2016/09/29

対談、後半も掲載されました

7対1からの切り替えだけでは未来はない | 医療経営CBnewsマネジメント

7対1の一部を地域包括ケア病棟に切り替えた病院の中には、何も変わっていないのに増収になったと言っているところと、在宅復帰のためのリハビリ強化などの特徴を持たせた病棟運営をしているところと、2つのタイプがあると考えている。

後者では、リハ実施対象者の平均2単位をクリアすることはもちろん、それ以外の時間も、病棟での生活すべてがリハビリに繋がるとのテーマで、リハビリセラピスト以外の看護師なども含めた全職員で、単位として数えられない『リハビリ』を強化している。

今後、7対1の適切な病床機能分化が進み、地域包括ケア病棟への誘導策がその役割を終えたとき、地域包括ケア病棟の点数を厳しくする、いわゆる『はしご外し』が行われるのだとしたら、後者は評価されるべきであり、一方、前者は評価されないべきだろう。

このようなことを意図して、『未来がない』と申し上げたつもりだ。

2016/09/26

皮膚科の人気クリニックの行列はいつまで続くのか

皮膚科領域で、テレメディスンはありえるか?

皮膚を直接診てもらった方が良いと思うのだが・・・。
アメリカと日本は健康保険制度が異なるため、支払い(特に、自己負担)の額が異なるため、こういったテレメディスンが拡大している、という見方ができる。

ここで、「だから、日本では関係ない話だ」と結論付けるのは早計だ。

確かに、今は直接クリニックや病院に行くのが当たり前で、それ以外の選択肢はほぼないだろう。しかし、10年後、20年後も、ずっとこの形が続くのだろうか? 10年後もまったく今のまま変わらない、ということは、逆に考えにくいような気がする。

例えば、初回にクリニックで診てもらい、処方された薬を塗り1週間後に再度受診して、「問題なさそうだから1ヶ月後にまた来てください」と言われたとする。この1ヶ月後の受診は、クリニックに行かず、テレメディスンでも良いのではないだろうか。(ビデオチャットで、医師が「まずい!」と思ったら、来院させれば良い)

この領域は、早かれ遅かれ、こういった変革の波がやってくるはずだ。そのとき、『1、2回行くだけで、あとはテレビ電話でいいのだから、ちょっと遠くても評判の良い皮膚科に行こう』というような行動が増えるかもしれない。つまり、「通う」ことの負担軽減により、医療機関の集約化が進む可能性が高まるのではないだろうか。

なので、超人気クリニックは、行列が無くなるどころか、もっと人気になるかもしれない。一方で、あまり人気のないクリニックには、全然患者が来なくなるかもしれない。こんな未来は、そう遠くない気がするのだが、考え過ぎだろうか。

2016/09/23

ウェアラブルデバイスを使っても体重が減らない

昨日、facebookで引用したウェアラブルデバイスを用いたダイエットの話題。

Effect of Wearable Technology Combined With a Lifestyle Intervention on Long-term Weight Loss:  The IDEA Randomized Clinical Trial | Sep 20, 2016 | JAMA | JAMA Network



ガーディアン紙などでもニュースになっていたようで、その記事がまた面白い。

Fitness trackers may not aid weight loss, study finds | Technology | The Guardian

Jawboneの広報は、「どっちのグループも、ちゃんとやせたじゃん」ぐらいの強気のコメント。
“In fact, the study demonstrated positive weight loss in both groups. Wearable tech helps to bridge the gap between patients who have access to rather intensive weight loss treatments and the very many who don’t.”
Fitbitの広報は、元の論文でもディスカッションで触れられていた「上腕に巻くタイプの結果でしょ、データ収集に限界あるよ。うちのは手首だから」と正当な返し。
“The researchers point out that a limitation of their work includes the fact that they did not use a modern wearable device such as those offered by Fitbit. The upper arm device used in the study was limited to automatic data collection only.
それに加え、Fitbitとか最近のウェアラブルデバイスは、リアルタイムにデータ収集して、ソーシャルネットワークも活用して、モチベーション向上させたりしてることを説明し、この論文だけでウェアラブルテクノロジー全体の結論とすることに強い懸念を示している。
“Most wearables today, including those offered by Fitbit, go far beyond data collection, offering individuals real-time access to their information, insights, motivation from associated social networks, and guidance about their health. We would strongly caution against any conclusion that these findings apply to the wearable technology category as a whole.”
ガーディアン紙のひきつけるための意図的な見出しはさておき、ニュース記事も一緒に読むことで理解が深まって面白い。

ちなみに、Fitbitのウェアラブルデバイスを身に着けて4年位経つのだが、体重はほぼ変わらない。この論文を読んで、仕方ない、と少しだけ思ってしまったのだが、それは単なる都合のいい解釈だ。

2016/09/22

看護必要度データ(Hファイル)を提出させるからには、現場の評価・記録負担軽減策の議論活発化が不可欠

昨日、看護必要度に関する記事をCBnews managementに掲載いただいた。

改定見据え、看護必要度データの精度向上を | 医療経営CBnewsマネジメント
https://www.cbnews.jp/news/entry/49639 (リンク修正)

Hファイルを提出することにより、どのようなことが明らかとなり、改定でどのような議論がなされるのか、私見を述べた。

大きくは3つの検討方向性があるのではないかと考えている。

  1. 病床機能分化の促進に向けた適正な看護必要度基準の検討
  2. 疾患別看護必要度データによる加算の検討
  3. 看護必要度データの精度によるインセンティブ・ペナルティの検討

2点目の疾患別の看護必要度データは、診療報酬の細かなレベルで反映させるのはスケジュール上、非現実的と考えている。(10月のデータが提出される年明け以降から分析され始め、春から資料が出始めたとしても、中医協での議論は、半年から最長9ヶ月程度の期間しかない)

そのため、現実的な落とし所として、DPC算定病院における機能評価係数Ⅱの重症度係数への反映について、アイデアを書いた。ただ、残念ながら、看護必要度の評価自体がオーバーエスティメート気味な状況をうまく律することができないとしたら、このような評価は余計かもしれないが・・・(一応、3点目で、律することができないかアイデアを述べたつもり)。

ただし、看護必要度データを提出することに対し、過度な不安を抱く必要はない。ただでさえ、看護必要度を記録する負担等が増えているだけに、過度な不安が、より一層、現場に大きな負担を強いるようなことになるのであれば、それは適切な取り組みとは言えない。CBnewsの記事でも、最後に書いたことだが、看護必要度は、看護部門だけが取り組むのではなく、病院全体をうまく巻き込むことが重要と考えている。

ちなみに、CBnewsの記事には書かなかったのだが、個人的な想いとして、Hファイルを提出させるのなら、看護必要度の各項目についてEFファイルでの代替可能性を精査することにより、医療現場の負担軽減策を最優先に検討してもらいたい。Hファイルを提出させた結果、「こんな項目も追加したい」「あんな項目もあった方が良い」と負担を増やすことばかり議論された日には、医療現場は崩壊してしまうだろう。

2016/09/20

地域医療構想に関するレポート

地域医療構想に関連した医療機関の取り組みについて、野村證券のレポートにて述べさせていただいた。これまで経験したことのない急速な人口減少時代に直面し、医療機関の経営はどのような取り組みが必要となるのか、具体例を交え、書かせてもらった。

野村證券 ヘルスケアノート

冊子を希望の方は、お近くの野村證券の支店まで連絡いただければ、お読みいただけるはずなので、遠慮なく、お問い合わせを。

2016/09/11

ホテルのレストランの競争で「立地」は要素のひとつだが、すべてではない。 薬局はなぜ・・・

■理解しやすい「患者利便性」と理解しにくい「医療の質」を天秤にかける危うさ

昨日の話の続きをしよう。敷地内薬局が増えているのは、「患者利便性」と「医療の質」を比較した場合に、前者が優先されているからだ。

患者利便性の話は難しくない。近い方がよい、いつでも営業してて欲しい、待たない方がよい等々、比較も容易である。

一方、医療の質は、比較が困難だ。かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局を持つと医療の質の向上が期待される・・・と言ったところで、一般人に理解できないどころか、医療関係者すら、かかりつけ薬剤師の意義について、疑問を持っている人がいる。一方で、門前薬局にだって優秀な薬剤師はいるのも事実である。ただし、このような個々人の意見のほとんどは制度を変えるだけのエビデンスではなく、感覚的な意見、感想に近い。

「医薬分業をすすめているから、かかりつけ薬局なんですよ」と言ったところで、患者は、よく分からない医療の質より、よく分かる利便性を優先してしまうのは当然だろう。

これらの問題点について、以前、下記のように述べた。

『医者の帰りに薬局に寄る』 このシステムが続く限り、医薬分業は非効率 - 医療、福祉に貢献するために
『医者の帰りに寄る』ではなく、調剤薬局にまず行く行動パターンを作らなければ、なし崩し的に門内薬局の開設へ大きく動くことになるだろう。
実際、門内薬局の開設が立て続けに公表されているのは、昨日書いたとおりである。

■薬局の利益を賃料・地代で病院にバックする仕組みであるならば強い疑問を抱く

門内に薬局を開設すれば、ほぼ処方せんを寡占できるのだろう。災害医療センターの公募における質問を見れば、その様子が伺える。

質問に対する回答書(調剤薬局の設置・運営者の公募)

応募者は、院外処方率や新患数、処方せん1枚あたりの金額などを知りたがっていることが分かる。おそらくこれらの情報があれば、ある程度の財務的な目安が付くのだろう。

この薬局の運営を通じて得る利益の適切性や、この災害医療センターのケースを個別に意図して言うわけではないが、賃料や地代を通じて、病院側が利益を手にすることができるとしたら、これは多くの病院がマネをしたいはずである。

門前に薬局があったところで病院にとって一銭も収入とならない現状は、施設内薬局の開設により、変化が生じている。

■ホテルのレストランとの比較

ホテルでは、レストランを施設内・敷地内に作るケースがある。宿泊者は、ホテル内のレストランで食事をしても良いし、ホテルのレストランが高いと感じたり、好きなメニューがなければ、ホテルを出て、好きなレストランに行くこともできる。完全に宿泊者の自由である。

ホテルによっては、宿泊料金とホテル内のレストランの食事をセットにしたパック料金を設定しているケースもよくあるが、大抵は食事なしのプランもあり、その差額を意識しながら、ホテル周辺のレストランに行くことを考えたりするのは、別に珍しいことではないだろう。

ホテルのレストランと、ホテル外のレストランは、値段や味や雰囲気などの純粋な質で競争している。あえて言えば、雨の日などはホテル内のレストランが有利になるだろう。また、ホテルのロケーションによっては、周辺にレストランのないところもある。そういったところでは、ホテルのレストランの値段は強気に設定できるかもしれない。いずれにしても、利用者が質を評価しながら、自由に選んでいる。

ある知り合いは、目玉が飛び出るような値段のルームサービスを頼む。一分一秒を惜しんでいるときに、食事で無駄な時間を使いたくなく、それなりの味の料理が出てくるルームサービスは、値段なりの価値があると言う。

薬局も、利用者が分かる『純粋な医療の質』で門前や門内の薬局が競争をすればよいのだが、冒頭述べたとおり、多くの患者は利便性しか理解できないのだから、当然の結果として、門前より門内、門内より院内と、より近いところが競争に勝ってしまう。それゆえ、「敷地内に薬局ができる」と知ったら、門前の薬局が猛反発するのだ。

レストランでは、そうはならないだろう。ホテルの前に繁盛している日本料理屋があり、今度ホテル内に日本料理屋ができると知ったとする。おそらく、ホテル前の日本料理屋は、多少危機感もあるかもしれないが(おそらく、それは適切な危機感)、料理のクオリティやメニューの差別化など、競争力を維持する努力をするはずである。

つまり、敷地内薬局、門内薬局について業界団体が反発しているのは、『患者に理解してもらえる「医療の質」の差はない』ということを自ら表明しているような気がしてならない。

2016/09/10

門前薬局から敷地内薬局へ なし崩し的に進む「患者利便性」を重視した改革

調剤薬局に関する話題がホットだ。

薬局新聞 9/7号 FujisanReader

上の記事によれば、「厚労省の”ダブルスタンダード”を警戒」とあり、かかりつけ医を進めることと、敷地内薬局を認めることが相反していると日本薬剤師会は主張している。

薬事日報の記事(【日薬】病院の“敷地内薬局”に不快感‐石井副会長 : 薬事日報ウェブサイト)では次のように書かれていた。
日本薬剤師会の石井甲一副会長は25日の定例会見で、保険薬局の構造規制緩和を受け、一部の病院が敷地内に調剤薬局を誘致する動きを見せていることに不快感を示した。
石井氏は、敷地内薬局について、厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」の副題である「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へという方向性とは「明らかに矛盾している」と指摘。敷地内に薬局を誘致する病院が「安易に増えることがないようにしてもらいたいし、われわれも努力しなければならない」と述べた。
発端となったのは、下記の保険薬局の指定に関する事務連絡だ。

事務連絡 平成28年3月31日 厚生労働省保険局医療課 保険薬局の指定について

事務連絡 平成28年8月10日 厚生労働省保険局医療課 保険薬局の指定等について(疑義解釈

このテーマについては今まで色々述べてきた。

病院と薬局は近い方が良い? - 医療、福祉に貢献するために

改めて話題になっているのは、昨今、敷地内に薬局を整備する話が立て続けに出てきているせいだろう。



なぜ問題になってしまうのか、本来どうあるべきなのか、次回、他業界も参考にしながら考えてみたい。

2016/09/09

ものの偏りを示すにはデータが大事

先日、CBnewsに医師確保に関する記事を掲載いただいた。女性医師の偏在を切り口に、もはや医師確保は個別医療機関の努力の範疇を超えてしまっているのではないか、という懸念を述べた。



今回は、医師をテーマにしたが、これは看護師などの医療職でも似た状況であると思う。データ分析から、診療科間の偏りと地域間の偏りの二種類を示している。地域間の偏りでは、その偏っている理由も示唆することで、医師確保への考察としてまとめた・・・というちょっと変わった記事なので、通常の記事の趣きとはだいぶ異なるのだが、お読みいただけると幸いだ。

2016/09/06

不妊治療をサポートする保険商品の設計は相当難しいはず

不妊治療をサポートする保険商品の話題がニュースになっていた。

日生、国内初の不妊治療保険  :日本経済新聞 (2016/11/22 下記ニュースのリンクがが切れていたため、日経の記事を引用)

「特定不妊治療」をサポート 日本生命、国内初の保険発売へ(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース


実際の中身については、ニッセイのプレスリリースを読んだ方が良いだろう。


まず気になったのは、次のこと。
  • 3大疾病保障がベースとなっているのに、50歳満期が上限(脳卒中や心筋梗塞、消化器系のがんなどは非常に確率が低いはず)
  • 出産は1年、不妊治療は2年の不担保期間が設定されている
支払い易く低く抑えられた保険料を設定できるかもしれないが、保障内容としては微妙かも?と思ったのだが、これらのことは大したことではなかった。

満期一時金が設定されていて、例えば、保障期間10年では次のようになっている。
【保障期間10年の場合】100万円+5,000円×給付金支払回数-給付金支払合計額
月1万円程度の保険料を払って、100万円の満期一時金があって、保障も付いてるから悪くない気もするが、出産や不妊治療に対する給付金は、満期一時金から差し引かれてしまうということだ。

つまり、満期まで解約しないことを前提とするならば、実質的には、自分で10年間積立貯金をして、がん保険の特約が付いていると理解した方が良いのかもしれない。

約款等を読んだわけではないので、あまり断定的なことは言えないが、プレスリリースを見た限りでは、保険商品としての設計に非常に苦労した感があり、何とか形にまとめた結果、保険会社も契約者も大損しない商品を作ったように思う。

2016/09/05

データ分析の本を買う前に「データサイエンス・スクール」

読み物として、統計局のデータサイエンス・スクールのウェブサイトが面白い。

データサイエンス・スクール 統計力向上サイト

平均値の取り扱いやグラフの作り方などの基礎的な内容を分かりやすく解説してくれている。マンガ形式になっていたりするため、取っ付き易いのもありがたい。

データ分析に関連する話題で、昨日、近所の本屋でエクセルの『ピボットテーブル』、『VLOOKUP』だけをそれぞれテーマにした本を見かけた。ニッチな内容で、良く1冊にしたものだなと思ったのだが、これらは理解できると強力な「武器」になるだけに、まだ理解不十分であれば読んでみてもいいのかもしれない。



教わるより慣れろでピボットテーブルやEXCELの関数を学んだ自分としては、このような本を読んでいれば、もっと効率良く習得できたのかもしれないが、昔を悔やんでも仕方がない。余談だが、今でもピボットテーブルが得意なのは、昔、管理会計のデータベースシステムを構築して、OLAPツールで経営管理指標やレポートをがしがし作った経験が活かされているように思う。データの構造を意識してピボットテーブルを使うことで、ダブルカウントや「平均値の平均値」を避けることができる。

ちなみに、冒頭のデータサイエンス・スクール、統計力テストというのがあるのだが、上級問題でちょっと間違えてしまった。あぁ、恥ずかしい、情けない・・・。