2016/10/20

CBnews NDBデータで鍛えるグラフの裏側読む技術 のボツグラフ

昨日、CBnewsにNDBオープンデータに関する記事を掲載いただいた。

NDBデータで鍛えるグラフの裏側読む技術 | 医療経営CBnewsマネジメント

記事では、NDBオープンデータを用いて、地域包括ケア病床の可視化を行ってみた。情報を読み解く力を身につけることは重要であり、そのためのトレーニングに良質な材料として、NDBオープンデータは有意義であると思う。

今回記事を書くにあたって、試行錯誤を色々行った。ただ、残念ながら、分析結果から示唆されることが曖昧であったり、読み取ることが難しかったり、すっきりとした内容にまとめることが難しく、ボツにした分析結果がごろごろと出てきた。

そのうちのひとつを紹介すると、肺がんの手術件数における胸腔鏡下の件数割合を都道府県別に比較したものが、下の地図である。

肺悪性腫瘍手術 胸腔鏡下の件数比率比較
(濃:胸腔鏡下が高比率 薄:胸腔鏡下が低比率)


胸腔鏡下の比率が高い都道府県ほど色を濃く、低いほど薄く、色を塗り分けた。

可視化をしたところで、この結果だけ見ても、???である。

そこで、肺がんの外科手術において、一定割合を占める大学病院について、各大学のウェブサイトに公表されている病院指標から得たステージ情報を基に比較してみた。

肺がん 大学病院本院 StageⅠの比率
出所:各病院ウェブサイト
ステージ情報は、外科手術における胸腔鏡下の選択に関係するかどうか、マクロなデータから捉えられるか検討したかったのだが、病院指標では、化学療法の入院患者の影響が強く、意味のある情報は得られなかった。

と言うわけで、完全に失敗・・・。自分の作業時間の多くはこんな感じである。

2016/10/11

院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(後半)

昨日(院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(前半))の続き。

院外処方から院内調剤へ切り替えた結果、景色は変わったのか。

■すでに撤退、もしくは撤退を予定している薬局が

滝井駅から病院までのメインストリートには、すでに閉局したところも。テナント募集の掲示が出ていた。インターネットで、この店舗の情報を探すと、「若干空いているので利用していた・・・、新病棟に変わると院内で薬が出るのでもうここに来ることは」といった感じのクチコミがあり、厳しい現実を目の当たりにする。


この向かいの薬局も、11月末で営業を休止する旨の掲示が出ていた。すでに9月中旬以降、スタッフを削減しているらしく、院内調剤への切り替えの影響は甚大であった。

■営業している門前薬局に患者がいない

このようにすでに営業を止めたり、縮小している薬局が出始めている状況下において、残りの薬局に患者が集中しているのでは?と考えてみたのだが・・・。

病院の目の前にある薬局など、営業をしている4店の中をぱっと見たところ、患者はわずか1名しかいなかった。13時頃という時間のせいかもしれない。ピークの時間帯を若干過ぎていたのかもしれないが、大学病院の目の前で、これだけ閑散としているケースはまずありえない。

その証拠に、病院の院内薬局には、30人以上の患者が処方を待っていた。つまり、閑散としている理由は、患者自体が病院にかかっていないのではなく、薬の処方の場所が変わってしまったためと言える。

■待ち時間は? 利便性は?

30人以上の患者が院内薬局で待っている様子は、一昔前ならごく当たり前の光景であり、それ自体に驚きはない。しかし、院外処方をしていた病院が院内に切り替えたことで、やはり多少「待たされ感」は生じているようだ。

院内に掲示してあった患者からの声には、
院内処方になり、待ち時間がかかり不便になりました。3ヶ月分の薬を持って帰り、買い物などするのに不便です。家の近くでもらえる方が良かったです。
というようなものがあった。

医療の質的な評価については、待ち時間だけでないため、これだけで質の低下を論じることは適切でない。また、家の近くでもらいたいという点も医療の本質ではない。しかし、まったく無視することもできない意見だろう。個人的には、切り替わったことで説明が丁寧になったか否か、医学的管理が向上したかどうかなどの気になることがあるのだが、このような点は今後の学会発表・論文などを待ちたい。


今回、このような光景を見て、門前薬局がいくら努力していても、院外処方から院内調剤に切り替えてしまえば、これまでの経緯などはまったく無視され、患者と薬剤師・薬局との関係性などは簡単に壊れてしまうように感じた。院外処方がいいか、院内処方がいいかの議論は、狭義の医療の質だけでなく、利便性なども含めた広義の質を考えることが重要であり、また、院内・院外という2択の議論だけではなく、切り替え時の影響についても考慮することが重要であるように感じた。

2016/10/10

院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(前半)

先週、関西を移動している途中で大阪に。院外処方から院内調剤に切り替えたことで有名な関西医科大学総合医療センターへ。

関西医科大学総合医療センター(旧 滝井病院)の最寄り駅、京阪電車 滝井駅
最寄りの滝井駅は大阪中心部からのアクセスも良く、便利なところ。そして、駅前から病院までは一直線で100mくらい。

滝井駅前から病院までの風景
総合医療センターの外来の建物までは、徒歩2分くらい
院内調剤と院外処方とどちらが良いかの議論は別として、今回見たかったのは、切り替えたことによって、門前の景色がどうなったということだ。

以前の様子はGoogleマップのストリートビューが参考になる。


具体的な様子について、次の記事で見ていきたい。

日経ヘルスケアにコメントが

今月の日経ヘルスケアの『DPC病院 最新「経営努力度」ランキング』の記事に自分のコメントが載っていた。

コメントが掲載された日経ヘルスケア2016年10月号


先月、効率性係数が大事であることなど、あれこれ1時間以上話したのだが、記事では、その一部を載せていただいた。ランキングについては、大病院(病床数が多い病院)において、レバレッジが利きにくく、相対的に伸びが低くなってしまうかもしれないが、記事でまとめられている方向性はシンプルで分かりやすく、また実例で紹介された病院の取り組みなども参考になるだろう。

ちなみに効率性係数がアップしても、その増収分は・・・のくだり、補足すると、ただ在院日数を短くしてベッドが空いてしまうと、係数の増収分 < 稼働率低下の減収分 であり、経営的に厳しい。そのため、ベッドを埋める努力が不可欠だという意味で、効率性係数の向上、すなわち、効率的な病床利用は中長期的にじっくり腰を据え、取り組む必要のある重要な施策と認識すべきと考えている。

当然ながら、地域の事情や受け入れている患者の病態によっては、地域包括ケア病床への機能転換なども検討すべきだろう。

2016/10/06

来月セミナーで話をさせていただきます

来月、11月 5日(土)午後と11月 6日(日)、MMオフィス工藤氏とメデュアクト流石氏とセミナーで話をさせていただきます。よろしければ、ご参加下さい。

病棟再編成のデータ分析&ストラテジー立案のための1日半集中講座 セミナー

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上記のセミナーで一緒に話をしてくださる工藤氏と流石氏については、以前、おふたりのセミナーを拝聴させていただいたことがあるのだが(それ以前に長い付き合いなのだが)、データ分析と病院・薬局での実務経験に基づき、医療現場のスタッフ目線で物事を考える流石氏と、大局的に医療政策の向かっている方向を捉える工藤氏と、それぞれの特徴が活かされた興味深い内容であった。

医療制度の問題点を鋭く突いたそのセミナーに関する話は少しだが下の記事に書いた。

医療制度の歪みが生み出す無駄な作業 - 医療、福祉に貢献するために

今回のセミナー、そんなお二人と一緒なので、かなり緊張しそうだが、充実した内容にできるよう準備したい。

2016/10/05

「病院情報の公表」により開示されたデータを分析してみた

本日、CBnewsに「病院情報の公表」に関する記事を掲載いただいた。

中小病院に労力を強いる「病院情報の公表」 | 医療経営CBnewsマネジメント


先日ブログでも触れたが、色々な病院の内容を見るのも面白い。

あまり多くの患者は見ないであろう病院指標をじっくり見る - 医療、福祉に貢献するために

特に、コメントをじっくり読むと、非常に充実している内容の病院と、そうでない病院が見えてくる。ただ、面白い、面白くない、だけだと感想に過ぎないので、CBnewsの記事では、それっぽいデータ分析も交えている(とは言っても、今回の分析は相当手抜きで、本来、統計的なことを述べるのは微妙なレベル)。

なお、余談だが、このような情報公開の目的のひとつに「データ分析等の人材育成」があったのならば、システムベンダーが簡単に分析できるツールを配っている時点で、無意味な気がするのだが・・・。


2016/10/01

あまり多くの患者は見ないであろう病院指標をじっくり見る

■病院指標の公開がスタート

今日から、DPC包括払い制度を採用している病院では、病院指標を公開しなければ、来年度の機能評価係数Ⅱの保険診療係数という入院収入に関する係数(インセンティブ)が減らされてしまう。そんな制度が、ひっそりとスタートした(正式には10月1日時点で公開しているかどうかで評価されるのであって、公開自体は今日以前から実施されている)。

この制度については、もう4年近く前から無駄な制度で、患者のためにならない指標であるとの主張を繰り返してきた。

DPC評価分科会 何のための指標か、誰のための指標か - 医療、福祉に貢献するために

国民目線に立っていない病院指標なんてクソだ! - 医療、福祉に貢献するために

昔のブログ記事を読み返すと、自分が主張していたストラクチャー項目は病床機能報告制度によって、その多くが統一フォーマットで報告されるようになり、データベース化などのデータ利用が進むようになった。

一方、患者目線が足りないと主張してきた項目はことごとく4年前の形のまま、今日を迎えてしまった。とはいえ、4年前から良いと言っていたがんのステージ別情報などもあるため、各病院の情報が気になってしまうのは、ある種、職業病だ。

■気になった順に見ていった

国立がん研究センター中央病院
www.ncc.go.jp/jp/ncch/info/hosp_info/index.html
(がんといえば、まず、ここで・・・)

国立循環器病研究センター病院
www.ncvc.go.jp/hospital/about/quality/template0930.html
(がんのナショナルセンターを見たら、次は循環器のナショナルセンター・・・)

東京大学医学部附属病院
www.h.u-tokyo.ac.jp/dpc/template.html
(ナショナルセンターの次には大学病院。1つ選ぶなら、ここかな・・・)

がん研有明病院
www.jfcr.or.jp/hospital/dpc/index.html
(民間病院でがんと言えば、ここで・・・)

済生会熊本病院
済生会熊本病院 病院指標
(Ⅱ群で気になるのは、こことか・・・)

三井記念病院
平成27年度 社会福祉法人 三井記念病院 病院指標
(こことか・・・)

沖縄県立中部病院
病院指標| 沖縄県立中部病院
(Ⅲ群ではこことか・・・。ここはPDFだった)

伊藤病院(東京都)
www.ito-hospital.jp/byoin-kokai/template.html
(専門病院、単科病院の特徴的な病院と言えばここかな・・・)

加野病院(福岡県)
平成27年度の加野病院・病院指標 【泌尿器科/内科・加野病院|医療法人豊資会】
(単科病院で、かつDPC算定病床数、総病床数が少ないのは、ここかな・・・)

といった具合に見ていった。

きっと三井記念病院のコメントは読む価値がある。特に眼科は興味深い。それと国循はこれから更新していくのだろう。ほとんどコメントがなかった。

ただし、このようなの感想は、あくまでも自分(一応、医療関係者と自覚している)のものであって、一般人の目線ではない。繰り返しになるが、患者目線で言えば、こういった情報を理解するには相当な知識が必要であり、コメントに書いてあった情報くらいで理解できるかと言えば、正直微妙だと思う。

また、気になったこととして、伊藤病院や加野病院のような比較的小規模な病院であっても、しっかりと公表している点は評価されてよいのではないだろうか。大病院に比べ人的資源も乏しいであろうに「係数」でかかってしまうのでは、不公平感が残るかもしれない。

■ステージ別のランキングは週刊誌の格好の餌になるのでは

がんのステージ別情報は興味深い。おそらく週刊誌がランキングなどにしようと思うに違いない。ただ週刊誌がそのように利用するのであっても、これまでのDPC公開データによる単純な件数の比較よりはまだマシだろう。医療機関の実力を適切に評価しようと思ったら、患者の状態が重要なのだから。このことについては、以前書いた下記のブログを参考にしていただきたい。

教育と医療の共通点 書評: 「学力」の経済学(前半) - 医療、福祉に貢献するために