2017/10/29

習熟を要するロボット支援手術に対する評価は厳しい

ロボット支援手術と通常の腹腔鏡下手術で、コストやアウトカムなどを比較したJAMAの論文。

1つ目が腎切除術。2つ目が直腸がん切除術。

Outcomes and Costs of Robotic-Assisted vs Laparoscopic Radical Nephrectomy | Minimally Invasive Surgery | JAMA | The JAMA Network Outcomes and Costs of Robotic-Assisted vs Laparoscopic Radical Nephrectomy | Minimally Invasive Surgery | JAMA | The JAMA Network
腎切除術のケースでは、徐々にロボット支援手術が増えてきているものの、合併症等はあまり変わらず、コストや手術時間はロボット支援手術の方が悪いと言っている。

Robotic-Assisted vs Conventional Laparoscopic Surgery for Rectal Cancer | Colorectal Cancer | JAMA | The JAMA Network Robotic-Assisted vs Conventional Laparoscopic Surgery for Rectal Cancer | Colorectal Cancer | JAMA | The JAMA Network

また、直腸がんのケースでは、ロボット支援手術は術者の経験の影響が大きいことや、ロボット支援手術が従来の腹腔鏡下手術と比べアドバンテージはないと言っている。

これらの論文については、下記ニュースでもまとめられている。


このような論文は、黎明期ゆえの課題なのか、一般化が進んでも生じる課題なのか、判断は難しいが、患者・病院にとってメリットがなければ、ロボット支援手術に高い点数をつけることの合理性は乏しいと言わざるをえないだろう。次の改定で一気に厳しくなることは望ましくないが。難しい問題である。

2017/10/24

「マクロな数値は気にせず努力を」と言いつつも、やはり気になる

鈴木医務技監、診療報酬大幅マイナスの可能性に言及 - 医療介護CBnews

この牽制の具体的な内容が日経に。

診療報酬下げ、2%台半ば 財務省案   :日本経済新聞
保育所2万人分整備 財務省、来年度にも補助金転用  :日本経済新聞

診療報酬下げたら、労働環境、悪化しかねないだけに、このタイミングで、この記事が出てくるのも興味深い。
病院などの労働時間違反率、全業種と比べ「高い」 - 医療介護CBnews

今週は介護もデータが出てくる。
衆院選:介護経営実態調査、公表を自粛 厚労省「選挙に配慮」 事業者からの反発恐れ - 毎日新聞
10/26 第24回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会の開催について |厚生労働省
10/27 第148回社会保障審議会介護給付費分科会の開催について |厚生労働省

さらに中医協総会もあるし、DPC評価分科会もある。

改定率に代表されるような大きな数値・指標に一喜一憂しても仕方ない、経営にインパクトがあるのは個別改定項目の内容だ、と常々言っているものの、正直、改定率は気になる。

2017/10/23

病院敷地内に○○○

「病院敷地内」で昨今の話題といえば、調剤薬局のことばかりなのだが、来年1月に獨協医科大学病院にホテルが開業する。

ホスピタルイン 公式ホームページ|トップ ホスピタルイン 公式ホームページ|トップ
病院敷地内のホテルは初めてらしい(1年前の新聞記事参照→ 病院敷地内初、来年12月開業 東横イン「ホスピタルイン獨協医科大学」|下野新聞「SOON」

以前、集約化にはホテルが必要と書いた。あれからもう4年経っていた。時が経つのは早い。

病院機能の集約化に必要な「新たな機能」 - 医療、福祉に貢献するために 病院機能の集約化に必要な「新たな機能」

2017/10/21

整形外科病棟の看護必要度は必ず低いとは言えない

整形外科病棟の看護必要度と在院日数の関係について、7対1の143病院で評価してみた。(疾患構成を無視するため、Nをある程度増やしている)

病床機能報告(2016年度、13都道府県のデータ)による
7対1入院料を算定している整形外科病棟の看護必要度分布

平均在院日数が20日を超えると看護必要度が20%未満の施設(黄・オレンジ色)が増える。
15日未満だと看護必要度が25%以上の施設(青・水色)が増える。

整形外科病棟だからといって、看護必要度の足を引っ張るのではない。高回転化できれば、病院全体の看護必要度向上に貢献する。逆に言えば、高回転化しなければ厳しい。

次期改定がどうなるのか定かではない。ただ、いかなる改定であっても、高回転化を意識せざるを得ないだろう。看護必要度の分析結果から見えてくるのは、整形系の疾患は、特に高回転化を意識する必要性がありそうだ、ということである。

2017/10/19

ビジュアライゼーションの続き

さきほどの分析画面で、右画面で160800xx01xxxxのコードを選択した例を示す。

160800xx01xxxx 大腿骨頸部骨折 01手術ありを選択した場合の画面
(クリックすると拡大します)

左上の大学名が示されている青緑色のバブル画面において、左上から右下に直線的に大学が並んでいることが分かる。転院率が高いほど在院日数が短く、転院率が低いほど在院日数が長くなっていることを示している。

大腿骨頸部骨折の術後、転院させるか否かは、大学病院によって大きなばらつきがある。当然といえば当然だが、可視化してみると興味深い。

※病院情報の公表、2016年度実績を用いて分析している。そのため、各病院の掲載データの信頼性等に不安があり、当分析は参考であることをご理解いただきたい
診療科名がおかしい(漢字ミス??)、データがおかしい(平均在院日数が1000日を超えている??)、「ファイルダウンロード」のボタンを押してもダウンロードできない(頻発!!!!)、などなど、不安要素がいっぱい

データビジュアライゼーションのサンプル

病院情報の公表データを用いた分析事例。
大学病院本院のデータを使って効率性の可視化を行ってみた(横軸は在院日数の短さ。左ほど短く、右ほど長い。縦軸は転院率)。まだ基になっているデータ(診療科ごとのDPCコード上位5疾患)の精査が出来ていないので、あくまでも参考データ。

左上のグラフの大学病院のバブルをクリックすると、連動して、左下に診断群分類別の詳細データ、右にDPCコード別のデータが示されるはず。

右のDPCコード別のデータをクリックすれば、そのコードの大学別のデータが左上に表示されているはず・・・。

Power BIの使い方がよく分かってないので、おかしなものが表示されてもお許しを。



2017/10/15

急性期病院の稼働率が低下する訳

日本全体をマクロに捉えた場合、急性期病院の稼働率が低下している理由にはいくつかある。そのひとつが「低侵襲化」であると考えている。

例えば、胃がんの手術症例(外科的手術と内科的手術をあわせて見ている)の平均在院日数は、DPC算定病院においては、18日程度(2012年度)だったものが、16日(2015年度)と年々短縮している(グラフ1 参照)。

グラフ1 胃がん平均在院日数推移

在院日数の短縮には、次の2つの理由がある。

① 同じ術式での在院日数の短縮
② 在院日数の短い術式の選択増加

この2つについて、それぞれデータ分析結果を示しながら考えてみよう。

① 同じ術式での在院日数の短縮

DPCコードに従って、開腹、腹腔鏡、試験開腹の外科手術3つと内視鏡手術の計4つについて、それぞれの平均在院日数の推移を見ると、2012年度からどの術式も在院日数が短縮している(グラフ2)。
グラフ2 胃がん術式別在院日数増減比

このような術式別に見た場合の在院日数短縮は、DPCの階段状の逓減性の点数設定や、効率性係数への影響、看護必要度の厳格化等によるプレッシャーによるものと考えられる。また、医療機関個別では、術前検査の外来化や、術後の早期退院などの取り組みがなされたものと思われる。

② 在院日数の短い術式の選択増加

術式別に平均在院日数を見ると、開腹24日、腹腔鏡17日と1週間の開きがある。また、内視鏡手術は9日台と、腹腔鏡よりさらに1週間短い(グラフ3)。

グラフ3 術式ごとの平均在院日数(2015年度)
2012年度~15年度までの術式別の症例数推移を見ると、年々内視鏡手術の患者が増え、外科的手術の選択が減っている(グラフ4)。
グラフ4 胃がんの術式別症例数比率推移

このように、内科的手術のような在院日数の短い術式の選択割合が高くなれば、全体の平均在院日数は短くなる。また、外科的手術においては、開腹・腹腔鏡で1週間の在院日数の違いがある。開腹手術は減る一方で、腹腔鏡手術の比率は高まっている(グラフ5)

グラフ5 胃がん 開腹・腹腔鏡の選択比率推移
グラフ4、5は比率で見たが、症例数で見ても、内視鏡手術や腹腔鏡手術は増加し、開腹手術は減少していることが分かる(グラフ6)。

グラフ6 胃がん 術式別症例数推移

このような2つの理由から、在院日数が減少すれば、結果として稼働率の低下は避けられない。医療技術の進歩は、よりよい医療を受けることができ喜ばしい。ただし、マクロで見れば、病院経営を不安定にさせる要素もあると言えるかもしれない。難しい問題である。

2017/10/14

7対1は減らない(後半)

「7対1を減らす」ことを目的とするのではなく、現場の負担と努力に応じた報酬を設定し、「アウトカムを達成するために必要な看護配置を行う」ことを目指すべきである。

近未来的な夢物語を言えば、ある医療機関がモニター類の革新的な高度化を図り、現場の負担を大幅に軽減し、少ない人手で医療安全・医療の質の向上を実現したとする。しかしながら、現行の評価制度が続くならば、看護師の数を減らすと収入が減ってしまう。質の向上を実現していたとしても、である。

このような「アウトカム」よりも「配置」に重視を置いた評価制度は、革新的な技術導入に対する意欲を低下させるだけでなく、近年極めて煩雑さを増す各種記録の義務付けに対し、看護配置の多い病院がそれを受け入れている原因にもなっていると思う。(アウトカムの達成に必要なのは記録でないが、記録に必要なのは余裕のある配置だから)

より良い医療を受けるためには(より良い医療提供を促すためには)、配置よりもアウトカムに重きを置くべきである。

 昨日からの話の続きになるが、現実的には、看護必要度の評価についてA項目とC項目により重きを置き、徐々に7対1と10対1をシームレスにしていくのが良いと思っている。シームレスにする方法の例として、次の2つを挙げる。

 ①看護配置に重きを置かない「短期滞在手術等基本料3」の対象拡大

7対1でも10対1でも、診ている疾患・治療が同じであれば、診療報酬は同じにすべきである。参考になるのは短期滞在手術等基本料3だ。これは定められたいくつかの手術を行い5日以内の入院であれば、どの看護配置の病棟で入院しても、同じ診療報酬になる制度だ。つまり看護配置はまったく関係ない。つまり、このような疾患・治療を拡大していけば、実質的に看護配置の重みは薄れていくことになる。

 ②看護必要度の評価を反映したDPC点数の設定

DPC制度では、医療資源投入内容に応じて階段状の点数が設定されている。現在、Hファイルとして看護必要度の情報を収集していることを踏まえれば、各疾患・治療に応じた看護必要度の情報が得られているはずである。この看護必要度の情報に基づき、階段状の点数を上下させてみてはどうだろうか。「7対1だから係数で10%上乗せ」ではなく、「○○の疾患は看護必要度の評価が高いから点数にXX%上乗せ」というようなことになれば、看護配置は関係なくなる。

このような疾患を徐々に拡大してくことで、看護配置の重みは薄れていくことになる。この2つの案のように看護配置に重きを置かない評価制度に移行するのであれば、粗診粗療を避ける仕組みが重要になる。再入院などの評価や、医療安全に対する評価などを充実させることが不可欠だろう。患者が求めていることは、他病院よりも看護師が多いことではなく、他病院よりも良い医療が受けられることである。これは現状看護師の教育等が充実している病院を評価することにも通じると考えている。現状は「配置」に極めて重きを置いているが、医療安全等の対策はかなり実力差があると思っている。このようなことを評価しなければ、患者がより良い医療を受けることはできない。

『「7対1を減らすこと」が診療報酬の適正化につながり、国民がよい医療を受けられる』というロジックは一見正しいことのように思う。しかし、7対1が減らない以上、別のロジックを考える必要がある。それにはアウトカムを重視した報酬制度に徐々に移行していくことで、医療機関がさらなる質の向上を意識し看護の充実(≠看護配置の充実)を図ることになるだろう。結果的にIoT等の技術的な革新を活かすことにもつながるはずである。

2017/10/13

7対1は減らない(前半)

興味深いレポート。
7対1病床が10対1からの転換などで増加 - CBnewsマネジメント 7対1病床が10対1からの転換などで増加 - CBnewsマネジメント

以下、私見。
7対1が減らない3つの理由

①就労環境が良好
②医療安全等も含めた医療の質で有利
③7対1を死守するのは経営的に必然

これらの理由で、急性期病院はみな7対1を目指す。そして、目指すことは悪いことではなく、前向きな評価されるべき経営努力である。

にもかかわらず、7対1を減らしたがっている(少なくともそう感じる改定が繰り返されている)のは、行政側が現場を理解できていない(or 病院団体がうまくかわしている)と思ってしまう。7対1が減らない3つの理由について、少し細かく考えてみたい。

①就労環境が良好

7対1の要件は、平均在院日数(疾患構成に強く依存しているものの、クリアすることは比較的容易)や看護必要度(これも疾患構成に依存。現状は高齢者の比率が高いほどクリアが容易)などである。7対1も10対1もこれらの要件の状況は似ている(10対1でも在院日数が短い病院は珍しくない)。これらをクリアしているのであれば、10対1よりも7対1のように、看護配置を手厚くした方が、現場が円滑に回る。

円滑に回るということは、就労環境として相対的に良好であり、看護師確保に有利となる。看護師確保が難しい地域では、10対1よりも7対1を目指す(周辺病院が7対1ならなおのこと)。

②医療安全等も含めた医療の質で有利

看護師確保に有利であれば、相対的に優秀な人が集まりやすい。医療の質向上にも貢献する。また、そもそも看護配置が手厚い時点で、医療安全等において有利である。

③7対1を死守するのは経営的に必然

7対1と10対1で比較した場合、7対1にしたら病院経営が圧倒的に改善するわけではない。しかし、7対1の配置に近い看護師を確保している病院であれば、7対1を算定できるようになれば収入は激増する。否が応でも7対1を死守する(病院の経営改善の努力をするのは、働き手に相応の賃金を払い、医療機器等の維持・充実を図るために、当然のこと。稼ぐことは悪でなく、稼ぐことは医療の質向上にプラス)。


以上3つの理由を述べたが、看護必要度のような「看護配置」の必然性に対し評価をもたらすであろう指標が、現状は不適切であるがゆえに、これらの3つの理由から、みな7対1を目指し維持するのだ。

適切な診療報酬を設定するためには不適切な看護必要度の指標をどう変えればよいか。 ※ 看護協会を中心とした長年の研究に基づく看護必要度の評価自体は重要であり、否定しない。診療報酬や病床機能分化の誘導に使おうとすることには限界がある

「看護配置に関係なくアウトカムで評価していくこと」が究極的なところにあるとするならば、看護配置を定めるための看護必要度は不要であるといえる。ただ、あくまでも極論である。現実的には、A項目とC項目により重きを置いた評価をし、徐々に7対1と10対1をシームレスにしていくのが良いと思っている。

シームレスにしていく具体的な方法については、明日、述べたい。

2017/10/12

アウトカムとファクターの対比

コンテンツもビジュアル的にも興味深いウェブサイト。

County Health Rankings & Roadmaps County Health Rankings & Roadmaps

アメリカの各州について、郡ごとの健康に関するアウトカムとファクターのランキングをしている。アウトカムとファクター、それぞれのランキングについて、地図を2つ横並びで表示しているおかげで、各エリアの特徴が分かる見せ方は非常に興味深い。
ランキングについては是非があるかもしれないが、そのランキングシステムについても詳細な説明がされている。


2017/10/11

集約化に必要な情報の非対称性解消

ダヴィンチのようなロボット支援手術システム等の最新技術導入が、病院間の患者確保競争や施設集約化にどのような影響を及ぼすかをテーマにしたLancetの論文。

Effect of patient choice and hospital competition on service configuration and technology adoption within cancer surgery: a national, population-based study - The Lancet Oncology Effect of patient choice and hospital competition on service configuration and technology adoption within cancer surgery: a national, population-based study - The Lancet Oncology

がん診療の質向上に施設の集約化を図ろうとしても、ロボット支援手術の導入のように、病院の努力によって、患者はそちらを選択してしまい、意図していない病院間の患者確保競争が生じてしまっていることや、患者が病院を選ぶクオリティ・アウトカムの明確な違いが示されていないことなど、非常に興味深い。

集約化を進めるには、地域医療構想のような大きなビジョンだけでなく、医療の質の透明性確保も重要であると感じた。

2017/10/10

nudge に関心が集まるか

ノーベル賞に詳しいわけでも、極めて強い関心を持っているわけでもないが、今年の経済学賞は、Richard H. Thaler教授とのこと。

ノーベル経済学賞、セイラー教授の受賞理由 | 市場観測 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 ノーベル経済学賞、セイラー教授の受賞理由 | 市場観測 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

2年ほど前に、著作を読んでいる。

CVSのタバコ販売打ち切りのその後。ジャンクフードはどうなる?? - 医療、福祉に貢献するために CVSのタバコ販売打ち切りのその後。ジャンクフードはどうなる?? - 医療、福祉に貢献するために

行動を変えるのは難しい。正しい知識があっても、である。

2017/10/08

組織の力

昨日は飯塚病院のTQM発表大会に。

TQM発表大会のご案内|TQM活動|飯塚病院 TQM発表大会のご案内|TQM活動|飯塚病院

何年か前にMMオフィスの工藤氏と一緒に参加させていただいたのをきっかけに、それ以降、毎年、聞きに行っている(特別な立場でなければ参加できないイベントではなく、誰でも申し込めば参加できる。自分も普通に申し込みして参加)。

毎回新しい発見があり、刺激をもらっている。参加の回を重ねてくると、他病院では一朝一夕で真似できないところが具体的に分かってくる。また、時代のニーズにあわせて、進化させている内容も興味深い。そして、参加する度に確信を強めていることは、個々人の能力の積み重ねでパフォーマンスを発揮するだけでなく、「組織力」をいかに高めパフォーマンスを発揮するかということに努力できるかが重要ということだ。

「チーム医療」とて、特定の個人や才能に依存していれば、それを失った瞬間に機能しなくなる。強い組織は、そうなっていない。システムとして機能できるように考えている。今年は歯止め(フォローアップ)の報告を聞きながら、100年続く組織だからこそ「組織力」がしっかりと根づいているのだな、と感じ、また、最後の講評などを聞きながら、100年続く組織のトップは未来に向けたビジョンを掲げ、力強いメッセージを発するのだな、と感じた。

2017/10/07

地域包括ケアシステム・地域医療構想での救急医療体制の議論

先週の岡山での話題でブログに書いた救急の件(波平54歳、大人気)、日経メディカルのウェブサイトのコラムで8月に読んでいた(どおりで、自分の中で課題感が明確だったわけだ)。

地域包括ケアシステムに抜け落ちた救急医療:日経メディカル 地域包括ケアシステムに抜け落ちた救急医療:日経メディカル

こんな時間でも救急車の音が鳴り止まない地域の基幹病院の前で、このことをふと思い出した。

先週の岡山県地域包括ケアシステム学会のシンポジウムの中で、
具体例として挙げられていた福岡県飯塚市のサンメディラック飯塚
(昨年の秋、前を通ったときに撮った写真)

サンメディラッック飯塚の2階に夜間急患センターが入っている

2017/10/05

ニューラスタ(ジーラスタ)のCMが

CNNでNeulastaのCMが流れてきた。

G-CSFのCM?? と思ったが、「ケモセラピーの翌日、注射のためだけにクリニックに行かなくてもいいんです。家でいいんです。Neulastaで感染症や入院のリスクを減らせるんです」みたいなナレーションが。

Neulasta® (pegfilgrastim) Onpro® On-body Injector Neulasta® (pegfilgrastim) Onpro® On-body Injector

クリニックでの受診と注射を減らし(医療費も抑えられるはず)、家で過ごすことができるメリットもある。それと新しい薬代を天秤にかければ、新しい薬の方が良いと考える人が少なくないということなのだろう。だから、CMを流しているものと思われる。

腕にペタッと貼った機械が、24時間くらいかけて徐々に注入してくれるようだ。何だ、このすごい仕組みは!?(知らないのは自分だけか??) こういった機器が出てくると、色々な薬剤に応用が利くのでは?と思うのだが・・・。

2017/10/04

NDBオープンデータの活かし方

NDBオープンデータの分析の話をCBnewsに掲載いただいた。
記事では、NDBオープンデータが公表される以前から、社会医療診療行為別統計に似た情報があることも紹介した。病院経営に役立つ情報が得られるよう、目的に応じ様々なデータを使えるようになることは、分析の能力のひとつだと思う。

ちなみに、先日開催されたCBnewsのセミナーでは、NDBオープンデータの分析結果から、もう少しマニアックな経営改善に対する都道府県別の積極性などが定量評価できることを話させてもらったのだが、今回の記事では触れなかった。この話題は次々回あたりで記事に書こうと思う・・・。

2017/10/03

波平54歳、大人気

第2回岡山県地域包括ケアシステム
学会学術大会
一昨日は第2回岡山県地域包括ケアシステム学会学術大会に。診療報酬改定の議論ばかりを気にしていると、どうしても近視眼的になりがち。地域包括ケアシステムの深化・推進へ向けてという大会のタイトルからも分かる通り、内容は2025年、2040年を見据えた大局的な話を聞くことができた。

シンポジウムで会場から挙がった救急の受け入れ機能の件が、個人的な興味とも一致していて、良かった。地域医療構想において「病床数」ばかりに注目しがちだが、システムとして全体最適を考える場合は、様々な「機能」に思いを馳せるべきで、あくまでも「病床数」は機能のひとつだと理解している。病床数の需給バランスを最適化した結果、何かを失うことは避けなければならない。(ある程度データで見られている入院につながるような救急ではなく、一次救急などの議論が難しいように思う)

gakujututaikai - 岡山県地域包括ケアシステム学会 gakujututaikai - 岡山県地域包括ケアシステム学会 

余談だが、表題の「波平」はサザエさんの波平で、世帯構成の話などには持って来いケースなのだろう。昨日の学会で何回か登場していた。説明を聞く側としても分かりやすかった。
昨日の学会では登場しなかった桃太郎
波平の方が人気だった!?

2017/10/01

経営改善のノウハウが詰まった議事録

8月に傍聴した東京都の都立病院経営委員会の議事録・資料が開示された。

第3回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会 (平成29年8月1日開催) | 都立病院経営委員会 | 報告書 | 東京都病院経営本部 第3回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会 (平成29年8月1日開催) | 都立病院経営委員会 | 報告書 | 東京都病院経営本部

傍聴後の感想をブログで書いたが(病院経営改革の話が聞けるんです、しかも無料で)、自分の偏見が入ってしまっているので、それを避けるには、議事録をご覧いただいた方が好ましいだろう。

一部、印象的だった箇所を引用する。

まず、末永アドバイザーの講演。刺激的な内容で非常に勉強になった。ブログで言及したPFIに関する意見のところを引用した。
PFIをやっているところが苦労をしているところを見ますと、PFIについては厳しい見直しをしないと先生方の努力、いろいろな努力をしても報われないんじゃないかというようなことを感じます。先生方も聞かれているかもしれませんけれども、かつて諸橋先生という有名な先生がいまして、この先生は自治体病院協議会の会長と日本病院会の会長をやっていて旭中央病院の院長をやっておられた先生です。その先生はいつも「入るをはかりて出ずるを制す」と言われていたといいます。その出る部分というのは、例えばいろいろありますけれども、きょうもいろいろ話題になっていますが、例えば薬を買ったり、あるいは診療材料を買ったり、あるいは医療機器を買ったりという出ていくほうですね。そこのところでの安く買ったりするというのは、経営努力だと思っています。私どももかなり厳しくやっております。
そういうところをPFIに任せ切ってしまって、そこでの部分、本来的には病院に来てもいい部分をそちらのほうに持っていかれるという部分についてはやっぱり見直す必要があるんじゃないかなと。要するに、いろんな問題点を出されましたけれども、正直言いましてPFIでもしこのまま行くとすると、売り上げを上げる以外、経営効率を上げるという方法は全く見当たらないんです。SPCのほうに大分取られてしまったりという部分があるんではないか。
出所: 第3回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会議事録http://www.byouin.metro.tokyo.jp/hokoku/kaigi/documents/290801_kentoubukai03_giziroku.pdf

「PFIに任せきってしまって」という言葉は、話の流れを考えれば「経営努力放棄」とも受け取れる。医師は医療に専念し運営はプロに任せるという本来の趣旨を考えれば、任せることは決して悪いことではない。しかし、「本来的には病院に来てもいい部分をそちらに持っていかれる」とおっしゃられている懸念は、全体のマネジメントがうまく働いていないことを示唆しているように思った。

そして、正木アドバイザーの意見は時速165kmのど真ん中へのストレートみたいな鋭さだが、印象に残ったもののひとつとして、公立病院の経営改善の根本を考えさせられる次の意見だ。
行政的医療って私は初めて聞きましたけれども、こういう言葉があったんですね。今、お話を聞いていますと、400億円は正当な金額だというお話が私にはひがみで聞こえたんですけれども、これを400億円を正当化していくと、本当に都立病院、これから先、一体何をしなきゃいけないのかというときに、全く見えてこなくなるんじゃないかと思うんです。いや、これでいいんですよという話だったら、別に私たちも委員会として参加する必要もありませんし、これをどうにかしたいからということでお集まりになったんじゃないかと思うんです。今、実際400億円ですと、これから先、いろんな意味で診療報酬改定からいろんなものが上がってきたときに、病院の改善をしていないとすれば、400億円が500億円なり、500億円が600億円なりと、これはもう本当にすぐそういった金額に上がっていくと思う。それが都としては許されるんであるということであるんだったら、議論も何もする必要はないし、これが行政的医療で当然必要だということで、肯定的であるんだったら、私は何も議論ないと思うんですけれども、ただ、これが本当に行政的医療でかつ正しくて400億円投入しなきゃいけないのかというのを、やはりもっと分析して、本当に何が必要で何が必要でないのか。大体病床があり余っているというところの問題は何も解決しなくて、そういう意味ではいろんなものをお金さえ投入すればそれは全部行政的医療だという話だったら、何の解決も多分ないんじゃないかなと思うんですけれども。
※ 平成28年度における都立病院全体の繰入金総額 399億7,800万円
出所: 第3回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会議事録http://www.byouin.metro.tokyo.jp/hokoku/kaigi/documents/290801_kentoubukai03_giziroku.pdf
正木アドバイザーは、6月のときも鋭い意見が多い。特に済生会熊本、横浜市東部病院の話は、具体的な数値も示されている。病院経営に対する考え方そのものが興味深い。

第2回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会 (平成29年6月14日開催) | 都立病院経営委員会 | 報告書 | 東京都病院経営本部 第2回都立病院経営委員会「今後の都立病院の経営力向上に向けた取組」に関する検討部会 (平成29年6月14日開催) | 都立病院経営委員会 | 報告書 | 東京都病院経営本部

この議事録を整理したら(そのままでも良いが)、病院経営の書籍・読み物として、かなり価値があるように思う。雑誌等で見かける対談などで語る一般論と違って、明確にされた対象に向けたアドバイスなり意見なので、非常に強いインパクトがある。