2016/07/11

医療制度の歪みが生み出す無駄な作業

土曜日はMMオフィス工藤氏とメデュアクト流石氏のセミナーを聞きに新橋へ。

2016年度診療報酬改定の『薬剤関連点数変更』に対する医療機関の対応とデータ分析 セミナー

薬剤師の病棟配置に対する考え方や、DPC病院における持参薬の制度における現場の影響など、かなり貴重な話を聞くことができた。

医療制度の設計上のゆがみというか、ひずみというか、表現は難しいのだが、ある病院では、持参薬を使わない対応のために、患者が持参した一包化された薬を、一度、封を開け、飲める薬と飲めない薬に分け、一部を院内処方した薬と入れ替え、また一包化しているらしい。

一包化自体が涙ぐましい仕事の上になりたっており、しかも診療報酬も発生している(つまりは患者負担が生じている)。

薬剤師の涙ぐましい仕事 - 医療、福祉に貢献するために

それを、DPC制度上の問題で、薬剤師が、その一包化を開け、入れなおすという究極的に無駄のある作業を、かつ、間違いの生じる可能性が高い作業(確かに、この点は非常に重要!!と感じた)をしなければならない。

流石氏は、『薬剤師が穴を掘り、自分で穴を埋めているようなものだ』と言っていたが、医療制度上の問題を整理するために、薬剤師にこんな作業をさせたかったのだろうか。

DPC制度における包括払い制度は、そもそも基礎疾患の有無などで、病院側に多少損得が生じてしまうのは致し方ないことである。であるならば、持参薬に関するルールは、もう少し広い視野で捉え、考えるべきなのではないだろうか。個人的には、持参薬OK、その分DPCの点数は下がる、というので良いと思うのだが・・・。持参薬の問題は、DPC制度を厳密に設計したい、調査したい、という意欲が前面に出すぎていて、現場がないがしろにされているように思う。

工藤氏、流石氏の話は大変面白く、勉強になった。


ちなみにDPC病院の持参薬の経緯とは・・・

入院医療費の支払いでDPC制度(包括払い制度)を採用している病院では、入院中に服用する薬が包括払いとなる。他病院や自病院の外来で処方された薬を入院時に持参すると、その薬は使わず、入院中は入院した病院の薬を処方してもらい飲むようにしなければならないルールになっており、2016年度の改定では、その内容をデータとして記録、提出することとなった。

これは、DPC制度が包括払いとなっているために、患者が薬を持参してくれれば、それだけ病院の持ち出しが減る。一方、持参せず、入院中に処方すれば、その分だけ病院のコストが増えることになる。

それを意図したかしていないかは別として、生活習慣病の薬などで、30日、60日といった長期処方になっている薬があって、入院時にその薬を持ってくる、というのは割と普通のことだった。しかしながら、DPC制度下で、なるべく病院が損をしないように・・・と考え、眼科の患者で入院中にしか使わない目薬を、入院前の外来で処方したりするような事例を聞くようになった。少なからず、そのような事例が影響したと思われるが、持参薬の制度が厳格になったと認識している。