実質同一主体(国保・自治体)である。いっそのこと、医療機関における報酬は高齢者1人あたりの定額制にして、「効率的医療提供」や「病気にさせないこと」に対するインセンティブを大幅に高める案もありなのではないだろうか。(民間事業者や介護保険とのからみもあるので、シンプルな制度にならないことは百も承知だが・・・)