2017/09/28

175,000床のデータで示せた・・・

7対1と10対1だけで1000近くの病院を対象に分析し、CBnewsの記事(同じ看護必要度でも7対1と10対1では患者像は異なる - CBnewsマネジメント)の検証を実施。

一応、想定通りの結果が得られた。細かい説明は省くが、看護必要度が25%以上の施設だけに絞り込んだら、10対1の「A2点以上かつB3点以上」のヒストグラムが大きく変わった。(7対1より高い値で分布している)

【全施設】
7対1、10対1の看護必要度 施設分布

看護必要度全体が25%以上の病院のみ
7対1、10対1の看護必要度 施設分布
2県分から12都道府県分の病床機能報告データに対象を広げたが(病院数は約10倍に。1000病院、4000病棟弱のデータを分析)、仮説は間違ってなかったようだ。また、CBnewsの記事では触れられなかった10対1でバリバリ手術病院の存在も確認できた。

この分析を通じて、都市部と地方部の違いなど様々な示唆を得ることができ、まだまだ分析したいことがあるのだが、時間的に厳しいか・・・

2017/09/27

入院収入は増収? 減収?

直近の医療費の動向データ(平成28年度 医療費の動向-MEDIAS-|厚生労働省)を基に、都道府県別に入院医療費の増減を見た。

2016年度入院医療費の増加率(2015年度比)
緑:増加 黄:増減なし オレンジ:減少
※都道府県別データを基に、隣接する都道府県のデータが連続であることを仮定し
等高線で塗り分けているため、特定の市町村の増減を意味しているわけではない

2016年度は増収減益の病院が多いと思われるが、地図を塗り分けても緑色(増収傾向)のところが多くなった。一方、九四国・東北の一部は減収となっているところもある。増収でも減益になってしまうという直近の病院経営環境すれば、減収は大幅な減益となっている可能性が高い。このような地域性は個別医療機関の努力範疇を越えた経営環境の悪化と理解すべきだろう。

2017/09/24

地域包括ケア病床や療養病床がデータ提出していれば、いずれたどりつく先は・・・

昨日のCBnews社主催のセミナーでプレゼンに使った、大学病院本院の肺がん・肺炎・誤嚥性肺炎の症例数に関するグラフ。

DPC公開データ(2015年度実績)を基に作成

セミナーで武久先生・仲井先生の話を聞いていたら、誤嚥性肺炎に対し、受け入れ能力とアウトカムで評価したら、非常に努力している地域包括ケア病床や療養病床はもっと高い評価を受けていいように思えて仕方なくなった。

CBnewsの記事(新入院確保へ3つの「広げる」と地域とのバランス - CBnewsマネジメント)でも書いたが、大学病院で誤嚥性肺炎を診ることが悪いといいたいのではない。地域から請われ、救急医療に尽力している病院なども少なくないからだ。ただし、DPC制度下、大学病院は医療機関別係数が高く、大学病院に長期間入院していれば、医療費は相対的に高くなっている可能性がある。ちなみに大学病院本院の誤嚥性肺炎の平均在院日数は20日を超えている。入院初期は大学病院で診るとしても、状態に応じて、周囲の急性期病院に転院させるといった対応もできるのではないだろうか。(送る側・受け入れる側、双方に負担がかかることも十分承知しているが、すでにそういった対応をしている地域があることも知っている)

中林先生は看護配置から内容に重きを置いた評価になるだろうと言っていた。また、多摩川病院の矢野先生は、数年前まで全床介護療養だった病院で、地域包括ケア病床等に機能転換し、軽度~中等度の急性疾患は診れるようになったとおっしゃっていた。

地域包括ケア病床や療養病床で診ている患者と同じ疾患・病期・病態の患者を7対1・10対1等の急性期病棟で診ている場合の評価は下がっても仕方ないように思うが、次の改定までに議論に耐えうるデータが出て来るだろうか。中途半端なデータでは、強い反発も想定されるだけに、質的に充実したデータを示すことが求められるはずだ。

昨日のセミナー、貴重な機会をいただけたことに感謝するとともに、自分以外の4人の先生の話が非常に参考になった。(ただ、内容を微妙に変えながらの3日連続セミナーは、ちょっと体力的にきつかった)

2017/09/22

需要減少時代における新入院患者確保戦略展開の留意点

CBnewsに新入院患者の確保に関する記事を掲載いただいた。
とは言っても、よくありがちな「集患戦略」というような視点ではなく、医療需要減少時代における戦略展開の留意点を述べさせてもらった。データ分析も独特な観点のものを示したつもりだ。

あるクライアントでは、数年前からこの切り口でのデータ分析結果を見せ、戦略を立てる際の参考などにしてもらっている。また3つの「広げる」考え方は、昨年は国立大学病院向けの講演で話をさせていただいた。つまり、今回のCBnewsの記事は数年温めていた内容とも言えるのだが、診療報酬改定の議論本格化を前にあえてこの内容をテーマにしたのは、診療報酬による誘導だけで、地域の医療システムの最適化を促すことには限界があり、地域医療構想等の概念が重要であるということを述べたかったためである。

余談だが3つの「広げる」。プレゼン用のスライドもあるのだが、3つを3次元に置き換えて、立体的にきれいに見せたい・・・と思ったものの、自分にビジュアル的なセンスがなく、イマイチな資料になってしまっている。残念だ。

2017/09/21

再入院率減少プログラムは個別医療機関の対策を超えている

COPDの再入院率減少プログラムについて話を聞いてきた。アメリカでは入院報酬の包括払い制度において、再入院率に応じたペナルティの制度が始まっている(詳しくは下のリンク参照)ことや、再入院費用自体が包括化されてしまうことが背景にある。再入院率を減少させることは病院経営に直結するため、重要な取り組みとして認識され始めているのだ。

取り組み自体は、下記のレポートを参照いただきたいが、要は、病院に入院中の患者に対する取り組みは、取り組み全体のごく一部で、様々な職種が長期間にわたって接触し、取り組みを行っている。


日本の現状にあてはめると、かかりつけ医やかかりつけ薬局の努力が入院診療報酬の向上につながるような状態になっている。

もし、再入院率減少に対するインセンティブを日本でも導入しようとしたら、現状の日本の診療報酬制度において、アウトカムでかかりつけ医・かかりつけ薬局・他院と自院に対し同時に評価するようなものはない。(ストラクチャーやプロセスでは評価する制度がある。周術期の口腔ケアや、感染対策防止加算等)

再入院率減少策をより効果的にするにはアウトカム評価が重要であり、その取り組みが広い領域・多職種にわたることを考慮するならば、既存の包括化(1日の入院包括化、1入院の包括化)の概念を越えた1エピソードの包括化などの新しい報酬制度が必要かもしれない。また、その場合に、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師・病院間の利益配分などの新しい考え方が必要になるかもしれない。

ちょうど、先日、NEJMに再入院リスクに関して、患者の影響を排し病院の影響を独立評価できるかどうか検討した論文において、病院のクオリティの高さが、患者ファクターとは独立し、再入院率に貢献していることが示唆されたと述べられていた。(下記参照)

Hospital-Readmission Risk — Isolating Hospital Effects from Patient Effects — NEJM: Special Article from The New England Journal of Medicine — Hospital-Readmission Risk — Isolating Hospital Effects from Patient Effects

再入院率を正当に評価することは、よりよい医療が受けられることに繋がるはずである。アウトカム評価の時代は着実に近づいてきている。

2017/09/20

日本では予防接種を薬局で打つような時代が来るのか?

ウォルマートの入口で見たインフルエンザの予防接種、今日打てますよという広告。


店内でさすがに写真は撮れないので入口から見たところまで。(入口から遠くを撮っているのでボケボケになってます・・・)


処方薬の受取か、インフルエンザの予防接種かどちらか分からないが、薬局の窓口の前には、二人ほど待っている人がいた。

ドラッグストアのWalgreensもTargetもCVSも、そして小売業がメインのWalmartも、薬局関連のサービス内容に差は見られない。

日本の今後を想定する上で、面分業が進むのであれば、こういった形態の進化系・・・となるのだろう。ただここ最近の日本の薬局の動きは、門前から敷地内・門内へ勢いが活発化しているだけに、処方薬は門内・院内に、在宅対応もそちらで・・・という方向もありえるように思う。診療報酬次第で、ドラッグストアでは、調剤スペースを割き、薬剤師を配置するよりも、化粧品などの高利益率の商品を充実させるという方針も十分にありえるのではないだろうか。

かかりつけ薬局の推進や薬局での簡易検査実施などの延長線上にミニッツクリニック開設や予防接種実施が考えられると思っていた。しかし、門内薬局等の議論動向を見ていると、直近はそちらの議論に終始してしまい、本質的な受療行動を変えるような大胆な改革には至らないだろう。

Flu Shots - Walmart.com


2017/09/19

ズッキーニは麺に、カリフラワーは米に、えんどう豆はハンバーガーのパティに

昨日の続きのホールフーズマーケットで見かけたもの(正確には探したもの)。

・ビヨンドミート (Products | Beyond Meat - The Future of Protein™)
・ズッキーニヌードル
・カリフラワーライス

Beyond Meatはガイアの夜明けか何かのテレビ番組で見かけて気になっていたもの。ズッキーニヌードルやカリフラワーライスは雑誌かネットで知って気になっていたもの。

Beyond MeatのTHE BEYOND BURGERはハンバーグなどが並んでいる冷蔵ケースにおいて、結構目立つボリュームで陳列されていた。棚にも平積みにもなっていたので、相当力を入れて販売しているのだろう。

これら、単なる興味で特に深い意味はないが、病院食などで特色を出す余地として、参考になるかもしれない。

Pinterest で大人気のZucchini Noodlesレシピ Pinterest で大人気のZucchini Noodlesレシピ

2017/09/17

サービス提供者の包括化が進む未来を考える

アマゾンの買収による影響は、ホールフーズマーケットの入り口で見かけたこのポスター以外、正直、まだ分からなかった。
WHOLE FOODS MARKETの入り口で見かけたポスター
何もかもが「これから」ということをポスターが示しているように思う。

先週聞いてきた講演で、アマゾンとホールフーズマーケットの話題が出た。医療の世界がバリューベースドケアに移行し始めているものの、アメリカにおいて医療費の大半はFee for Serviceであり、Value-based Careの売上は10%にも満たないとのこと。小売業でたとえると、Value-based Careは一昔前のアマゾンのようなオンライン販売で、Fee for ServiceはWal-MartやTargetなど従来からある店舗販売のようなものだと。好きか嫌いかは別としても、オンラインの時代が着実に来ていて、アマゾンがホールフーズを買収したのは象徴的な意味を持っている。つまり、まだ売上の10%にも満たないValue-based Careではあるが、その時代が着実に来ており、それを好きか嫌いかは別としても、その時代に向け、何をすべきか、自分たちがどうありたいか考えるべきだ、というようなことを言っていた(勝手な理解なので、多少の認識ミスはお許しを)。

日本で言えば、出来高払いから包括払い(Fee for Serviceの置き換え)へのシフトが色々な領域で進んでいるが、さらにその先にはValue-basedな包括払いが待っているはずである。

そのために何をしたらよいか。何が起きるか。・・・サービス提供者の包括化が進む、なんてこともあり得るのではないだろうか。

2017/09/15

日本ならダメな広告?

ソルトレイクシティ国際空港で見かけたIntermountain Medical Centerの広告

ユタ州で最も包括的な心疾患ケアを提供する・・・って表現は日本では医療法の広告ガイドラインと照らし合わせると微妙か?

2017/09/14

国際化に「ピクトグラム」は有用

データ分析の勉強などが目的でソルトレイクシティに。


TOBACCO FREE ZONEは「タバコが自由に吸えるゾーン」ではなく、「タバコのないゾーン」。絵の通り、禁煙エリア。

敷地内禁煙、歩道にも表記が - 医療、福祉に貢献するために

台湾のようにNo Smokingとしてくれた方が直感で理解できるのは、自分の英語力の無さが原因。英語力は永遠の課題。そして、大人から子どもまで語学力の乏しさをある程度カバーしてくれるピクトグラムの素晴らしさを再認識。日本の病院でピクトグラムが充実しているところも多いように思う。オリンピックなどがきっかけでさらに充実していくことだろう。

2017/09/12

11月19日、日経ヘルスケア主催のセミナーをMMオフィス工藤氏と担当させていただきます

11月19日、MMオフィス工藤氏とセミナーを担当させていただくことに。前回改定の直前の第1回からすでに3回開催させていただいた。毎回、貴重なご意見など頂戴でき、こちらが想定していないような質問を工藤氏にライブでぶつけることで、様々な視点や考え方を引き出すことが醍醐味だと感じている。

今回も、改定を意識しつつ、なるべく参加者の皆様が参考になりそうな質問をぶつけられるようデータ等の準備をしたい。

病院サバイバル時代の経営戦略 病院サバイバル時代の経営戦略

ちなみに、他の一般的な診療報酬改定とはまったく異なるテイストなので、その点はご留意を。

2017/09/11

都立病院経営委員会が今週14日に

第4回都立病院経営委員会が14日夕方に開催されるようだ。

第4回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会の開催について | 病院経営本部からのお知らせ | お知らせ | 東京都病院経営本部 第4回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会の開催について | 病院経営本部からのお知らせ | お知らせ | 東京都病院経営本部

さすがに急すぎてスケジュール調整ができない。前回聞いて非常に有益だっただけに、次回もぜひと思っていたのだが・・・。

前回の感想は下記に。
病院経営改革の話が聞けるんです、しかも無料で - 医療、福祉に貢献するために 病院経営改革の話が聞けるんです、しかも無料で - 医療、福祉に貢献するために

お時間の都合がつく方は傍聴されてみてはいかがだろうか。(表題だけでは、どのような内容の議論をされるのか把握しかねるが・・・)

2017/09/09

看護必要度をメインテーマにしたセミナー

今日は看護必要度をメインテーマにしたMMオフィス工藤氏と、元同僚の上村氏のセミナーに。


上村氏は自分にとっての看護必要度データ分析の先生みたいなものなので、現在の自分があるのは彼女のおかげ!?、である。

次回改定が未定な中で、どういった情報を見ていけば良いか、ベッドコントロールに対しどう考えれば良いか等、お二人の異なる観点から整理された内容を聞いて、自分の考えが非常にすっきりした。

また、工藤氏には弊社の資料をいくつか引用いただき、感謝。しかも、意外なことに、その資料の説明を聞いて、自分が考えていなかったことを教えてもらえた。

ちなみに参加者が70名を超える盛況ぶり。講師おふたりの魅力はもちろん、テーマがキャッチーだったのだろう。

2017/09/06

看護必要度の議論には、患者像、病院像に迫るデータの準備が必要だ

先月、中医協の入院医療の分科会を傍聴しながら考えていたことを書いた。

看護必要度の議論には、マクロな情報とミクロな情報をバランス良く揃えることが重要 - 医療、福祉に貢献するために 看護必要度の議論には、マクロな情報とミクロな情報をバランス良く揃えることが重要 - 医療、福祉に貢献するために

看護必要度の議論は、病院団体などを中心に「慎重に」という意見が多く出てきており(看護必要度見直しけん制、日病や日看協がタッグ - 医療介護CBnews)、主張している点は非常に良く理解できる。一方で、改定でまったく手をつけないことも考えにくいだけに、限られた時間で建設的な議論がなされることが重要だろう。

冒頭で引用した先月のブログ記事では、看護必要度の数値の散布図を見て、次のように述べた。
マクロな視点で、下記のような看護必要度が30%台後半、40%台の病院がある・・・ということが示されたのは面白かった。分科会では「スーパー10対1」といったように言われていたかと記憶しているが、このような病院の実態をミクロな視点で把握することは、何かしら参考になると思う。
ミクロな視点で捉えるべく、病床機能報告のデータから分析を試みた。その分析結果を交えながら、あるべき制度設計についてCBnewsの記事で述べさせていただいた。

同じ看護必要度でも7対1と10対1では患者像は異なる - CBnewsマネジメント 同じ看護必要度でも7対1と10対1では患者像は異なる - CBnewsマネジメント

かなり分かりにくい表現・分析結果になってしまったと反省しているが、いつもながら校正で大幅に見直していただき、何とか形にしていただいた。個人的には非常に興味深いデータで、多くの示唆を得ることができた。

議論はただ時間をかければよいのではなく、必要なデータを揃えた上で議論することが重要である。看護必要度の制度検討には、背景に患者の受療行動の変革や、行政の意識改革など、オペレーションを変えていくのに時間のかかる部分があることは事実だが、議論に耐えうるデータがないことを理由に制度検討自体に時間をかける必要はない。このような理由で慎重に議論を進めていれば、2025年、2040年はあっという間にやってきてしまうだろう。

2017/09/04

まるまる一冊の本をダウンロードできる病院ウェブサイト

患者向けに情報発信している病院は多い。
病院のウェブサイトがあるのはほぼ当たり前になっており、広報誌をウェブで配信しているところも珍しくない。また積極的なところではYoutubeなどで動画配信しているところもある。

何気なく見た大阪急性期・総合医療センター(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター)のウェブサイトで驚いた。

患者向けに書かれ、販売されている本がウェブ上で読め、ダウンロードもできる。
(下記サイトにダウンロードのリンクあり)

当センターの最新治療がわかる本 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 当センターの最新治療がわかる本 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター

太っ腹!!!

この本に書かれていることはこの病院固有の情報ではないため、この病院に関係ない人でも参考になるだろう。また、中身を書いているのは医師だけでなく、看護師や薬剤師、検査技師、歯科衛生士など様々な職種の人たちが携わっている点は興味深い。

2017/09/03

大学病院の特殊性を示せなければ、さらなる効率化は不可欠

先日、DPC評価分科会の開催前に、厚労省案に対する私見を述べた。
カバー率は重み付けを軽くすべきでは

MMオフィス工藤氏が、分科会で討議された内容についてコメントしている。
同意見でホッとした(一緒に原稿を書かせていただいたり、工藤氏から少なからず影響を受けているので、当然といえば当然なのだが)。

なお、議事録等を見なければ、はっきりと言うことはできないが、効率性について、大学病院は重症な患者を見ているから在院日数を縮めるのは難しいといった意見が出たようだ。しかし、これにはエビデンスが必要だろう。むしろ、大学病院は同じ疾患を見ていても若年層が多く、全身状態は悪くないことも考えられる。特に、重症度、医療・看護必要度の尺度で言えば、大学病院こそ現状の25%が厳しいという話も聞いている。それだけに「議論に耐えうるエビデンス」が示されることが望まれる。(大学病院の特殊性を提示できれば、大学病院にインセンティブが与えられるはずであり、その苦労は決して無駄にならないと思う)

2017/09/01

カバー率は重み付けを軽くすべきでは

今日午後開催予定のDPC評価分科会。資料がアップされている。

中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)審議会資料 |厚生労働省 中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)審議会資料 |厚生労働省

資料を見ると、機能評価係数Ⅱについて、救急医療係数の評価およびⅠ群・Ⅱ群の重み付けの議論がなされるようだ。

重み付けは賛成である。医療機関の負担と努力を報酬で評価することは重要であり、適切なインセンティブは医療の質を向上させる。重み付けの資料の対応方針(案)を見ると、次のように書かれている。
○ 総合的な体制を既に有していると考えられるⅠ群については、在院日数短縮の努力を促すために、効率性係数を重み付けすることとしてはどうか。
○ 在院日数短縮について既に一定の取組を評価出来るⅡ群については、総合的な体制をより評価するため、カバー率係数を重み付けすることとしてはどうか。
Ⅰ点目の効率性係数、強く同意。ただ、単に「在院日数短縮」を促すのではなく、「疾患ごとの相対的な評価により適切かつ効率的な病床利用」を促すと言った方がよいだろう。個人的には、どのような反論・意見が出てくるか、楽しみである。

2点目、カバー率。なぜそうする?? 以前から、カバー率は病床数に依存していて、努力余地がない・少ないと言ってきた。データからもその特徴は明らかであり、大病院を優遇する係数と言って良いだろう。

参考までに、そのことを述べるために使ってきた資料の一部を紹介する。

以前、カバー率の努力余地はまったくないと述べていたが、
千葉大の井上先生の話を聞き「高回転化で多少伸びる」とトーンを変えた

DPC算定病床数でカバー率係数は決まることを示した散布図

年10症例を超える疾患数と病床数の関係(※カバー率の評価は月1症例以上が対象)
・箱ひげ図の「ハコ」が小さい⇒病床数に強く依存
・箱ひげ図の「上のヒゲ」が短い⇒病床数の縛りを超えてカバー率の高い病院はほとんど存在しない
・箱ひげ図の「下のヒゲ」が長い⇒病床数の縛りを超えてカバー率の低い病院はある(専門病院等)
こっちの制度で大病院を評価し、あっちの制度で専門病院を評価し、そっちの制度で中小病院を評価し・・・なんてことをしていれば、制度を複雑化させているだけで結局のところ意味がない。

重み付けをするのであれば、カバー率はむしろ評価を軽くすべきだと思う。今日の分科会でそのような意見が出てくることを期待したい。

なお、カバー率係数自体が不要というのが自論ではあるが、もしⅡ群・Ⅲ群間の移動の不公平さの解消を目的として重み付けを調整するのであれば、やや賛成である。その不公平さについては以前MMオフィス工藤氏とCBnewsで記事にさせていただている。